SECは先日、ICOやThe DAOが米国の証券法の定める規定に即したものであるかどうか調査を行い、報告書を公開している。
The DAOは、イーサリアム・ブロックチェーン上に構築された自律的に証券ファンドのように機能する仮想組織だ。
The DAOが行ったICOは、業界内でも最大規模のものだったが、仮想通貨業界のみならず様々な業種から批判の声が上がっていた。
この問題のベースには、プロジェクトに資金援助を行えるよう基盤が整う前にThe DAOに大規模なハッキングによる攻撃が行われ、何百万ドルにも相当する仮想通貨資産が奪われてしまったという事実が起因している。
SECの報告書には、利用者やトークンセール参加者向けの重要なガイダンスが記載されている。
おそらくその中でも最も重要なのが以下の一文だろう―

「委員会は、調査を行いそれにより判明した事実に基づき、1993年証券法と1934年証券取引法の元、The DAOのトークンを証券であると判断した」

今回の問題は、The DAOのトークンが所謂Howey Testをクリアした一般的な証券としての必要条件を満たしているかという点にあったが、どうやら上記を見る限りSECはイエスとの判断を下したようだ。これはつまり、投資したプロジェクトから利益の一部を得る権限をトークンホルダーに与えるようなエンティティを生成することが出来るThe DAOが、ある種の営利事業体として機能するとしてその価値を認められたということでもある。
証券法の第二章第一項と、証券取引法の第三章第十項には、明確に―「投資契約」と記されている。投資契約とは、企業や他の起業家などの経営努力から利益が期待できるとして共同事業に資金投資を行うことで成立するものだ。そしてこれこそがthe DAOのICOには欠けているように思える点だ。

全てのICO参加者と今後参加を考える人たちへ

しかしながら、SECは、利用されるどのメカニズムやテクノロジーが彼らのヴィジョンに適っていて、何がそうでないのか明確に有価証券を定義している―

「連邦証券法は、米国内において有価証券を発行し、販売する場合に適用され、発行体が伝統的な企業または、自律分散型組織であるかどうか、発行される証券が米国ドルや仮想通貨を用いて購入されるかどうか、および、認定された形式、または、分散型元帳技術を用いて発行されたかどうかは問わない」

証券法に違反しない形で任意のトークンを設計し実行することは非常に重要な点である。SECがThe DAOのトークンが証券の一種であると定義した一方、本質的には、これは所有権の問題であり、特にSECの認定を支援したThe DAOが持つ利益共有という特徴が鍵であると筆者は考える。
そして何より、SECは全てのトークンが証券であるとは明言していない―DAOのような特色を持つトークンが証券であるとしか彼らは言っておらず、米国内で発行されたトークンのみが規定に準拠しなければならないとしか明言していない。
他のトークンに対してそうした判断を下すかどうかは、取引における経済的状況を含んだ事実と結果に左右され、また、それによって、構造が明確なビジネスモデルには資格が認められるべきであり、SECへの登録は必要ではないということが明示されている。
しかし、それでも、米国の証券法に基づいてビジネスは当然行われなければならない。今日行われているトークンセールの多くが実態を持たない酷いものであり、ある種の逆効果を招いているのが現状だ。したがって、我々はSECによる調査結果を受け入れるべきであり、スタンダードなベストプラクティスの発展のため、その結果をポジティブな物として受け入れる必要があるのである。

           
著: グレッグ・マーフィー

グレッグ・マーフィー氏は、Outlier Venturesのコンプライアンスの専門家であり、デリバティブや仕組商品、企業金融における資本市場の経験を33年以上積み、そうした経験を活用した結果重視の分析を行う国際的に活躍し、金融業界に身を置くスペシャリストである。マーフィー氏は現在、いくつかの公共および民間企業に継続的なサポートを行う役員会メンバーの一人でもある。