米証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー委員長は6月6日、ブルームバーグとのインタビューで、バイナンスと破綻したFTXとの間に「類似点」があると指摘した。特に、姉妹会社へと資金を移動させるとされる手法について言及した。
ゲンスラー議長は、FTXが姉妹会社アラメダリサーチを巻き込んだ詐欺や相場操縦を行っていたと主張し、その創設者サム・バンクマン-フリード氏が果たした役割にも言及した。
「金融業界では見かけないし、許可もしないような、機能を束ねて混ぜ合わせるビジネスモデルがある」とゲンスラー委員長は語った。
6月5日、SECはバイナンスに対し、合計13件の訴訟を起した。訴状の中では、バイナンスとバイナンスUSからの資金が、ジャオ・チャンポンCEOと関連するトレーディング企業メリットピーク・リミテッドが管理する口座に混入していたとされる。
また、バイナンスUSが、ジャオ氏がオーナーである「シグマチェーン」という未公開のマーケットメイキング企業を通じて、価格を吊り上げるウォッシュトレードを行っていたとの主張もある。「プラットフォームごとに、起業家たちは、姉妹組織であるヘッジファンドを通じて、顧客に対して取引を行い、自分たちと投資家の富を築こうとしている」とゲンスラー委員長は指摘した。
SECはFTXを訴えないのか?
今回のゲンスラー氏の発言は、ツイッター上での議論にさらなる燃料を投じることになるだろう。
なぜSECはFTXを訴えていないのか。6月6日のツイートで、リップルのブラッド・ガーリングハウスCEOは、最近の一連の訴訟はSECが「FTXの失敗」から目を逸らすための試みだと主張する。他の人々は、FTXによる政治家への巨額の献金や、過去にワシントンD.C.でのロビー活動を行っていたことも影響しているのではないかと推測する人々もいる。
一方、マトリックスポートの研究・戦略部門責任者であり、『クリプトタイタンズ』の著者であるマルクス・ティーレン氏は、異なる視点を提供した。彼は、FTX以前であれば、仮想通貨は米国の金融安定に対する大きな脅威とは見なされていなかったと説明した。今年の3つの大手銀行の破綻が、そうではないことを証明したと彼は言う。「当初は、仮想通貨のレールを修正したり止めたりすることは優先事項ではなかった」とティーレン氏は述べた。「FTXの後に、それが本当に何十億ドルもの問題であることに気づいた人々がいる」。
またティーレン氏は、FTXでの問題を予見できなかった人々にとって、「恥ずかしさ」があるとも考えている。これには政策立案者も含まれるだろう。「それらの人々が少し恥ずかしく感じているため、彼らは倍の努力をして、それから本当に距離を置かなければならない」と彼は指摘する。
なお、SECはFTX取引所自体に対して訴訟を起こしていないが、創設者や元幹部に対して訴訟を起こしている。これには、FTXの元CEOであるサム・バンクマン・フリード氏、アラメダリサーチの元CEOであるキャロライン・エリソン氏、FTXの共同創設者であるゲイリー・ワン氏、FTXの元エンジニアリングディレクターであるニシャド・シン氏が含まれる。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン