米証券取引委員会(SEC)は、仮想通貨取引所クラーケンに対する訴訟を取り下げることで合意した。クラーケンが3月3日に明らかにした。この決定により、クラーケンが「無駄で政治的動機に基づいたキャンペーン」と非難した訴訟が終結し、「安定した前向きな規制体制への道が開かれる」としている。

クラーケンによると、今回の訴訟は「棄却(with prejudice)」の形で取り下げられた。これは、同様の訴訟が再び提起されることはないことを意味する。クラーケン側が違法行為を認めることはなく、罰金の支払いもなく、事業運営に変更もない。

SECは2023年11月、クラーケンがSECに登録せずにブローカー、ディーラー、取引所、清算機関としての業務を行っていたとして提訴していた。

ゲーリー・ゲンスラー委員長の下でSECは「規制を執行によって行う」方針を取っており、コインベース、ユニスワップ、NFTマーケットプレイスのオープンシーなどの仮想通貨企業を相次いで訴訟・調査の対象としてきた。このアプローチは業界内で強く批判され、「イノベーションを阻害し、悪質な業者ではなく合法的な企業を狙い撃ちしている」と指摘されていた。

SECの最新の動きは、米政府の仮想通貨政策の変化を反映しているだろう。クラーケンは今回の訴訟について次のように述べている。

「この訴訟は投資家保護のためのものではなかった。むしろ、業界の明確化を妨げ、繰り返し明確なルール策定を求めてきた新興産業を弱体化させるものだった。」

規制環境の変化

SECの指導部交代後、同委員会はゲンスラー氏の在任期間中に開始した複数の訴訟や調査を取り下げた。2月27日にはコインベースへの訴訟を取り下げたほか、これまでにコンセンシス、ユニスワップ、オープンシー、ジェミナイ、ロビンフッドへの訴訟・調査も取り下げている。

こうした動きは、米国がデジタル資産に対する規制の明確化を進める中で起こっている。2月7日には、米議員が「ドルの支配力を強化するためのステーブルコイン法案」を提出した。今後、より包括的な暗号資産規制法案が提出される可能性もあり、これは「FIT21」の強化版となる可能性がある。

さらに、規制環境の変化を後押しする要因として、米ドナルド・トランプ大統領の暗号資産政策がある。トランプ氏は、米国を「世界の暗号資産の首都」にする意向を表明し、ビットコイン(BTC)、イーサ(ETH)、XRP(XRP)、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)を含む「暗号資産戦略備蓄」を設立すると発表した。

また、トランプ氏は3月7日に「ホワイトハウス暗号資産サミット」を開催する予定であり、今後の規制の方向性がさらに注目される。