2日昼過ぎに突如始まった仮想通貨相場の急騰。ビットコインは、一時22%以上も上昇した。現在はひと段落しているものの、13%以上のプラスとなっている(2日18時30分現在)。突然の急騰の背景には何があると考えられるのだろうか?コインテレグラフ日本版が日本の著名アナリスト2人に聞いた。

(出典:Coin360

「リスクオン」

先月、米国のFRB(連邦準備制度理事会)が今年の利上げを見送り、資産の縮小を9月に終了させる方針を示した。このような世界的な金融緩和路線への変更が今回のビットコイン急騰の背景にあるとみるのは、マネックス仮想通貨研究所の所長である大槻奈那(おおつきなな)氏だ。

「このところ変動が少ない為替の代わりに暗号資産にボラティリティを求める動きや、米国をはじめとして世界的に金融政策が再び緩和に向かうということで、リスクオンの動きが高まっていることが背景にありそう。」

中央銀行が再び金融緩和路線に戻ったことが、仮想通貨相場にとってプラスと考える専門家は他にもいる。

先月、仮想通貨取引所ビットメックスのアーサー・ヘイズCEOは、中央銀行により「フリーマネー」や「イージーマネー」の復活などが要因となって、ビットコインが年末にかけて1万ドルを回復すると予想した

ヘイズ氏は、2017年の仮想通貨相場の「愚かな熱狂の頂点」は、FRBが金融引き締めに乗り出す前だったと見ている。

「予想通りだが、少し早すぎる」

FXcoinのシニアストラテジスト松田康生氏は、ビットコイン急騰の直接のきっかけは、年初来高値(2月23日の45万4365円)を上抜けた事だが、本質的には「日本の投資家マインドの好転がある」と指摘。3月15日に金商法・資金決済法改正案が閣議決定されたことに加え、3月25日には日本を代表する19社が出資するディーカレットが金融庁によって交換業者と認可されるなど、「日本の仮想業界に大きな動き」があったことが背景にあると分析した。

またマスコミの論調にも変化が見られるという。

松田氏は、メディアの論調が「ブロックチェーン技術の育成と規制のバランスを取るべきといったトーンに若干変化」し、「コインチェック事件以降、日本の仮想通貨業界が官民あわせて取り組んだ動きがようやく世間に認知され始めた」ことを評価。仮想通貨によるSuicaへのチャージ計画しているといった報道も、「仮想通貨業界のイメージ回復に資した」とみている。

好材料が相次ぐ中、なかなか仮想通貨相場は動かない状態が続いていたが、2日に年初来高値を抜けたのをきっかけにビットコインが急騰。「大きくショートカバーを引き起こした」(松田氏)。ショートポジションは、将来的に下落すると思う投資対象を売って、実際に値下がりした時点で買い戻す投資手法。このポジションを解消することは、価格の上昇圧力となる。

ただ松田氏は、今回の動きはオーバシュート気味で「若干、急だった」と指摘。次のように述べた。

「過度な悲観的ポジションは一掃されたものの、機関投資家の参入や実需の拡大と言った実際のフローが付いてきておらず、また最近流行りの交換所によるトークンセールも投機色が強く、やや危うさをはらんでいる

その上で松田氏は、今後の値動きについて「上値の目途は11月急落の半値戻しの55万円近辺で、200日移動平均線の52万円近辺で落ち着きどころを探る」と予想した。

200日移動平均線を突破

今回、ビットコインがテクニカル的に重要な200日移動平均線を突破したことも追い風になっているかもしれない。

エコノミストで仮想通貨にも詳しいアレックス・クルーガー氏は、2日、ビットコインが200日移動平均線を上回ったと指摘。4200ドルを上回ったら「熱い空気しかない」とし、ビットコインの急騰を予想した。

31日に付のザ・ニュース・アジアによると、クルーガー氏は、今回の急騰前、去年末の仮想通貨急落から既に3カ月が経っており、万が一ビットコインが4200ドルの主要抵抗線を突破したら15カ月間の弱気相場は幕を閉じると予想していた。

米調査会社ファンドストラット代表のトム・リー氏にも200日移動平均に注目するアナリストの一人だ。

先月、久々に価格予測をしたリー氏は、「もしビットコインが4000ドルを上回った水準で推移すれば、8月までに200日間移動平均を超える」と発言。昨年11月に起きたビットコインキャッシュハードフォーク(分裂)によって受けた心理的なダメージを市場が克服できるかどうかが今年のテーマになると述べていた。