DeFi(分散型金融)ブームの夏が終わった後に投資家が目を向け始めているのは、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)の市場だ。NFTは、非代替トークン。ビットコインなどの仮想通貨と異なり1つ1つのトークンが固有の価値を持っており交換が不可能なトークンを指す。

NFTの肝となるのは何か?所有権をコンテンツ制作者や購入者に完全に移行させることだ。

現在、ゲームやアートの分野でNFTを取り入れる動きが広まっている。

既報の通り、米国仮想通貨業界のご意見番で投資会社モルガン・クリーク・デジタルのアンソニー・ポンプリーア氏(通称ポンプ)は、次はデジタルアートの時代が来ると読んでいる。過去数年間の伝統的なアート市場の規模は約650億ドル(約6兆7000億円)だが、デジタルアート市場の規模がある時点で上回るとみている。

NFT系のデジタルアーティストとして有名なのはマット・ケイン氏や匿名のPak、FEWOCIOUSだ。

中でもケイン氏のアートである「正しい場所ー正しい時間(“Right Place - Right Time”)」はAsync Artと呼ばれるプラットフォームで10万ドル(約1050万円)でトークン・エンジェルスに売られた。同作品には、NFTがもたらすアートの進化がつまっている。

マット・ケイン「正しい場所ー正しい時間(“Right Place - Right Time”)」)

売却後もアーティストに所有権

「正しい場所ー正しい時間」は、12時間ごとにビットコインの価格変動とともに変化する。ケイン氏がビットコインの価格フィードと作品を連動させるアルゴリズムを書いたためだ。

上記はデジタルならではの特徴だが、ケイン氏が売却後も一部の所有権を保持することによって今後長期にわたって作品を修復・変更し続けることができるという。アーティストは作品を売却したら終わりではなく、作品の進化に関わり続けることになる。

金持ちコレクター中心の市場が終焉か

新たに関連のNFTが合計210も作られる予定だが、購入者であるトークンエンジェルスは、新たなNFTが売られるたびに売却額の21%を手に入れる仕組みとなっている。新たなNFT作品は価格のボラティリティによって変化し、新たな購入者はプリント版も手に入れることができるという。

メサーリ創業者のライアン・セルキス氏は、最新のニュースレターの中で、こうしたNFT系のデジタルアート普及の動きについて、安く購入して高額で転売する金持ちコレクター中心の市場からからアーティストや個人の購入者中心の市場に変化していく点を強調している。

DeFiと合流も

DeFiとNFTが合流する動きも出ている。例えば、NFTfiと呼ばれるプラットフォームでは、NFTを担保にイーサ (ETH)建てでローンを組むことができる。また、Niftexというプラットフォームでは、NFT保有者がNFTを分割して複数のトレード可能なトークンにすることができる。

DeFiブームはひと段落したが、次の「バブル」としてNFT市場は注目だ。