JPモルガンの最初のブロックチェーン「Juno」の元リードエンジニアであるウィル・マルティーノ氏は、ブロックチェーン企業コンセンシス(ConsenSys)によるJPモルガンのブロックチェーン「クオラム(Quorum)」プロジェクトの買収について、自身の洞察をコインテレグラフと共有した。

マルティーノ氏は当時のテクノロジーは優れたいたものの、イーサリアム(ETH)から根本的な欠陥を受け継いでいると考えている。同氏は、JPモルガンを離れてからは、シャーディングを使用してスケーラビリティを実現するプルーフ・オブ・ワーク(PoW)ブロックチェーンである「Kadena」に携わっている。

コンセンシスによるクオラム買収に関しては、その具体的な経緯や詳細等については明らかになっていない点があるが、JPモルガンがコンセンシスへの戦略的投資を行ったという報道も出ている。

マルティーノ氏は、JPモルガンが行った投資は、クオラムの買収額よりも高かったのではないかと考えている。つまり、JPモルガン側が自社のどうにもならないプロジェクトを取り除くために行われたのではないかという可能性だ。

「クオラムは、業界環境でイーサリアムテクノロジーを定着させるための真の試みだった。しかし、それは手仕舞いされてしまった。私は、コンセンシスのもとで将来的に多くの進歩があるとは思えない。私の見方では、彼らはブランドを購入したということだろう。マーケティングの観点からクオラムの商標と知的財産をそのまま使用できるようにするためだけではないか」

マルティーノ氏によると、クオラムの真の問題は、スケーリングができないことだ。クオラムは、いーらリアムのプライべートフォークとして構築されおり、マイニングを含まないことを考えると、驚くような指摘かもしれない。しかし、マルティ―ノ氏によると、問題はより深いものであり、イーサリアム・ヴァーチャル・マシン(EVM)に起因する。

「つまり、パブリックブロックチェーンでは決してボトルネックにはならなかったEVMのようなものを見てみると、それをプライベートチェーンに置くと、突然、それがボトルネックになる可能性がある。このことが、クオラムが1秒間に200から1000のトランザクション(これまで言われていた数)を超えるだけのパフォーマンスに達成するのを阻害する問題となった」

マルティ―ノ氏は、イーサリアムとその派生技術に対する彼の懐疑論は、個人的な経験と、それを実験したエンタープライズレベルの多くの人々との議論から生まれたものだと説明している。

「最大の企業の1つであるJPモルガンが採用を推進できない場合、優れたユースケースがある場合でも、『なぜ』と自問する必要がある。その答えは、技術が根本的に制限されていることだ。ほかの大規模なシステムインテグレーターやコンサルタントと話をすると、非常によく似たことが聞こえている。多くのイーサリアムトークンを保持している人が企業のブロックチェーン責任者でなくても、あなたは『イーサリアムを使ってみたが、うまくいかなった』という人々を見つけることができるだろう」

JPモルガンがブロックチェーン技術への関心を完全に失ったのか、この特定の社内実験だけに興味を失ったのか、どちかなのはわからない。マルティ―ノ氏は、JPモルガンが、エンタープライズで人気があるソリューションである「ハイパーレジャー・ファブリック」に切り替わるとは考えていない。彼の意見では、ある時点では「最高クラス」だったクオラムよりも、それは悪い選択肢になるという。

マルティーノ氏は、新型コロナウィルスのパンデミックにより、企業のブロックチェーン採用に遅れが出ているかもしれないと考えている。彼は、もしかしたら2021年や22年にならないと、企業側での大きな動きは出てこないかもしれないと述べている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン