今週の仮想通貨業界はテレビドラマでも想像できなかっただろう。「まさか」の展開が連続し、まだストーリーの終わりは見えていない。

少し振り返ってみよう。

1週間前、SBFのグループ企業であるアラメダ・リサーチのバランスシートがリークされた。FTXの独自トークンであるFTTを大量に保有していることを示すものだった。

11月5日、 22,999,999FTTが匿名ウォレットからバイナンスに送られたというアラートが発動。翌日、アラメダのCEOであるキャロリン・エリソンが、リークされたバランスシートは全体の一部に過ぎないと釈明し、事態の沈静化に走った。

しかし、時既に遅しだった。

同日、バイナンスがFTT保有を全部売ることを決めたと発表。理由として挙げたのがリークされたバランスシートだった。取り付け騒ぎが始まった。FTXからは大量のステーブルコインがかつてないほどの勢いで流出し、その他の仮想通貨の出金も相次いだ。

事態を鎮めるためSBFは「資産は安全」で、「間違った噂」が流れていると述べた。

しかし、それだけでは不十分だった。

バイナンスは当初はSBFを助けるかと思われたが、結局は買収のディールを行わないと決めた。「自分達の能力を超える問題」が発覚したとのことだった。FTXの負債額は80億ドル近くに上ると言われている。

大事なことはデジタルオーナーシップ

今回の一件は、分散型の世界にとって重要な意味を持つ。教訓は明らかだ。第3者に秘密鍵を与えることは、あなたが資産に対するコントロールを失うということだ。単純なことだ。

Ledgerのパスカル・ゴティエCEOは、FTXショックによって「デジタルオーナーシップに向けた新たな時代が始まった」と見解を述べた。仮想通貨の本質は分散化であり透明性だ。今回の一件によって、新たなインターネット史の1ページが開かれることになりそうだ。

またパスカルは、マーケットウォッチで「世界最大級の中央集権的な取引所が破綻すれば、人々が自分のデジタル資産のセキュリティを気にするのは当たり前だ」と述べ、「仮想通貨の秘密鍵のオーナーシップをユーザーが持つ必要がある」と主張した。

Web3の真の精神とは、ユーザーが主権を持つことだ。デジタルオーナーシップはバズワードではない。未来のデジタルライフを支える上で、重要な権利を指す。


ウォール・ストリート・ジャーナルは、「中央銀行がないことによる失敗」と書いた。問題はそこではない。中央集権型の金融機関に数百万のユーザーの資金を持たせることが危険なのだ。
 

 

著者 Ledger

プロフィール:2014年に誕生した仮想通貨のハードウェアウォレットの会社。拠点はフランスにあり、現在はLedger Nano XとLedger Nano S+、Ledger Nano Sという3種類のハードウェアウォレットを製造・販売している。Ledger Nano S +は2022年4月4日発売の最新作。Ledger Nanoシリーズに接続して使うソフトウェアであるLedger Liveを、全ての仮想通貨サービスが1箇所に集まるプラットフォーム、いわば「Web3.0のハブ」にすることを目指している。公式サイト:https://www.ledger.com/ja