最新の量子コンピューターは失われた仮想通貨(暗号資産)ビットコイン(BTC)のロックを解除するには、「現在のところは」役に立たないようだ。

現在、約7億ドル分がロックされているビットコインウォレットがある。しかし、「仮想通貨泥棒」になり、これを盗もうとするには、パスワードを解除する必要がある。

仮想通貨ツイッターユーザーのAlon Gal氏は69370.22BTC(約742億円)へのアクセスを得る方法を求めて、自身のフォロワーに呼びかけている。同氏の9月8日の投稿によると、過去2年間、パスワードが解かれることなく、ハッカーの間で行き来されているウォレットがあるという。

Source: Twitter

(出典:ツイッター)

ブロックチェーンに記載されている情報によると、このウォレットアドレスに関連づけられた取引は2013年4月に始まっている。オンラインフォーラムであるAll Private Keysでは、仮想通貨コミュニティのメンバーに対し、パスワードがわからなくなったBitcoin Core wallet.datファイルをクラックする機会が提供されている。

ここでは総当たりでパスワードを入力すれば、ビットコインが手に入れられる機会が与えられているが、これを解くのは困難を極めるだろう。

「私はウォレットをもっている」というGal氏はグーグルに「量子コンピューターを貸してくれないか」とツイートした。

これは興味深い疑問の一つだ。

量子コンピューターを使えば、パスワードを失ったウォレットにアクセスできる可能性はあるのだろうか。

量子コンピューターの開発はビットコインのブロックチェーンのセキュリティを破ってしまうのではないかと危惧されており、仮想通貨推進派で論争の的になっている。

しかし、専門家ではこうした考えについては意見が分かれている。現在の初期段階である量子コンピューターではブロックチェーンのベースとなっている暗号を解読することはできないとされているが、近い将来では可能になると予想される。

最近では6月に中国の研究者が量子もつれを利用して1120キロ離れた場所で秘密鍵を交換する量子鍵配送に成功した。この技術が進歩すれば、ユーザーはインターネットを使わないで取引を承認できるようになる可能性がある。

昨年、ビットコイン・コアの開発者であるピーター・トッド氏は「グーグルの量子コンピューターはまだプリミティブな状態であり暗号を破るほどではないため、何も意味しない」と反論した

しかし、会計事務所であるデロイトはそうは考えていないようだ。同社のウェブサイトによると、量子コンピューターの現在の技術は、流通するビットコインの25%が攻撃に対して有効とされているという。もし十分な数のビットコインが盗まれた場合、市場は潜在的に暴落し、仮想通貨への信頼性が損なわれるかもしれない。

「たとえ誰もが同じ防御策を講じても、量子コンピューターはいずれ、ビットコインの取引プロセスを弱体化させるほど高速なものになる可能性がある」とデロイトは指摘している。

「そうなった場合、ビットコインのブロックチェーンのセキュリティは根本的に破られるだろう」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン