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ナラティブと現実 ビットコインとアルトコインの価格を実際に動かすものは何か

ナラティブと現実 ビットコインとアルトコインの価格を実際に動かすものは何か
市場分析

仮想通貨市場は、しばしばナラティブ(物語)によって説明される。政治動向、規制に関する見出し、機関投資家の参入、サイクルに基づく期待が、価格変動の激しい局面では値動きを支配してきた。

こうしたナラティブはポジション取りやセンチメントに影響を与えるが、過去1年を振り返ると、価格の持続性を左右してきたのは、見出しそのものよりも、測定可能な資金フロー、流動性環境、オンチェーン上の行動だった。

要点:

  • 米大統領選後のビットコイン56%上昇は、先物の建玉急増と一致したが、現物での追随が弱く、トレンドの持続性は限定的だった。

  • 現物ビットコインETFへの資金流入が継続した局面ではBTCが上昇し、流入が鈍化または流出に転じると上昇は止まった。ETFは需要に敏感であり、価格の下支え役ではなかった。

  • 取引所へのステーブルコイン流入が50%減少したことで、買い余力が低下し、ナラティブ主導の上昇は脆弱になった。

ナラティブ主導の上昇は速いが、持続しにくい

ナラティブは主因というより、加速装置として機能する。特に仮想通貨に前向きな指導者の登場など政治イベントは、2024年にビットコインの急速な価格再評価を引き起こした。その典型が米国の選挙サイクルだ。

2024年3月から10月にかけて、ビットコイン(BTC)は強気の見出しが繰り返されたにもかかわらず、5万ドルから7万4000ドルのレンジ内で推移した。この局面が転換したのが第4四半期で、ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利の可能性が織り込まれた。11月4日の選挙結果を前にした1週間、ビットコインはイベント前のリスク調整で約8%下落したが、結果確定後の42日間で56%上昇し、10万ドルを突破した。

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BTC’s narrative-driven breakout afterTrump’s victory. Source: Cointelegraph/TradingView

この動きは、先物ポジションの急拡大と同時に起きた。建玉は、第4四半期にほぼ倍増し、それまでの年内の水準を大きく上回った。ただし、その後の追随は限定的だった。

高値を更新したものの、ビットコインは勢いを維持できなかった。レバレッジの拡大に対して現物需要が加速せず、ポジションが過密になると市場は脆弱になった。ここから導かれるのは、ナラティブが無意味だということではなく、主にポジション形成に影響する一方で、資金コミットメントそのものを決定づけるわけではないという点だ。

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Bitcoin price and open interest. Source: CryptoQuant

現物ETFの資金フローが強い需要を示す

現物ビットコインETFは、ナラティブとデータが一致した数少ない材料だった。米国の現物ETFは、2024年に約350億ドルの純流入を記録し、2025年にはさらに約220億ドルが流入した。

ビットコイン価格は、これらのフローと密接に連動した。2024年第1四半期には、130億ドル超の流入とともに価格が4万2000ドルから7万3000ドルまで上昇した。第1四半期以降、流入が鈍化すると、ビットコインは10月まで長期の持ち合いに入った。この関係は2024年後半に再び明確となり、10月から1月にかけて約220億ドルが流入する中で、価格は7万ドルから10万2000ドルまで上昇した。

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Spot BTC ETF flows coinciding with BTC breakouts and consolidations. Source: SoSoValue

一方、下落局面ではETFフローが断続的にマイナスとなり、最後の買い手ではないことが示された。現物ETFが重要だったのは、ナラティブを測定可能な需要に変換した点にあるが、それは流入が継続している間に限られていた。フローが鈍化すると、価格の勢いも失われた。

流動性は依然として支配的な変数

流動性、特に投入可能な資本は、価格行動を左右する最も明確な要因の一つだ。取引所へのステーブルコイン流入は、買い余力の代理指標として機能してきた。

ステーブルコイン流入が増加すれば、市場は供給を吸収し、トレンドを維持できる。2024年第4四半期から2025年第1四半期がその例だ。逆に流入が縮小すると、上昇は脆くなる。直近の高水準から、ステーブルコイン流入は約50%減少しており、買い余力の低下を示している。

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Stablecoins (ERC20) exchange inflows. Source: CryptoQuant

流動性が低い局面では、ナラティブ主導の上昇は短命になりやすい。ナラティブやポジションによって価格が動くことはあっても、新たな資本が流入しなければ、ブレイクアウトは伸び悩み、調整が起こりやすくなる。

2025年に強気ナラティブが価格を支えきれなかった背景には、資産配分の変化とオンチェーン供給の動きもある。コインテレグラフによると、ビットコインと金の比率は、2024年12月の1BTCあたり約40オンスから、2025年第4四半期には約20オンスまで低下した。第2四半期に実質利回りが1.8%と高水準にあったことを背景に、防御的資産へのシフトが進み、金が従来の利回り動向から乖離したことを示している。

同時に、オンチェーンデータは継続的な分配を示した。グラスノードのデータでは、7日平均で見た長期保有者の利益確定額が7月に1日あたり10億ドルを超え、過去最大級の利確局面の一つとなった。

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Total BTC supply held by long-term holders. Source: Glassnode

実質利回りの高止まり、株式との相関、長期保有者による継続的な売却が、2025年後半のビットコイン価格拡大を抑制し、機会コストを押し上げた。

この1年で明らかになった点は一つだ。ナラティブは価格を動かすが、市場を動かすのは流動性である。見出しは緊張感とボラティリティを生むが、持続的なトレンドには資本、マクロ環境の改善、現物主導の需要が必要となる。

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