メサーリのデータによると、NFT(ノンファンジブル・トークン)マーケットプレイスの売上高は2月に前月比2882%上昇した。NFTには大手オークションハウスのサザビーズやタイム誌といった著名企業が参加することを表明しており、急激な成長を見せている。

さらに、ラリブルやオープンシーといったNFTマーケットプレイスでは、従来のベンチャー・キャピタリストや著名人が参入したことで販売活動が活発化している。

NFTはさらなる成長へ

ポルカドットやWeb3.0エコシステムにおける最大手ファンドのムーンロック・キャピタルのマネージングパートナーであるサイモン・デディク氏はコインテレグラフに対し、現在のNFT市場は2018年にクリプトキティーズが人気を博した際とは大きく状況が異なっていると指摘する。

NFTのインフラは大きく改善され、マーケットプレイスや発行プラットフォーム、取引所環境、NFTの金融プロトコルなど幅広いサービスが可能になっているためだ。

ただ、NFTに対してはまだ明確な大手企業の参入が見られておらず、一部投資家からの資金しか集まっていない。デディク氏はユーザーインターフェース、アクセシビリティ、ユーザーエクスペリエンスの向上が、NFT業界のさらなる成長の原動力となると指摘。これによって多くのユーザーを引き込めると予想した。

ムーンロック・キャピタルは、これまでWeb3.0への投資を中心に行ってきたが、最近になって初めてNFTプロジェクトのインキュベーションを行った。こうしたムーンロック・キャピタルのようなファンドがWeb3.0からNFTへの投資に移ってきている事例が続きそうだ。

例えば、ポルカドット上の新しいNFTプラットフォームであるPolkamonでは、シードラウンドにモーニングスター・ベンチャーズ、アセンシブ・アセット、ダイバージェンス・ベンチャーズが参加した。これらのファンドは通常、ポルカドットやWeb3.0関連のDeFiプロトコルに投資してきたファンドだ。ここ数カ月、NFTに特化したファンドも登場しており、こうした動きがNFT市場への本格的な関心を示しているとデディク氏は指摘する。

「モーニングスター・ベンチャーズとのインキュベーションであるPolkamonによって、NFTのコレクターズアイテムに注力する体制が整った。人々は貴重で高品質なNFTをゲーム化された方法で収集できる。さらに、子供の頃のノスタルジーを取り戻し、人々にNFTの価値あるユースケースを提供することができる。」

伝統的な投資家がNFTに参入か

米国のシリアルアントレプレナーであるゲイリー・ヴェイナチュック氏など、これまで伝統的な分野に投資してきた人々からもNFTは注目を集めている。ヴェイナチュック氏は最近のインタビューで、NFTがウェブの収益化に重要な役割を果たすと考えていると述べた。

同氏は「すべての商品の台帳化やデジタル化、音楽の配信方法、書籍、美術品やコレクターズアイテムの販売方法、シーズンチケットの販売方法など、大きな変化を感じる」と、あらゆる商品がNFTを介してトークン化されると予想した。

香港を拠点とする仮想通貨投資企業でありインキュベーターデアもあるCinchblockのマネージングディレクターであるエルビン・チャン氏も同様に、NFTは伝統的な金融市場と仮想通貨市場の両方で主役になると述べている。チャン氏は世界最大手の仮想通貨取引所バイナンスが同社のバイナンス・スマートチェーン上に構築された初めてのNFTマーケットプレイスであるリファイナブル(Refinable)に投資したことは、従来の仮想通貨業界から大きな需要を示していると指摘する。

「NFTは未来を切り開き、伝統的な市場と仮想通貨市場の両方で主役になる。製品がブロックチェーン上で保証され、偽造品が追放されれば、美術作品や音楽、さらには不動産など、あらゆる種類のNFTが市場の成長を加速させる」

最近ではアンドリーセン・ホロウィッツといったテック分野の大手ベンチャーキャピタルもNFTに投資している。直近ではオープンシーの2300万ドルの投資ラウンドを主導した。

次のトレンドは?

中長期的には、知名度の高いグローバルブランドがNFT市場に参入し、自社の知的財産を使ってNFTを制作する可能性が高い。例えば、ギズモードは、アメリカン・コミックス大手のDCコミックスを運営するDC社が、NFTによるDCオリジナルアートの販売を検討していると報じている。

DC社は、「DC社の出版物のオリジナル・デジタル・アートの配信を検討している」という。DCは、『スーパーマン』や『バットマン』、『アーカム・アサイラム』、『マン・オブ・スティール』、『ダークナイト・リターンズ』などのコミックを保有している。同社はDCの知的財産を使用したNFTをDCの許可なく販売することは許されないと強調しており、DCの本格的な市場参入の計画を示している。

グローバルブランドが独自のNFTを作成し、マーケットプレイスや第三者の流通業者を通じて発行するという流れが本格化すれば、NFT市場に新たなトレンドが生まれるだろう。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン