MACD(マックディー)は、トレンドの転換、相場の勢いを把握するのに使えるテクニカル指標だ。

2本の線を用いて相場を読むシンプルな指標なので、、売買のタイミングが分かりやすく、初心者でも使いやすいだろう。

使い方は移動平均線と似ているが、売買タイミングをより早く判断できる。多くのトレーダーに人気の指標だ。

今回は、MACDの概要やチャートの見方、売買タイミングの具体例について解説する。

【関連記事】
株価チャートを読めるようになろう!【初心者向けテクニカル分析】
相場の方向が一目瞭然!株価の上値や下値も予測できる一目均衡表とは

MACDとは

MACDとは

MACD(マックディー)とは、短期と中長期の移動平均線を使用したテクニカル指標だ。「Moving Average Convergence Divergence」の略称で、「移動平均の収束・拡散」という意味がある。

MACDは、「新しい株価のほうが影響力が大きい」という考えに基づくのが特徴だ。

一般的な単純移動平均線(SMA)は、一定期間における株価の終値を単純に平均している。一方、MACDでは指数平滑移動平均線(EMA)が使われており、直近の価格の比重を高めて算出している。

新しい株価を重視しているため、単純移動平均線より相場の変化が早く反映されると言われている。

MACDを構成する3つの要素

MACDは「MACD線」「シグナル線」の2本線と「ヒストグラム」で構成されている。出所:日経Smart Chart Plus より作成

MACDは、「MACD線」「シグナル線」の2本線と「ヒストグラム」で構成されている。それぞれの定義は以下の通りだ。

  • MACD線:短期移動平均線(EMA)-長期移動平均線(EMA)
  • シグナル線:MACD線を元にした移動平均線(EMA)
  • ヒストグラム:MACD線-シグナル線

MACD線は、長短2つの移動平均線の差を1本の線で表したものだ。証券会社が提供するチャートのデフォルトの設定では、12日間EMAと26日間EMAの終値を使って計算されているものが多い。

MACD線単体では、比較的長期のトレンドの転換と勢いがわかる。

シグナル線は、MACD線の値をある期間(9日など)で平均したものを線で表している。

シグナル線は、MACD線との交差によって売買タイミングのサインとなる。

ヒストグラムは、MACD線とシグナル線の差を棒グラフで表したものだ。MACD線単体で見るトレンドの転換よりも、比較的短期のトレンドの転換と勢いがわかる。

MACDの使い方

ここでは、MACDの使い方を確認していこう。

MACD線とシグナル線の交差で売買タイミングを判断する

MACD線とシグナル線の交差で売買タイミングを判断する

MACD線とシグナル線の交差を元に、売買タイミングを判断することが可能だ。

ゴールデンクロスは、MACD線がシグナル線を下から上に抜ける状態のことだ。比較的短期間における上昇トレンドへの転換サインで、買いタイミングとされている。

反対に、MACD線がシグナル線を上から下に抜ける状態をデッドクロスという。比較的短期間における下落トレンドへの転換サインであるため、売りタイミングとなる。

ゴールデンクロスとデッドクロスは単純移動平均線と見方が同じなので、初心者でも売買タイミングを判断しやすいだろう。

MACDでは、このゴールデンクロスとデッドクロスを元に、比較的短期間で売買するのが基本となる。

ヒストグラムで比較的短期のトレンドと勢いを判断

ヒストグラムで比較的短期のトレンドと勢いを判断

ヒストグラムは、MACD線とシグナル線の差を棒グラフで表したものだ。比較的短期のトレンドの方向と、その勢いがわかる。

MACD線がシグナル線よりも上(ゴールデンクロス状態)にいる場合は、グラフはベースライン(画像のグレーの点線、0の値)よりも上に伸び、上昇トレンド中であることを示す。

MACD線がシグナル線よりも下(デッドクロス状態)にいる場合は、グラフはベースラインよりも下に伸び、下落トレンド中であることを示す。

棒の長さは、2つ線の乖離の大きさを表している。つまり、ヒストグラムの棒の長さによって、そのトレンドの勢いが強いか弱いか(例えば上昇トレンド中の場合は、どれほど買いが優勢か)を判断できる。

勢いが弱まってきたら、価格の調整に入る可能性が考えられる。

ヒストグラムはまた、トレンドの転換を示唆するダイバージェンスを見つけるのに使うこともできるが、ダマシが多い。そのため初心者は、ヒストグラムでは比較的短期のトレンドの方向と勢いを読み取るためだけに利用するのが良いだろう。

MACD線で比較的長期のトレンドと勢いを判断

MACD線で比較的長期のトレンドと勢いを判断

MACD線とベースラインの位置関係により、比較的長期のトレンドの方向と、その勢いがわかる。

MACD線がベースラインよりも上にあると、比較的長期の上昇トレンドが続く傾向にある。MACD線に続いてシグナル線もベースラインを上回ると、さらに強い上昇トレンドが期待できる。

また、MACD線がベースラインから上に大きく離れているほど、比較的長期のトレンドの勢いが強いことを示している。

MACD線がベースラインを下回っている時は、比較的長期の下落トレンド中であり、ベースラインからの乖離が大きいほど、下落トレンドの勢いが強いことを示している。

MACD線とベースラインの交差でトレンドの転換を判断して売買することも可能だが、それでは遅すぎる可能性があり、MACDの基本的な使い方はMACD線とシグナル線の交差であることを覚えておこう。

また、MACD線もダイバージェンスの発見に活用できるがダマシが多い。初心者はMACDの基本的な使い方から覚えよう。

MACDのメリット:早期にトレンドの転換を把握できる

MACDのメリットは、より早く株の売買タイミングを判断できることだ。

MACDを使わずに、長短2本のEMAの交差によりトレンドの転換を判断するよりも、MACDの基本的な使い方であるMACD線とシグナル線の交差を利用する方が、トレンドの転換を早期に捉えやすい。

MACDは、基本的にはMACD線とシグナル線の交差で売買する、というシンプルでわかりやすいテクニカル指標なので、初心者でも活用しやすいのがメリットだ。

MACDのデメリット:もち合い局面で機能しない

MACDのデメリットは、株価がもち合い局面のときは売買サインが機能しないことだ。MACD線とシグナル線がともにベースライン付近で横ばいの状態になるため、売買タイミングの判断に活用できない。

MACDで売買サインを確認できないときは取引を控え、トレンドが変わるのを待つか、別の銘柄にスイッチすることを検討しよう。

値動きが激しく、短期間のうちに株価が急騰・急落を繰り返す場合も、MACDはうまく機能しないので注意が必要だ。

そして、どのテクニカル指標にも言えることだが、MACDは万能ではない。株価は業績や景気動向といったファンダメンタルズにも影響を受けるため、MACDの売買サインをもとに取引しても予測通りに株価が動かないこともある。

予測が外れた場合は、すみやかに損切りをするなどの対策が必要だ。MACDだけでなく、他のテクニカル指標やファンダメンタルズ要因にも注目しながら売買タイミングを判断しよう。

【関連記事】
ファンダメンタル分析とテクニカル分析 利点や使い分けを解説【株式投資】

実際の株価チャートでMACDを活用!具体的な売買タイミング

ここでは、実際の株価チャートを使いながら、MACDで売買タイミングを判断する具体例を紹介する。

MACDを使った売買 具体例①

まずはトヨタ自動車(7203)の株価チャートを見てみよう。

MACDを使った売買 具体例①

出所:日経Smart Chart Plus より作成

2つの買いタイミング(買い①②)は、ゴールデンクロスが形成されているところだ。MACD線がシグナル線を上に抜け、比較的短期間における上昇トレンドが開始されている。

買い①のあと、デッドクロスが形成されているところ(売り①)が最初の売りタイミングだ。これを逃した場合は、直後にMACD線がベースラインを下回るタイミングで売却できるのが理想だ。

次の買いタイミングは、ゴールデンクロスが形成された買い②だ。

しかし、買い②の直後、MACD線とシグナル線がほとんど平行に重なるような形でデッドクロスが形成されている。MACDはもち合い局面では機能しづらいという特徴があるため、デッドクロスをしていても、ここではまだ売らないという判断ができる。

ゴールデンクロスとデッドクロスだけを見て機械的に売買すると、今回のように買いを入れた直後に売らなければならない場合が出てくるので注意しよう。

買い②の後の売りタイミングは、売り②のデッドクロス時だ。

しかし、より長期的な視点でより大きな利益を目指すなら、売却せずに保有するのも選択肢といえる。MACD線とシグナル線がともにベースラインを上回っているので、「より長期で見ると上昇トレンドは継続し、売りが優勢なのは一時的、ただの価格の調整である可能性がある」と考えられるからだ。

実際に、その後はもち合い局面を経て、株価は再び上昇に転じている。ただし、あくまでも結果論なので、基本的にはデッドクロスを形成した段階で売却しても問題ないだろう。

また、売り②後のもち合い局面でも、MACD線とシグナル線のどちらもベースライン付近で横ばいの状態になっており、売買シグナルが機能していないことがわかる。

このような状況では売買タイミングを判断できないので、様子を見るしかないだろう。上記のケースではもち合い後に株価は上昇しているが、反対に急落する可能性もあるので、相場の動向を注視する必要がある。

MACDを使った売買 具体例②

続いて、イオン(8267)の株価チャートを確認しよう。

MACDを使った売買 具体例②

出所:日経Smart Chart Plus より作成

当初は、株価が3000円前後で推移するもち合い局面が続いている。MACD線とシグナル線がベースライン付近で横ばいになっており、売買サインが機能しない状態だ。この段階では、トレンドが変わるまで様子を見るしかないだろう。

その後下落トレンドに転換し、下げが落ち着いてMACDがゴールデンクロスを形成したところが買いタイミング(買い①)となる。

最初の売りタイミングは、ベースライン付近でデッドクロスが形成されたところだ(売り①)。

売り①を逃した場合は、再度株価が上昇した後、再びデッドクロスが形成されたところが売りタイミングとなるだろう(売り②)。

この後は株価が大きく下落しているため、売り①②のどちらかで売却できるのが理想といえる。

人気のテクニカル指標MACDを活用しよう!

MACDは単純移動平均線と使い方が似ているが、直近の価格を重視しているため、より早く売買タイミングを見極められるのが強みだ。2本の線とヒストグラムだけのシンプルな指標で、初心者でも使いやすいだろう。

株式投資で売買タイミングの判断が難しいと感じる場合は、人気が高いテクニカル指標であるMACDの活用を検討してみよう。

【関連記事】
株は高すぎか安すぎか?RSIで判断しよう【テクニカル分析】