自民党は19日、与党税制改正大綱を公表し、暗号資産に関する課税制度を抜本的に見直す内容を示した。現物取引やデリバティブ取引、関連ETF(上場投資信託)による所得を対象に 20%の分離課税を導入 するほか、損失を最長3年間繰り越せる制度を新設する。
大綱では、金融商品取引法の改正を前提に、特定の暗号資産について20%分離課税、3年間の損失繰越控除、デリバティブ取引・ETFの扱い明確化などを盛り込んでいる。
政府は投資家保護のための説明義務などの法整備を前提条件として、「国民の資産形成に資する暗号資産に限る」としたうえで、市場参加を後押しする制度設計を進める姿勢を明確にした。
今回の大きな変化となるが、暗号資産に対する課税方法の見直しだ。今回の改正案では、暗号資産取引業者に登録された暗号資産を譲渡した場合、その譲渡所得を他の所得と分離して課税する仕組みとなる。税率は所得税15%、住民税5%の合計20%だ。
また、暗号資産取引業を行う事業者には、取り扱った顧客の氏名、住所、個人番号や取引内容を税務署長に報告する義務が課せられる。
損失に関する扱いも大きく変わる。現行制度では暗号資産の損失は他の所得との相殺ができないが、改正案では一定の要件の下で最長3年まで損失を繰り越し、翌年以後の暗号資産譲渡所得から控除できるようになる。これにより大幅な損失が出た年も、以降の税負担を軽減できる可能性が高まる。
また投資信託及び投資法人に関する法令の改正を前提に、暗号資産を投資対象とする投資信託の受益権を一般株式等の譲渡所得の特例の対象に含める仕組みが導入される方向だ。これにより暗号資産を対象とするETFの取扱いも明確化される。
与党は今回の改正について、「暗号資産の資産形成に資する金融商品としての位置付けは、デジタルエコノミーの進展にもつながる」と位置付けており、制度面での安定化を通じて投資家の信頼感向上を図る考えだ。
今回の与党の税制改正大綱を踏まえ、政府の税制改正大綱が決定され、具体的な法案の中に盛り込まれて審議される見込みだ。
