仮想通貨取引所クラーケンは、非米国居住者のユーザーを対象に、トークン化された米国株式の取引サービスを開始する予定だ。これは、伝統的資産のトークン化を通じて提供範囲を広げる同社の戦略の一環とされる。
クラーケンの新たな提携先であるバックドを通じて提供される予定で、各株式を表すトークンは、ソラナブロックチェーン上で発行される。同社はソラナを選んだ理由として、「比類なき処理能力、低遅延、そして活発なグローバル・エコシステム」を挙げている。
クラーケンの共同CEOであるアルジュン・セティ氏は、5月22日に開催されたソラナのイベント「アクセラレイト」に登壇し、「仮想通貨の本質は透明性にある。分散型でオープンソース、そして革新のスピードを最大限に発揮できる環境であり、我々のような企業がその方向へ進化しない理由はない」と語った。
クラーケンが伝統的な投資商品の取り扱いを強化することは、コインベースのような仮想通貨特化型の取引所よりも、株式やETFなど多様な投資手段を提供するロビンフッドのような存在との競争を意識した動きと見られている。
なお、クラーケンは今年4月14日から、米国の一部州(ニュージャージー、コネチカット、ワイオミング、オクラホマ、アイダホ、アイオワ、ロードアイランド、ケンタッキー、アラバマ、そしてワシントンD.C.)の居住者を対象に、ETFおよび株式取引サービスの提供を開始している。
2021年にはバイナンスも類似の株式トークン化サービスを開始したが、各国の規制当局との問題により最終的に取りやめた経緯がある。
セティ氏によれば、クラーケンは「マイクロサービス群」を構築しており、それによりサービスをスケールさせていくとしている。
RWAトークン化への取り組みが加速
クラーケンによるトークン化への取り組みは、近年急速に拡大している現実世界資産(RWA)のトークン化分野への本格参入と位置づけられる。
RWA関連の市場時価総額は、2025年1月3日時点の159億ドルから、5月20日には227億ドルにまで拡大しており、約42.8%の成長を記録している。
現在、この分野ではトークン化された米国債が主力であり、株式のトークン化はまだ3億7340万ドル程度にとどまっている。
ロビンフッドも同様に、トークン化された株式の提供に向けた取り組みを進めており、欧州の投資家が米国上場企業に投資できるよう、自社のブロックチェーン基盤を開発中とされている。