株式投資をするうえでは、景気に対する理解が欠かせない。株価の動きと景気に一定の関係性があり、今後の景気が予測できると株取引で利益を狙ったり損失を回避したりしやすくなるためだ。

本記事では、景気の基本的な考え方だけでなく、景気と株価の関係や景気を測る指標をわかりやすく解説する。 

景気とは

景気とは、経済活動の全体的な動向を表す。

景気が良いとは、簡単にいえばモノやサービスが売れやすい状況だ。モノやサービスが売れやすくなると、企業は製品の生産量を増やす。すると社員に支払われる給与やボーナスが増えて、家や車など高価なものが売れやすくなるだけでなく、旅行のような娯楽にお金を使いやすくなる。その結果、さらに景気が良くなるのだ。

反対に景気が悪いとは、モノやサービスが売れにくい状況だ。モノが売れにくくなると、企業は生産量を減らすため、社員の給与やボーナスも減っていく。そうなると、家や車などの高額商品が売れにくくなるだけでなく、旅行のような娯楽にお金を使わなくなる。その結果、さらに景気は悪化していく。

景気が良いことを「好景気」または「好況」といい、景気が悪いことを「不景気」や「不況」という。

景気は循環する

好景気や不景気は、ずっと続くわけではく。良い景気と悪い景気が交互にやってくるのが一般的である。景気の変動を、景気循環という。

好景気になりモノの生産が増えると、いつか作りすぎて余るときが来る。そうなるとモノの価格が下がり始めるため、企業は生産量を減らす。その結果、仕事は減り、給与やボーナスも減っていき、景気は後退していくと考えられる。

一方で不景気も永遠に続くわけではない。生きていくためには、食料品や日用生活品など、必要最低限の消費は保たれるためだ。不景気が続いても物価の下落はある水準で止まり、再び消費は増え始める。その結果、景気は回復に向かう。

このように景気は、一定のサイクルで循環するため、景気が良い状態を山、景気が悪い状態を谷という。


政府は景気に対して何をしている?

景気の悪化が続いている場合、政府や日本銀行による金融緩和政策が行われる。金融緩和政策とは、日本銀行が一般の銀行に貸し出す際に適用される金利である「政策金利」を引き下げたり、市場への資金供給量を増やしたりして投資や消費などを促す政策だ。

金利が下がると、借りたお金を返済するときに支払う利息の額が減る。そのため政策金利が引き下げられると、民間の金融機関は日本銀行からお金を借りやすくなる。

低金利で資金を調達できた金融機関は、民間企業や個人に低金利で貸し出しができるようになる。すると個人は家や車などの商品をローンで購入しやすくなり、企業は資金を調達して設備投資をしやすくなるのだ。その結果、経済活動が活発になり、景気が回復していくと考えられる。

反対に好景気が続き、景気が過熱しすぎた場合、政府による金融引き締めが実施される場合がある。金融引き締めでは、政策金利が引き上げられるため、民間金融機関が個人や企業に対する融資の金利も引き上げられる。

景気と株価の関係

一般的に景気がよくなると株価は上がり、景気が悪くなると株価は下がる。景気が良くなると株価は上がる傾向にあるのは、モノが売れやすくなり企業の売上が増加して業績が上がるためだ。一方で景気が悪くなると、モノが売れにくくなって企業の売上が減るため、業績が下がって株価は下落する。

また株価は、現在ではなく将来の経済状況を表しているといわれている。これは、投資家が将来の予測をもとに投資判断をしているためだ。将来的に企業の業績や経済状況が良くなるだろうと投資家が予測すると、株式に投資する投資家が増えるため株価は上昇する。反対に投資家が今後の企業の業績や経済状況に悲観的であると、株式に投資する投資家が減って株価が下落する。

ただし景気と株価が、必ずしも関連するとは限らない。とくに新型コロナウイルス感染症が世界中で感染拡大したときは、景気が回復していないにもかかわらず日経平均株価が上昇する現象が起きた。

景気が悪化しているにもかかわらず、株価が上昇した要因は2点あると考えられる。1点目は、外出自粛によって旅行やレジャーなどの消費にお金を使わなくなった人々が、投資に資金を回し始めたためだ。2点目は、日経平均株価を構成する銘柄に、コロナによって打撃を受けた飲食業や観光業があまり含まれていないためだ。

景気は、株価に影響を与える要素の一つに過ぎない。そのため株式投資をする際は、金利や為替、海外市場など、景気以外の要素も含めて総合的な投資判断をすることが大切だ。

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景気を確認するための手段

ここでは、景気の把握に役立つ経済指標を解説する。なお、1つの経済指標だけを確認しても正確な景気は把握できない。そのため景気を判断する際は複数の経済指標を確認することが大切だ。


GDP

GDP(Gross Domestic Product)とは、国内総生産のことであり、1年間で生み出した財やサービスなどの付加価値を表す。内閣府によって、年に1回の年次統計と四半期ごとの速報値が発表されている。

GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2種類がある。名目GDPとは、物価変動を考慮しない実数の国内総生産であり、1年間でモノやサービスが売れた金額をそのまま合計して求める。実質GDPとは、名目GDPから物価変動の影響を除いて算出する国内総生産だ。

GDPの前年や前期からの増加率を経済成長率といい、増減を見ることで経済が成長したかどうか判断できる。名目GDP同士を比較する名目経済成長率と、実質GDPを比較する実質経済成長率がある。

2020年における日本の実質GDPは526兆4000億円であり、実質経済成長率はマイナス4.6%であった。日本は、GDPの半分を個人の消費が締めている。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や営業自粛の影響で個人の消費が落ち込み、11年ぶりのマイナス成長となった。

消費者物価指数(CPI)

消費者物価指数(CPI・Consumer Price Index)とは、人々が日常生活で購入するモノやサービスの値段の動きを総合した指標であり、総務省統計局が毎月発表している。

景気がよくなり、人々がモノやサービスにお金を使いやすくなると物価は上昇していく。反対に景気が悪くなり、人々がモノやサービスにお金を使わなくなると物価は下落していく。物価の変動を知ることができる消費者物価指数は、「経済の体温計」ともいわれている。

消費者物価指数の種類には、すべてのモノやサービスの値動きを表す「総合指数」のほかに「生鮮食品を除く総合指数」や「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数」がある。生鮮食品は、天候によって値段が変わりやすい。また電気代やガス代、ガソリン代などのエネルギーは、原油価格の影響を受けやすい。物価の動向をより的確に把握するために、生鮮食品やエネルギーを除いた指数も公表されている。

消費者物価指数と株価は、直接的に連動しているわけではない。また日本経済の動向は、株価のほうが早く反応し、遅れて消費者物価指数が反応するといわれている。

一方で企業が今後の戦略を立てる際は、消費者物価指数を参考にするのが一般的だ。消費者物価指数の動きに対して、企業が取った戦略次第で株価が変動する可能性がある。よって投資判断をする際は、消費者物価指数も把握しておくことが大切だ。

景気動向指数

景気動向指数とは、現状の景気判断や将来の景気の動向を予測する際に使われる指標だ。内閣府が毎月発表している。生産や消費、物価など、経済にとって重要かつ景気の変動に関係する複数の指数をもとに、景気動向指数は算出される。

景気動向指数には、コンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)がある。簡単にいえば、CIが変化の大きさを、DIは変化の方向性をとらえている。

CIは、基準とする年を100として、100を上回れば景気が拡張局面にあると判断され、下回れば後退局面にあると判断される。DIは、算出に用いられる経済指標について、上昇している指標の割合が継続的に50%を超えていると景気が拡大していき、反対に数カ月連続で50%を下回っていると、景気は後退局面であると判断する材料になる。

景気動向指数は、CIとDIのそれぞれについて「先行指数」「一致指数」「遅行指数」の3つの指数にわかれている。

先行指数とは、数カ月先の景気を表すといわれる指数であり「東証株価指数」や「新規求人数」など12の指数をもとに算出される。

一致指数とは、景気に対してほぼ一致して動く指数であり、「有効求人倍率(除く学卒)」「営業利益(全産業)」など10の指標をもとに算出される。

遅行指数は、実際の景気から半年〜1年遅れで反応するといわれる指数だ。「家計消費支出」「完全失業率」「消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)」など9指標をもとに、遅行指数は算出される。

将来の景気を予測する際は先行指数を、現状の景気を把握するときは一致指数を確認する。遅行指数は、景気の変動を事後的に確認するときに用いられる。たとえば先行指数と一致指数で景気回復の兆しがみられており、遅行指数でも景気の回復が確認できたら、景気は本格的に回復するものであると考えられる。

先行指数の一例

一致指数の一例

遅行指数の一例

東証株価指数

有効求人倍率

家計消費支出

新規求人数

営業利益

完全失業率

新設住宅着工床面積

商業販売額

消費者物価指数

実質機械受注

輸出数量指数

法人税収入

投資環境指数

耐久消費財出荷指数

きまって支給する給与

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