仮想通貨市場は6月28日にビットコインが35500ドルを回復したことで、楽観的になっている。そのため、短期的には強気トレンドが始まると期待する向きもある。

しかし、こうした強気の動きにも関わらず、35000ドルのレジスタンスを維持できなかったことは、トレーダーがレジスタンスをブレイクアウトするたびにポジションを閉じていることを示しており、さらなる下落を警戒すべきだと指摘するアナリストもいる。

そうした消極的な声も聞かれる中、ビットコインの毎日の発行量とマイナーの収益性に着目し相場の動向を探る指標「プエル・マルチプル」を開発したアナリスト、デビット・プエル氏は、同指標は史上5回目のビットコインの買いシグナルが出ていると指摘した。

プエルマルチプルはビットコインの毎日の発行額を、発行額の365日移動平均で割って算出する。

The Puell Multiple equation and historical performance. Source: LookIntoBitcoin.com

上図のように、プエル・マルチプルからは、緑のボックスで示される範囲に指標が突入した際には上昇相場が始まっており、赤のボックスで示される範囲に入ると、大きく下落してきたことがわかる。

過去にプエル・マルチプルが買いを示した例としては、2018年半ばの「仮想通貨の冬の時代(クリプトウィンター)」や2020年3月に新型コロナウイルスによって価格が暴落を示した時などだ。

2017年末にはビットコイン価格が当時の最高値を記録した時や2013年の強気相場でも売りシグナル(赤いボックス)を示した。

採掘難易度が歴史的な低水準

最近のビットコイン価格が苦戦している理由は、中国でのマイニング業者の取り締まりによって、多くの大規模なマイニングファームが閉鎖され、他国に移転したことだ。アナリストはハッシュレートがこれまでの歴史的な高値から暴落したことで、次の採掘難易度調整が歴史的な低水準になると指摘している。

Bitcoin mining difficulty. Source: Glassnode

マイナーはマイニングにかかる固定費を上回る利益を出す必要があるために、保有するビットコインを売却する。さらに最近はビットコイン価格が最高値から半分に落ち込んでいるために、これまでと同じコストをカバーするには2倍のビットコインを売却する必要があることや、マイナーが中国から事業を移転する資金を捻出するために、大きな売り圧力がかかった。

現在、ビットコイン価格は若干の上昇を見せているが、プエル氏は複数の要因を考慮すべきであり、どの指標も単独で意思決定に使用すべきではないとしている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン