楽天の三木谷浩史社長が率いる新経済連盟は30日、仮想通貨・ブロックチェーンについて金融大臣や経済産業大臣、IT担当大臣宛に要望を提出した。投資型ICOSTOに関する規制の柔軟化や、ステーブルコインの規制明確化などを求めた。

ブロックチェーンで「世界トップに」

ブロックチェーン分野で「世界のトップランナーを目指すべき」とし、政府に積極的な推進を求め、次の提言を行った。

1)政府は、各行政分野でのブロックチェーン活用の検討を
2)官民協議会を設置し、国内外の最新動向の共有、政府・自治体・民間のユースケース及び社会実装に向けた課題を洗い出すべき
3)ブロックチェーンが活用される社会にふさわしい法規制・監督のあり方や、民間発ビジネス創出の後押しをするために必要な支援、関係省庁横断的な機能の設置の検討を

新経連は、「ブロックチェーンは制度設計の際に前提とされておらず、既存制度(レガシー)がブロックチェーン普及の足かせとなってしまう可能性」を懸念している。

STO、過度な規制に懸念

仮想通貨(提言中では「暗号資産」)については、「今後府令やガイドライン等の詳細を定める際は、セキュリティトークンやカストディ、ステーブルコインについて、現状の課題を十分に踏まえ、イノベーションを阻害しない規制の内容とすべき」としている。

昨年の金融庁のスタディグループの議論をもとに、今年5月に資金決済法や金融商品取引法が改正された(施行は来年4月)。特に、投資型ICO等で発行されるセキュリティトークンは金融商品取引法の適用対象となった。セキュリティートークンは、内閣府令で定められる場合を除き、「1項有価証券」として厳格な規制が課されることになる。

新経連は、「1項有価証券」と分類されることで、事業者側のコストが上昇し、トークン化を断念する動きが広がることを懸念。「1項有価証券」として規制されないケースを次のように定めるべきであると提言している。

・譲渡対象が制限されている
・サービス内の会員やホワイトリスト掲載者にのみ譲渡可能
・一定のロックアップ期間が設定
・スマートコントラクト等の技術により、流通性が制限されていることが担保、など

またSTOに対応した制度設計を進めることも提言している。

・米国の証券規制等も参考にしつつ、投資家属性等に応じたきめ細やかなルール導入
・  少人数私募の取得勧誘(声かけベース)について、STOについて購入者ベースとする特例を設けることを含めた見直し
・株式投資型クラウドファンディングの1億円・50万円の上限を緩和

ステーブルコインの規制明確化を

新経連は、従来の資金決済法などの規制がP2Pで転々流通するステーブルコインの存在を想定していないと指摘し、次のように提言している(転々流通についての解説はこちらを参照

・ステーブルコインの類型ごとの法的性質を、ガイドライン等により可能な限り明確化する
・ 特に、法定通貨担保型以外のコインは、非通貨建資産であり暗号資産となることを明確化する

新経連のステーブルコインの分類案では、テザーのような法定通貨担保型は「為替取引」または「前払式決済手段」とし、フェイスブックのリブラのような複数法定通貨によるバスケット型などを「暗号資産」とするべきだとしている。

出典:新経連「ブロックチェーンの社会実装に向けた提言」

カストディ規制の範囲具体化

5月の法改正では、仮想通貨の管理のみを行う事業者(カストディ業者)も規制対象となった。新経連は、カストディ規制の具体的範囲が明確でないことが課題であるとし、規制範囲や定義について次のように提言している。

・カストディ事業者への該当性及び規制内容の判断はリスクベースアプローチを採用し、必要最小限の規制とする
・秘密鍵の管理方法によってリスクのないケースは、カストディ事業者とならない旨、ガイドラインにおいて明確化する
・コールドウォレットの定義を「流出リスクが十分に低減されている又はそれと同視できる状態での保管」とし、物理的な遮断(例:秘密鍵を保管するハードウェアを金庫に保管)に限定しない

新経済連盟は今年2月にも金融庁に対して、総合課税から申告分離課税への変更など、税制改正を中心とした要望を提出していた。今回の提言は、2月の要望を踏まえ、ブロックチェーンや仮想通貨に関連する会員企業をメンバーに設置した「ブロックチェーンWG」の議論をもとにとりまとめたものだ。