仮想通貨業界はITバブルと同じ道をたどる運命か?

ここに示されている意見は著者個人のものであり、必ずしもコインテレグラフの意見を反映したものではない。

 昨年の熱狂的な仮想通貨ブームでは、仮想通貨トークンの価格が元の数千倍にもなるという上昇が見られた。また、史上最高値に達したトークンはビットコイン(BTC)だけではなかった。イーサリアム(ETH)、カルダノ(ADA)、リップル(XRP)、ステラ(XLM)、ネオ(NEO)といったアルトコインの価格でさえ、投資家らの需要が増加に伴い上昇し、どれも新たな水準の高値をつけることとなった。今年1月のはじめ、仮想通貨市場は時価総額合計で8000億ドル(85兆1000億円)近い高値にまで達した。

 

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 このように市場が急上昇したため、多くの人、とくに従来の投資家は、この現象をバブルと呼ぶようになった。人は過去の出来事を用いて新しい出来事を理解しようとすることから、仮想通貨空間は一般的に、90年代後期から00年代初期に見られた「ドットコム・クラッシュ」の視点で捉えられている。いわゆるドットコム・バブ(ITバブル)では、その結果、多数の企業が終わりを迎えることとなった。

 仮想通貨空間も同様の道筋をたどるのだろうか。

まだ未開拓領域

 仮想通貨産業は、まだ未開拓な領域と考えることができる。テクノロジーとしてのブロックチェーンは、徐々により広い分野で採用されるようになり始めたばかりである。ベンチャー企業や参加者を抑止するような規制はまだわずかしかない。市場の大部分は投機的取引だ。仮想通貨トークンの後ろ盾となっているプロジェクトの大半は、現実世界における実際の価値をいまだに明確に示せておらず、もたらしてもいない。

 何が仮想通貨のパフォーマンスの原動力となっているのか、その原理を突き止めることは困難に思われる。トークンの突然の上昇に大した基本原理がないような場合でも、あるプロジェクトから別のプロジェクトへと支持者はすぐに移動するのである。

 また、ある出来事が市場にどれだけ影響を与えるかを予測するのも困難である。たとえば、中国がイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を禁止したことで、多くの人々は中国を拠点とするブロックチェーン・プロジェクトが苦戦することになるだろうと予測した。しかしこの禁止措置は、NEOのようなベンチャーにとっては非常に有利に働いたようである。このプラットフォームのサービス開始は、国による禁止措置の前であったため、このところ出現している詐欺プロジェクトに使用されることはほぼ避けられた。このプロジェクトはより多くの支持者を集め、そしてNEOの口コミや価格変化は、ビットコインが下落したときですら回復する力強さを見せた。

わかりやすい比較

 バブル経済は、資産がその本質的価値よりも明らかに高い価格で取引される場合に形成される。仮想通貨マーケットの高い投機的性質は、確かに多くの仮想通貨の過大評価に貢献した。たとえば、ジョーク通貨ドージコインの時価総額は、執筆時点で3億2300万ドルを超えている。この通貨は、最盛期には10億ドルを超えるほどにもなった。パロディにすぎないプロジェクトとしては、この数字は驚異的である。

 つまり、伝統的な定義によれば、仮想通貨で生じていることをバブルと呼ぶだけの根拠はあると言える。そして、破壊的技術を含むものとしてはドットコム・バブルが直近のものであるということを考えれば、これをドットコム・バブルと比較するのはごく自然なことであり、極めて妥当なことだと言える。この両者には、出来事の積み重ねにおいて類似性が見られる。

 破壊的技術の到来。簡単に使えるパソコンと商業的インターネット・プロバイダの出現、そしてより優れたウェブ・ブラウザ技術によって、インターネット企業にとっての消費者市場が生まれることになった。90年代には、インターネットも急速に普及した。仮想通貨に関して言えば、この仮想通貨ブームよりもかなり前からブロックチェーンは存在していた。分散台帳の使用は、10年以上前から提唱されてきたものである。ビットコイン周辺の話題が盛り上がり、イーサリアムのようなプラットフォームの導入によってブロックチェーン技術がさまざまに応用されるようになったのは、ごく最近になってからだ。伝統的な機関は、ブロックチェーン・プロジェクトそのものに乗り出すことで、このテクノロジーを合法化した。

 ベンチャーの爆発的増加。両者の特徴として、テクノロジーを活用しようとするプロジェクトやベンチャーの爆発的な増加があった。ドットコム・ブームでは、数百という企業が設立された。99年には457件の新規株式公開(IPO)があり、そのほとんどはテクノロジー企業だった。市場がピークとなる00年には、4715社がナスダックで取引されていた。仮想通貨業界も、ICOで類似の経験をしている。17年にコイン・スケジュールに記録されたICOは210件で、前年の43件から増加した。これらのICOは、60億ドル以上の資金を調達した。今年に入り、すでに70件以上のトークン販売が実施されている。

ICO

株式・トークン価格の急激な上昇。ドットコム業界が発展する間に、インターネット企業の株価は急騰した。99年のIPOのうち、117社では株価が取引初日に倍になり、市場の活況を際立たせた。ナスダックは00年3月に最高値をつけ、その日中最高値は5132であった。仮想通貨トークンでは、さらに高い上昇が見られる。仮想通貨市場では、ほんの数カ月でトークンの価格がICO価格の数百倍に上昇することも珍しくない。

NASDAQ

 こうしたパターンは、多くの人々に仮想通貨が同じ道をたどると感じさせる原因である。ドットコム・バブルは、02年のある時期に崩壊した。ナスダックは02年9月に底値を打った。最終的に質の悪いプロジェクトが露呈し、過大評価であることが明らかとなる。市場は最後には大規模に修正される。コインはその価値を失うと予測される。プロジェクトやベンチャーは倒産する。投資家は投資金を失う。

 最近の出来事は、何となくこれに類似した様相を漂わせているようだ。2月には大きな修正があり、ビットコインの価格は6000ドル水準まで暴落した。他のコインも大きな打撃を被った。時価総額合計は、ピーク時から60%以上も下落して2650億ドル周辺となった。そして多くの人々が、これはバブルの崩壊だと考えた。アナリストらが、ビットコインは1000ドル水準を下回るだろうと警告したほどである。3月を通じてトークン価格は非常に変動が大きく、さしあたり底値を見るには至っていない。

 

得るべき教訓

エデンブロックCEOで共同設立者であるノーム・レベンソン氏は次のように語る

「だから、本当に問うべきことは『私たちはバブルの中にいるのか』ではない。そうではなく、『バブルがどれだけ大きくなるのか』なのだ。もし破壊的技術の自然な進化を尊重するなら、大規模な投機的急上昇がある場合には、それと同じだけ大規模な暴落があるということを理解しなくてはならない。17世紀のチューリップ・バブルからわずか15年前のインターネット・バブルまで、暴落は避けられないものなのだ。つまり大事なことは、私たちが過去のバブルから何を学べるかということであり、そして私たちがどれだけそれらを指針として仮想通貨市場で行動できるかということである」

 

 ドットコム時代の失敗例としての象徴的存在であるペッツ・ドットコムのケースは、仮想通貨のステークホルダーたちにさまざまな教訓を与えてくれるはずだ。インターネットの到来により、企業はこぞって直販Eコマースの取り組みを追求した。ペッツ・ドットコムは、アマゾンがオンラインチャネルを通じて本を売るような形で、ペット関連用品を販売しようとした。この企業は、ベンチャー資本を呼び込むこともでき、そしてその評価は上昇した。

 しかし、そのビジネスモデルはお粗末で、収益率は当然のこと、その持続可能性を保証するための独立した市場調査は行われていなかった。そしてこの企業は採算を得られなかったのである。ペットフードやネコ砂のような、重量のかさむペット用品の高い配送費用を負担しようとしたことは、明らかに見落とし以前の問題だった。

 仮想通貨業界でも、すでに同様のお粗末な計画の追従的ベンチャーが現れて始めている。ブロックチェーン技術が特定のユースケースを扱えるほどに成熟しているのか、こうしたベンチャー企業が対象とする垂直市場に実際に分散化技術のニーズがあるのかをよく考えずに、企業はとにかく、何もかもブロックチェーンでトークン化しようとしているように思われる。ただし、ブロックチェーンのベンチャーとそのまま比べることはできない。次にあげるのは、ビジネスにおける重要な相違点である。

 ゼロないしは最小限の物流。ドットコム企業の多くは、オンラインチャネルと物理的な出荷処理の両方でバランスをとりつつ企業経営することを強いられていた。ペッツ・ドットコムやイートイズ、ウェブバンのように、多くのドットコム企業は物流に圧倒されてしまうこととなった。ブロックチェーンのプロジェクトは、主にデジタル・トランザクションやトークン化された資産を扱っている。これらのベンチャーがオムニチャネル、あるいは店舗販売を行う実店舗であることを求めているのでもない限り、サービス上のほとんどのやりとりにおいて、物流の問題は最小限である。

 小規模な労働力。ドットコム企業の多くは、物理的な出荷処理を行う必要があり、そのために開発や販売、マーケティング・スタッフに加え、倉庫業務や物流のためにあらゆる人員を雇用しなくてはならなかった。ブロックチェーン・チームの大半は、経費節減型である。それらの大半は、リモートでの運用すら容易であり、物理的なオフィスやインフラを用意する必要性は小さい。

 テクノロジーとの融和性。市場の点でいうと、仮想通貨ベンチャーには年代構成が有利に作用している。ドットコム企業は、ベビーブーム世代やX世代など、テクノロジー移行期にある人々に対処する必要があり、顧客教育やアフターサービスに人員を割り当てざるを得なかった。今や支配的な人口集団はミレニアル世代である。仮想通貨市場の参加者は、今や高額なトランザクションのためにデジタルチャネルを使用することに何ら不都合を感じない。

 

イノベーションと持続可能性

 仮想通貨産業に参加する場合、とくに交換や投資を行う場合には用心しながら進むことが、まだまだ賢明ではあるとは言え、ブロックチェーン技術がもたらしたものを完全に否定するのはフェアとは言えないだろう。ドットコム・バブルとの類似点は、ステークホルダーたちにとっては教訓とされるべきものである。

 また、忘れてはならないこととして、ドットコム・バブルの結果、真にイノベーティブな組織や技術は難局を乗り切れるということが示された点がある。アマゾンやイーベイのような企業は、目新しいアイデアと優れたビジネスの才を組み合わせることで成功につなげられるということを示して見せた。

 仮想通貨を取り巻く今日の状況と20年近く前のドットコム企業の環境とに、違いがあることは確かである。ベンチャー企業が可能な限り最善の意思決定を行うためには、こうした微妙な差異にうまく対処できなくてはならない。仮想通貨ベンチャーがドットコム企業と同様の道をたどる運命にあるのかどうかはまだわからない。少なくとも現時点では、仮想通貨のステークホルダーたちには別の筋書きの可能性も残されている。