中国の中央銀行デジタル通貨が導入されれば、マカオのカジノ業界が収益減少に直面する可能性がある。

ブルームバーグの12月2日の記事は、マカオのカジノのジャンケット(富裕層の顧客とカジノとを仲介する業者)の声を伝えている。それによれば、ジャンケットの顧客は、デジタル人民元がマカオのギャンブルセクターで導入されることを懸念しており、ほかの地域のカジノに目を向けているという。

ブルームバーグは、現地のカジノ運営者がマカオのゲーム検査調整局から、現在のような香港ドルではなく、デジタル人民元でのカジノチップ購入の実現可能性について話し合ったという匿名の情報源による話を伝えている。

情報筋によれば、アリペイやウィーチャットなどのデジタル決済プラットフォームは、中央政府が資本の流れを追跡するのを支援しないため、マカオのカジノで使用は検討されていないという。

しかし、マカオの当局は12月2日の声明で、「カジノでのデジタル化された人民元の使用に関して議論しているというメディアの報道はあるが、これは誤りだ」と述べている。

当局は否定する声明を出したが、この噂はマカオのカジノ業界に衝撃を与えたようだ。マカオのカジノ運営者であるギャラクシーエンターテイメントグループと、マカオ最大のジャンケット業者のサンシティグループホールディングスの株価は、それぞれ3%近く下落した。

マカオのカジノへのデジタル人民元導入は、香港ドルによるクレジットサービスを提供することでかなりの収入を得ているジャンケット業界を脅かすことになるだろう。ジャンケット業界はすでに困難に直面している。新型コロナウィルスのパンデミックの中でマカオの収益は270億ドル減少しているという。

中国政府によるデジタル人民元導入は、マカオのギャンブル業界の資本の流れについて、より詳細な情報を当局に提供することになるだろう。ブルームバーグに登場した情報筋は、カジノで大金を使う「ハイローラー」たちが怖気づくことになるだろうと述べている。あるジャンケット業界の人間は、次のように述べている。

「水清ければ魚棲まず。カジノで透明性が必要となるならば、ビッグギャンブラーはいなくなるだろう」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン