米証券取引委員会(SEC)委員長のジェイ・クレイトン氏は11日、仮想通貨及びイニシャル・コイン・オファリング(ICO、仮想通貨で広く資金調達する手法)について公式声明を発表した

 声明は、個人およびプロの投資家に向けた警告となっており、これまでICOで販売されてきたトークンのほとんどは米国法における証券である可能性が高い、との結論を示した。

 クレイトン氏は声明の冒頭で、個人投資家に向けて仮想通貨及びICO市場についての一般的な警告を述べている。それは、ICO主催者に対して「質問をし明確な回答を求めてほしい」といった基本的な助言を含んでいる。

 また、仮想通貨及びICOに投資する際の特有のリスク、特に投資した資金が海外に移されることがしばしばあるという事実も記している。クレイトン氏が警告するように、これが理由で、SECのような国の規制機関が詐欺や「悪人」から投資家を保護することが難しくなっている。

何と呼ぼうとも証券は証券

 クレイトン氏の声明の2つ目の部分は、証券専門弁護士や会計士、コンサルタントを含む市場専門家に向けられており、投資家を保護する彼らの責任を強調している。呼び名がトークンでも通貨でもコインでも、各資産案件を慎重に考慮して、米法における証券であるのかどうかを判断するよう専門家に促している。

 ある投資が証券であるかを判断する際には、形式より取引内容の方が重要である、とクレイトン氏は述べる。トークン、コイン、通貨など、何と呼ばれようとそれぞれをケースバイケースで見て米国証券法における地位を判断しなければならない。以下のように、アメリカで証券とされた資産は米国法に従ってSECに登録しなければならず、さもなければ相応の結果に直面することになる。

 SECによれば、売買申し込みが「他者の起業努力や経営努力から得られる利益を合理的に期待して共同事業に対し行われる金銭の投資」である場合、それは証券と見なされる。

 クレイトン氏の見方では、これまでICOで売り出されてきたトークンのほとんどが、有用性も持っているかどうかにはかかわらずこの定義に入る。

全般的に、促進されているのを見たことがあるイニシャル・コイン・オファリングの構造は証券の売買申し込みと売却を伴っており、証券登録要件と連邦証券法の他の投資家保護条項に直接的に関わっている。一般的に言ってこれらの法律は、投資家は投資している対象と関連するリスクを知るべきであると定めている

 この事実にもかかわらず、クレイトン氏が指摘するように、これまでSECに登録されたICOは皆無である。

結論:ICOは良いことかもしれないが、規制されなければならない

 クレイトン氏が市場専門家への話をICOについての肯定的な内容で始めたているのは注目に値する。

イニシャル・コイン・オファリングは―証券の売買申し込みに相当するかどうかにかかわらず―起業家やその他の人が革新的な事業などのために資金を集める有効な方法になり得る、と私は信じている。

 しかし、続けてICOに投資する際の特有のリスクを詳述している。ICO及び仮想通貨への投資は急増しており、SECはアメリカにおいて証券法の執行に全力で取り組み続けるだろう。執行に関して、クレイトン氏は以下のように述べた。

SECの法執行部に対し、この分野の厳しい取り締まりを継続し、連邦証券法に違反するイニシャル・コイン・オファリングを実施する者には強制措置を推奨するよう依頼した。

これが投資家にとって意味すること

 要するにクレイトン氏の声明は、仮想通貨及びICOに投資する際には慎重になり良識に従うようにという投資家全員に対する嘆願である。しかし、最終的にはSECはアメリカ市民しか管理せず、従ってクレイトン氏の警告は特にアメリカの投資家または企業、あるいはアメリカ市民と取引しようとする者のいずれかに適用される。

 去る7月、SECは投資家に対し彼ら自身も米国法に従う責任があることを思い出させた。未登録証券に合法的に投資するためには、認可された投資家になるか、一定の純資産または収入の要件を満たすことを米国証券法は義務付けているのだ。

 これまでICOで販売されてきたトークンのほとんどは米国法における証券である、というSECの最新の結論が意味するのは、アメリカの国外に拠点を持つICOは、SEC登録の疑念を避けるためアメリカ市民が彼らのトークンセールに参加することを禁止し続ける可能性が高いということだ。

 一方では、資金調達努力にアメリカ市民を合法的に含めるために、ICOはおそらく必要不可欠な際にSECへの登録をようやく始めるだろう。