SWIFTのシステムにブロックチェーンが組み込まれることで、グローバル・バンキングや暗号通貨全てにおいてどのような影響が生まれてくるのだろうか?

世界中の専門家たちが、SWIFT米国際相場・銀行業務トップであるウィム・レイメイカーズ氏の出した声明について、コインテレグラフに様々意見を寄せている。

 

レイメイカーズ氏によると、国家間で金融機関が安全なメッセージサービスを提供することでブロックチェーンを含むフィンテックの技術革新を統合し、より迅速で透明性の高い国を超えた決済システムが実装できるという。International Business Timesは、SWIFTは2016年の初め頃にこの構想が計画されていると報じていた。

 

ウィム・レイメイカーズ氏曰く―

 

“変わりゆくコルレス決済に目を向け、二国間のコルレス送金よりもむしろブロックチェーン技術を導入することを視野にいれるべきです”

 

レイメイカーズ氏はブロックチェーンテクノロジーがセキュリティなど様々分野に活用されていることに言及したが、実現に向けて銀行が発展していくための戦略的なロードマップを描く必要性も指摘している。銀行がそれを現存するシステム内に構築し、最大限にコンプライアンスを保ちコントロール出来るように助言しているようだ。

 

既存のシステムにイノベーションを

コインテレグラフは、そのような将来的なイノベーションの可能性について、アメリカ、中国、イギリス、ギリシャ、イタリア、カナダ、インドなど世界中をまたにかけてブロックチェーンやビットコイン業界を牽引しているスペシャリストに話を伺うことにした。

セキュリティと分散システムの専門家でもある、アンドレアス M. アントノポウロス氏だ。氏は、ブロックチェーン技術や、ビットコインなどのオープンソースなものに対しての理解がSWIFTにはかけていると以下のように指摘している―

 

“SWIFTは、ビットコインのように、よりオープンでステムもオープンソース化されていて、分散化型で、セキュリティも堅牢、且つ金融サービス機構からの認可にも依存せずに存在できる、そのような経済システムがまかり通る世界は認めなくないといわんばかりに、アクセスの閉じた中央集権型でセキュリティもおぼつかない革新的でない方法を採用してきたのです。彼らは数え切れないほど、これから壁にぶつかっていくことでしょう。一方で、最終的にはオープンシステムに携わろうと鞍替えすることもつゆ知らず、何千万人もの開発者をトレーニングし続けているのです。SWIFTは基本的にはデザインの在り方を認めてはいます。とはいえ、完全にその使い方を見誤っているので、ビットコインに軍配があがるといえます”

 

一方で、BTCCの最高経営責任者であるボビー・リー氏はSWIFTがブロックチェーンに関心をよせていることに対して満足しているようだが、こう警告している―

 

“ブロックチェーンは素晴らしいテクノロジーです。SWIFTもまた関心を示していることを嬉しく思っています。しかし、私は喜ぶのはまだ早いと思うのです―ビットコインにおけるブロックチェーンは、分散型のシステムであるため革新的で便利です。―ブロックを確認するためのハッシュパワーがパソコン上で生成できれば誰で参加できることができます。つまり例え皆が閲覧可能でオープンな新しいブロックチェーンソリューションだとしても、私的なデータベースであることに変わりはないですし、ブロックチェーンの利用方法としては革新的ではありません。”

 

DigiFin Instituteの共同創設者兼ビットコイン・アライアンス・カナダのディレクターであるマニー・イーガー氏の発言は、初期の段階でコンソーシアムや、静かに急速にブロックチェーン技術を試作しリードしてきたような金融機関が一体どれだけあったのか思いださせてくれる―

 

“認可から非認可、私的なものへ、そして公的なブロックチェーンのプラットフォームとアプリケーションへ。どのセクターやブロードアプリケーションも、今は調査段階にあります。IoTから銀行間の取引、送金、そして支払処理などです。SWIFTはかなり初期の段階から、アイデンティティを促進するツールとして、ブロックチェーン、セキュリティ、コンプライアンス、関連するガバナンスやプロセスにおけるリスクを減らす方法や、銀行間の支払いを迅速化する手段として、その支持基盤会社を代表して興味を示していました”

 

マニー氏は、今年の初めにSWIFTがいくつかの試作委託研究開発に着手し始めていることに対して言及し、ポジティブな結果をもってさらなる関心、投資、調査に拍車をかけなければならない、と述べた。

 

“かなりの数のメジャーな銀行がR3の知識を引き出し、従来のシステムや、分散型のブロックチェーンアプリケーションを支援することで、ブロックチェーンの価値としてのレイヤーを何層にもし分厚く練り上げ、その関心と開発に拍車をかけています。2016年には実を結び、具体的なR&Dのプロセス数が明らかになるでしょう。―次はフィンテックスタートアップや、投資家の数です”

 

ビットコイン専門の弁護士で、英国のデジタル通貨協会の代表を務めるAdam Vaziri氏はこう述べている―

 

“私はこれが画期的なことだとは考えていません―むしろどう生き残っていくか、どう適応していくかについて考えるべきです。また、SWIFTが世界的な銀行システムとして決済システムのパイプを持っていることから考えても、おそらくSWIFTよりブロックチェーンをうまく採用できる機関はないでしょう。彼らが共有元帳の利用をあおっているのは至極自然です―これは明らかな第一歩です”

 

ウィム・レイメイカーズ氏によれば、”国をまたいだアカウント同士で決算を行うには、メッセージと決算、どちらのレイヤーも必要になってきます”

Adam Vaziri氏はこうコメントしている―

 

“しかし今後は―こうした、わたしたちの、あなた方のアカウント、という考えた方は過去の遺物となっていくでしょうし、コルレス勘定も同様です。未来の銀行はデジタルトークンを発行し、顧客がP2Pレベルで取引できるようになるでしょう―決算がなければ、勘定する必要も生まれません。将来的には償還エージェントのように、(銀行間で承認されたプロトコルを通して)ローカルな現金と引き替えに発見された銀行のクレジットトークンを受理するなどの役割をはたすことになると思います。SWIFTは企業の未来を見据えて、そういったプロトコルを将来的に構築する必要があります”

 

ビットコイン・アライアンス・インドの創設者、Vishal Gupta氏は、SWIFTのこういった動きの利点についてこう述べている―

 

“SWIFTが早ければ2016年にはブロックチェーン技術をシステムに統合したいと考えていると聞いて、とても興奮していますし、現時点で、ブロックチェーンにおける分散型元帳が優れた利点を持っている、ということの裏付けでもあります。これが世界の金融システムに一つの共通したアーキテクチャを導入していく上ための最初のステップとなるかもしれません。消費者と銀行が、お互いにコストと時間、どちらも省けるようになるのです”

 

イタリアにおける初めてのビットコインATMのオーナーであるルカ・ドルドロ氏もまた、銀行が革新的な技術によって既存のルールを塗り替え始めている点を指摘している―

 

“金融と銀行の世界で新たな認識とその後の意識が生まれ始めていると言えるでしょう。銀行家たちは、こういった考え方が成長していくことで、ブロックチェーンという新たな取引確認元帳システムによって既存のルールが陵駕されてしまうかもしれない、時間を無駄にしている暇はないのだということに気づき始めています。国際間での取引がより迅速に行われるという公約は、非常に魅力的です。が、私の意見としては、SWIFTが透明性を保ちつつ、最も巨大な情報共有プラットーフォームであるブロックチェーンのような立ち振る舞いを銀行が演じたとしても、その信頼性も同じように保てるのかといえばそう簡単ではないと思うのです”

 

SWIFTはまだ如何にしてそのシステムに近代的な金融テクノロジーを実装していくのかについては、公式声明は発表していないが、多くの金融機関や組織がブロックチェーンやビットコインに対して関心を集め始めているという点については、ウィム氏が言及している。