日本の特殊な仮想通貨規制とICO=金融庁後援のフォーラム

 一般社団法人ニューメディアリスク協会主催、金融庁後援の「仮想通貨・ブロックチェーンフォーラム2018」が11日、東京・千代田区で開催された。主に仮想通貨やイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に関するリスクが議論された。取引所コインチェックのハッキング事件が起こり、詐欺的なICOのニュースが飛び交う昨今、規制が重く強化され、業界の発展が阻害されかねない状況にあるが、フォーラムでは、ここ最近ICOの質が高まってきており、優良な案件が増えているとの意見が上がった。また、日本でもICOができるよう制度づくりを要請する声もあった。

ICOの利点と問題

 ICOはスタートアップ企業にとって有利な資金調達手段だ。銀行からの融資が受けづらいなどの制約があるスタートアップが、ICOでは、短期間で、巨額の事業資金を手に入れ、迅速にプロダクト開発に着手できる。また、経営の独立を保てるといった利点がある。

 金融庁登録済み取引所ビットポイントを運営するビットポイントジャパンの小田玄紀代表取締役によると、IPOは資金調達完了までに2〜3年以上かかるのに対し、ICOは3〜6ヶ月ほどで済む。調達額については、クラウドファンディングが数百万〜数千万円ほどなのに対し、ICOは数百億〜数千億円の調達も可能だ。今年3月末に完了し、大型のICOとして注目を集めたチャットアプリのテレグラムは、17億ドル(約1857億円)を集めた。

 一方で、資金調達後に持ち逃げをする詐欺や、悪意はなくても、事業設計が不十分で計画倒れに終わるICOが多いことが問題になっている。ICOによるプロジェクトの大半が、ホワイトペーパー通りにいかないのが現状だ。現在、日本の規制の枠組みにおいては、日本居住者向けにICOのトークンを直接的に販売することはできない。理由は投資家の保護にある。規制整備において、ICOによるイノベーション促進の面とのバランスが求められている。

世界と日本の規制、ICOトークンは証券か仮想通貨か

 エニィ・ペイ(AnyPay)社でICOコンサルティング事業部の責任者を務める山田 悠太郎氏は、世界と日本ではトークンを議論する際の論点が異なると指摘する。多くの国は、トークンの扱いを「有価証券性」で議論している。日本は一部それに加え、「仮想通貨性」で見ているという。

 同氏によると、ICO実施時の問題を議論する時、世界では、ICOトークンが有価証券になりうる性質があるか、これを当局に届けずに行うことが違法になるかが論点となる。一方で日本は、世界で唯一、仮想通貨性に基づく仮想通貨法があり、これがICOを考える時の軸となる。

 規制の厳しさに加え、この独特の仮想通貨性というものにより、海外ICOは日本市場参入のハードルを高く感じているという。

 アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナーの河合健弁護士によると、仮想通貨の定義や仮想通貨交換業というものがあるのは、国レベルでは日本のみだ(米ニューヨーク州には仮想通貨交換業免許にあたるビットライセンスがある)。世界的な認識としては、仮想通貨は金融商品の一つに近く、既存の有価証券のルールに頼るのが一般的となっている。有価証券にあたるものを、その枠組みを無視してICOを行なうのはよくないとの考えから、現行法の枠組みで考えようとしている。

 同弁護士によると、既存の有価証券法で考える利点は、長年の知見の蓄積があること、そのルールの中で動けることだ。仮想通貨という新しいものに対し、法制度を一から設計するのは容易ではないと主張した。

パネルディスカッションでは、ICOについて活発な意見交換がなされた。左は金融庁の水口純監督局審議官

詐欺ICOの撲滅へ

 日本には、仮想通貨の独特な法的枠組みがあり、さらに仮想通貨を取り巻く規制は厳しくなってきている。ICOを含め業界のイノベーションを止めないためには、どのような策が考えられるのか。

 河合弁護士は、一つのトークンを全面禁止しても海外で購入できるため、通貨は流通し続けると考える。必要なのは、ICOトークンの発行体が、情報を開示すること、トークンの安全性に一定のスタンダードを設けるといった規制の枠組みを与えることだと話す。海外では、トークンのベストプラクティスやスタンダーダイゼーションがいくつか出てきているとし、海外の動きを参考にしながら、投資家保護とビジネスを促進する枠組みを設定するべきと提言した。

 技術的に不正なICOを排除する仕組みもある。DMM.comラボ・スマートコントラクト事業部テックリードの篠原航氏は、イーサリアムのスマートコントラクト制御による不正ICO防止策を2つ紹介した。1つ目は、ICOフレームワーク「RICO」だ。ICO実施者がトークンの公開買い付けを行うことで、責任をもってプロジェクトを開始させる状況を作り上げるほか、段階的にトークンを生成し、資金調達を一度に行わせないことで、ベンチャーキャピタルの投資ラウンドのように、プロジェクト側が長期的なモチベーションを保てる環境にするなどの特徴がある。

 2つ目は、イーサの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が開発した「DAICO」だ。実装実績はまだないという。ICOで調達した資金の管理は、トークン発行者に一任されており、中央集権的な状況となっている。DAICOでは、トークン購入者に投票権を持たせることで、資金を多数決で管理する。プロジェクトの進行具合を確認しながら、事業者が引き出せる事業資金の上限を上げても良いかなどを票で決定する。

 規制整備と、このようなブロックチェーン技術の組み合わせで、ICOの健全化が加速するのが望まれる。ビットポイントの小田代表取締役は「ここ4ヶ月くらい良いICOが増えてきている」と話す。エニィ・ペイの山田氏もこれに同意した。同氏によると、ICOは市場規模よりも、実は件数が伸びており、ICO実施企業間の競争が発生している。そのため、より良いホワイトペーパーを出そうとする意識が芽生えているという。事業設計や情報開示、経営陣の覚悟を含め、質の高いICOが増えている印象があると、前向きな認識を述べた。

(編集部より:「詐欺ICOの撲滅へ」の3パラグラフ目の「ベルギービール専門店のサンタルヌー」の事例については事実関係に誤りがあり、当該記述を削除しました)

参考記事:「DAICOってなに?ICOの新しい仕組みを徹底解説!

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