ブレグジットで英国のフィンテックはどうなる?専門家の見方は分かれる

2016年、ブレグジットをめぐる国民投票があった。それ以降、英国人の生活のすべての面に影響を及ぼしてきたブレグジット。10月31日の期限までに、合意がないままEUを離脱する「ハードブレグジット」も現実味を帯び出してきており、その際、ビットコインは急騰するという見方も出ている

フィンテック業界にはどのような影響を与えるのだろうか?我々は数名の専門家から回答を得た。ただ、多くの専門家はそのような政治的に敏感なトピックにコメントすることを拒否した。

ブレグジットでも英国の地位は揺るがず

 

Jane Thomason, CEO of Fintech Worldwide, industry associate of the UCL Centre for Blockchain Technologies 

「英国が世界の金融首都であるように、ロンドンは欧州のフィンテック首都だ。世界では米国と中国にのみ遅れをとっている。英国の強さには次の3つの要素がある。英国の金融サービス、英国の消費者の性質、英国の規制環境だ。」

「投資家は2018年、他のどこの欧州諸国より英国のフィンテック業界に投資した。フィンテックはロンドンで繁栄している。金融セクターと技術セクターが隣り合わせになっているからだ。シリコンバレーやルート128、ウォール街にはない特徴だ。地元の金融とハイテクで飛び抜けた才能を持つものたちにとって交流の場となっている」

「また、シード・エンタープライズ投資スキームのように魅力的な投資スキームもある。スタートアップへの初期投資に対して10万ポンドの限度額で50%の減税措置がある」

「多様なタレント、外国からの投資を支持する政府のサポート体制、フィンテックの新参者と既存の機関の間でバランスを取る規制機関。英国は、グローバルなフィンテックリーダーだ。たとえブレグジットが起きようと、英国は世界のフィンテックリーダーであり続ける」

— ジェイン・トマソン、フィンテック・ワールドワイドのCEO, UCLのブロックチェーン技術センター所属

 

Sarah Hall, senior fellow at The UK in a Changing Europe, professor of economic geography in the Faculty of Social Sciences, University of Nottingham

「ブレグジットの後、英国のフィンテックビジネスがどこに向かうのか正確に予測することは難しい。すべての金融サービスセクターのように、どのようなタイプのブレグジットをするかで変わってくる。しかし、フィンテックへの影響は特に計りづらい。複数の政策が関わってくるからだ」

「例えば、英国は規制枠組みを通してフィンテックセクターの後押しをしてきた。ブレグジット後、もし英国がEUの規制と足並みをそろえなくて良くなれば、技術革新の流れは加速するだろう」

「一方、ロンドンのフィンテック成功に欠かせない国際的な「ハイテクタレント」を引き付けるのは、ブレグジット後に困難になるだろう。ブレグジット後に導入される移民規制次第だろう」

「もし英国が機械学習やAI、ブロックチェーンなどで世界的な人材にアクセスできなくなれば、フィンテックセクターは衰えるかもしれない。英国で使われる5分の1のスキルがEUから来ている。国内でスキルのパイプラインを構築するに時間がかかる。一部の企業はそれを待たずにEUに脱出するかもしれない」

—サラ・ホール、ノッティンガム大学、社会科学部のシニア・フェロー 

Chris Stafford, doctoral researcher in the School of Politics and International Relations, University of Nottingham

「英国は、合意なしでEUを離脱するだろう。不透明感が高まり経済に対する脅威が高まることから、多くの企業にとって英国でビジネスをやる魅力はなくなるだろう。合意なしでEUを離脱することで、欧州への入り口としての英国の立ち位置も脅かされるだろう。パリなどの都市がロンドンの機能を奪っていく」

「英国にとっての金融サービスの重要性、フィンテックのスタートアップや保持を推進するために、英国の新たな政府は全ての手段を取りたくなるだろう。これはブレグジット後の経済にとって重要だ。また、新政府と保守党の生き残りにとっても大事になる」

— クリス・スタフォード、ノッティンガム大学、政治・国際関係学部の研究者

Nick Botton, consultant at Landmark Public Affairs

「もし合意なしのブレグジットであれば、英国のフィンテック市場にとって大打撃だ。1つには英国の企業がEUの金融市場にアクセスできなくなる可能性がある。EUが金融ルールで英国を同等とみなさなくなる可能性があるからだ。たとえこの事態にすぐにならなくとも、多くの投資家は怯えることになる。」

「さらに合意なしのブレグジットの結果、ポンドが急落すれば、多くの金融セクターが単純に英国を去るだろう」

「人材獲得が困難になることに加えて、英国のフィンテックスタートアップへ投資も減ることが見込まれることから、英国のフィンテックスタートアップのハブとしての地位は脅かされるだろう。

「英国のフィンテック業界にとって最善のシナリオは、ブレグジットが「撤退合意(Withdrawal Agreement)」の下で行われることだ。英国金融業界にとって現状維持となるだろう」

— ニック・ボットン、ランドマーク・パブリック・アフェアーズのコンサルタント

Antoine Baschiera, co-founder and CEO of Early Metrics

「ブレグジットの混乱にも関わらず、英国のフィンテック業界はこれまでになく好調だ。国際的なタレントへのアクセス、金融企業の存在、海外ファンドとのコネが大きな要因となっている。もしブレグジットによってこれらの1つに悪影響が出れば、英国はフィンテック分野の牽引者としての地位を失うことになる。私は、ハードブレグジットが英国のフィンテック業界にとってネガティブであると考えている」

「もしブレグジットによってタレントのプールが減れば、フィンテック業界の発展が後退し投資家にとって魅力が減ることになる。さらにもしブレグジットによって複数の企業が拠点を移すことになれば(JPモルガンなどはすでに移した)、拠点移動の波が止まらなくなるだろう」

「とは言っても、英国はフィンテック企業にとって規制の枠組みの面から最も居心地のよい国であり続けるだろう。ブレグジットがどうなろうと、EU諸国に対して競争的な優位性を維持することになる。どのくらい長く続くかは疑問だが」

— アントイネ・バスチエラ、アーリー・メトリックスのCEOと共同創業者

引用文は編集されています。

翻訳・編集 コインテレグラフ日本版