FTXの初期メンバーで、FTX元CEOのサム・バンクマン-フリード氏の大学時代のルームメイトであるアダム・イェディディア氏が10月5日、バンクマン-フリード氏の刑事裁判で証言台に立った。イェディディア氏は、免責特権を持つ検察側の証人として証言している。
検察側の証人尋問に対し、イェディディア氏は、アラメダリサーチのトレーダーとしてキャリアをスタートし、2021年1月から2022年11月までFTXのソフトウェア開発者として働いていたと語った。バハマでは、イェディディア氏はリゾート地にある豪華な邸宅を共有する10人の1人だった。彼は元FTXエンジニアリングディレクターのニシャド・シン氏、そしてFTX共同創設者のゲイリー・ワン氏とバンクマン-フリード氏に「非公式に」業務を報告していた。
イェディディア氏は、アラメダリサーチがFTXで取引を行った際、利益の最終受益者はバンクマン-フリード氏とワン氏だと理解していたと語った。また、彼はFTXからの顧客の入出金を自動化するコードの作成に関与していたと述べた。バンクマン-フリード氏もまたこのプロジェクトに「深く関与」していた。
イェディディア氏は当初、顧客が入金した資金はFTXの銀行口座に行くと思っていたが、FTXが銀行口座の開設で問題を抱えており、資金はアラメダリサーチが管理するノース・ディメンションの口座に入れられていたという事実を知った。イェディディア氏は、顧客はノース・ディメンションの口座に預金を送るよう指示され、その口座がアラメダによって管理されていることを知らなかったと述べた。
「2021年の後半に」、FTXは銀行口座を開設することに成功し、顧客は「FTXデジタルマーケット」に資金を送る選択肢を持つようになったとイェディディア氏は語った。また、彼は、その後も一部の顧客の資金がアラメダリサーチが管理する口座に入金され続けていたことを認識していたとも述べた。
これらの資金はまた、「Fiat at FTX.com」と呼ばれるFTX内部データベースでも追跡されていた。顧客の資金の合計は、「Fiat at FTX.com」の負債額と等しくなければならないとイェディディア氏は説明した。
イェディディア氏は、自身が開発に協力した自動化コードにバグがあることを2021年末に知った。このバグのせいで、「Fiat at FTX.com」に記録された負債が減少する一方で、アラメダリサーチのFTXに対する負債は減少しなかった。
このバグについては、「ゲイリーかニシャド」がイェディディア氏に伝え、彼はバンクマン-フリード氏とその件について話したという。バグは約6か月後にアラメダリサーチの負債を5億ドル増やし、さらに6か月間修正されなかった。イェディディア氏は後に、自身が2022年6月中旬にバグを修正したと明らかにした。
イェディディア氏は、バンクマン-フリード氏がバグを修正するよう指示した後、アラメダリサーチ元CEOのキャロライン・エリソン氏、ワン氏、シン氏との会議で「2つの会社、FTXとアラメダリサーチの全会計」について話し合ったと証言した。
イェディディア氏がバグを修正した時点で、「Fiat at FTX.com」に記録されたアラメダリサーチの負債は160億ドルとなっていた。修正後、アラメダリサーチの負債は80億ドルに減少した。この数字は他の社内の人々にも見える状態だった。
イェディディア氏は、巨額の負債についてバンクマン-フリード氏に懸念を示したが、バンクマン-フリード氏は彼に安心感を与え、「昨年は無敵だった」と述べ、6か月から3年以内に再び「無敵」になると語った。イェディディア氏は、「無敵」が健全な財政状態を意味すると解釈した。
イェディディア氏は証言の中で、豪邸で一緒に住んでいた人々が通信にメッセージングアプリ「シグナル」を使用していたと述べた。彼はシグナルを使用して、顧客の入出金の自動化バグ修正の文書をバンクマン-フリード氏に送った。このアプリは、一定時間が経過するとメッセージを自動的に削除する設定になっていたとイェディディア氏は語った。
イェディディア氏によれば、バンクマン-フリード氏がメッセージの保存は「全てが不利益になる」と説明したという。「規制当局がメッセージの中で好ましくない何かを見つけた場合、それは会社にとって良くないことになる」とバンクマン-フリード氏は言っていたという。「彼はまさにその言葉を使ったわけではないが、それが彼が言ったことの本質だった」とイェディディア氏は説明した。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン