フィンテックとブロックチェーンは同じものなのか―詳細を分析

フィンテック・イノベーションが話題の中心に上る場合、まず最初に取り上げられるのがブロックチェーン技術だ。世界経済フォーラムでさえ、2016年の報告書でブロックチェーン技術が世界の金融機関の在り方を根本的に変えるだろうと記述していることから考えれば、フィンテックとブロックチェーン技術を同じ物として語る傾向は、完全に間違っているとは言えないかもしれない。

しかしながら、ブロックチェーン技術が金融サービス業界を一新しつつあるとはいえ、フィンテックの概念がブロックチェーンに持ち込まれ始めたと捉えるのが正しい解釈だろう。ご存知の通り、他にも人工知能なども金融サービスを変える可能性がある技術の一つだ。人工知能は、数多くの既存の金融サービスを破壊する可能性のあるイノベーションに利用できる技術として着目されつつある。

 

人工知能

 

端的に述べれば、人工知能とは、多くの場合―普段人間が実行しているタスクを代わりにより効率的に遂行するためのコンピューターのシステム開発に関係するものを指す。

AI

 

金融機関は、今後何十年にも渡ってビジネスの在り方を向上させることを目標にサービスへの人工知能組み込みを行っている。現在では主流となっているが、最初の現金自動預け払い機、所謂ATMが登場したのは1960年代のことだった。その時までは現金の引き出しは完全に人間の手で行われていた。筆者がこれを例に取り上げたのは、金融業界において人工知能は新しい概念ではないということを強調するためだ。数十年に渡り既に人工知能は利用されているのだ。

また―たった数十年でATMが発展してきたように、金融業界を破壊するのは人工知能の発展によるものであるということも指摘しておきたい。そんなわけで、今回は人工知能が現在破壊しつつある金融サービス業界の分野について紹介したいと思う。

ディープラーニング。ディープラーニングは人工知能を部分的に結集したものだ。その概念は極めて複雑なものだが、単純にコンピューターシステムがデータの集合体にアクセスし、徐々にパターンを学習、そして最終的にその学んだものを利用し、実行するかしないか、提示された状況に応じて迅速な答えを提供する、そういった類のものであると考えればわかりやすいだろう。

最近では、リアルタイムでトランザクション分析を行い、より強力なポートフォリオ管理を行うためにディープラーニングが利用されつつある。チップメーカーであるNVIDIAもまた、リスクマネジメントや不正行為の検出などを、そうしたデータ収集の構築と大量のデータ分析によって行うために金融機関がディープラーニングに投資していると発言している。

ヘッジファンドもまた、トレード方法を学習させ、いつの日か人間の代わりにより効率的にトレードが行えるよう、ディープラーニングへ投資を行っている。また、保険業界でもカスタマーエクスペリエンスから契約査定、請求処理などの多岐に渡るユースケースが期待されている。

読者が金融サービス業界を破壊する技術と聞いて想像する先には、ディープラーニングの先輩であるマシンラーニングが必ず存在している。保険業界や銀行業界で採用されていることが多いが、一般投資家のポートフォリオ管理を助けるロボ・アドバイザーのビルド用に採用されるなど、資産管理業界などの消費者向けアプリケーションとして最も適している。ウェルス・マネジメント系スタートアップであるBettermentやWealthfrontなどの企業は一部そうしたロボ・アドバイザーを利用している。

 

アプリケーションプログラミングインタフェース

 

アプリケーションプログラミングインタフェース、通称APIとは、ソフトウェアアプリケーションのビルド用の一連のルーチンとプロトコル群のことを指し、ソフトウェアコンポーネントの相互作用を決定するものである。

金融サービスの提供をより良い形で提供するAPIを利用することは業界内でも議論されている。2016年のApigeeフィンテックAPIサミットでは、金融業界を破壊するAPIの利用について話し合いが行われた。

 

API

 

APIを利用することで金融機関は製品の設計から提供までの時間を高速化することが出来る。

金融サービス業界および、デジタル戦略に精通したフォレストのアナリスト、ピーター・ワンマチャー氏は、成長を続ける「モバイル的マインドセット」が金融機関に刺激を与え、所謂「モバイル・モーメント」を特定するための戦略を向上すると語る。

モバイル・モーメントとは、携帯電話の利用者が端末を取り出して何らかの行動を行うタイミングのことを指す用語だ。全ての情報を収集し、完全にモバイル・モーメントを特定できる金融機関が1つも存在しないことを考慮した上で、ワンマチャー氏はAPIがその鍵になると予測している。

また、APIは、重要な企業秘密を明かすこと無く他の機関とデータを共有する機会を提供することが可能だ。金融スタートアップ、SoFiがQuovoの資産管理用APIを採用している一例は、運用システムの共有や統合を必ずしも行うこと無く、APIがデータの単一化を図れる良い一例だ。Quovoの認証APIを利用することで、SoFiは全ての顧客情報を口座から参照し、より良いサービス提供を実現している。

 

仮想化された個人情報

 

金融業界のデジタル化に際して大きな問題となる障壁の1つが、個人情報の問題だ。主流の金融システムは、顧客やユーザーの個人情報を取得することなしにはほとんど何も出来ず、これがフィンテック業界のイノベーターたちにとって障害となっている。彼らの多くは完全なデジタル商品の提供を目指している場合が多いのだが、個人情報に関する課題は、例えば、運転免許証に写真が必要なように、イノベーターたちに対して物理的なチャネルを強要することで仮想的フローを破壊してしまっている。本質的には、純粋にデジタル製品を持ちたいのであれば、仮想的に個人情報を確立するためのシンプル且つ信頼性の高い手段が必要である。ブロックチェーン技術は、既にそうした仮想世界における個人情報の問題を解決するポテンシャルを持っているため適しているといえる。

 

secureidnews

 

目下、ソーシャルメディアはデジタル・アイデンティを確立する上で役に立つものだが、専門家の多くはソーシャルメディアが誰にでも扱えるものとは考えていないようだ。数秒の動画を撮り、アルゴリズムを利用し提供されたユーザーの写真と比較する動画ベースの個人情報管理技術は過去には存在していた。2016年に行われた世界経済フォーラムの報告書によれば、フィンテックがその可能性を最大限に活用するためには、より多くのデジタル・アイデンティのためのソリューションが必要であるとされている。

サムスン電子は、静脈をセンサーで感知し、静脈の構造を読み取ることで決済認証を行うスマートウォッチの特許を取得し、デジタル・アイデンティの分野では一歩リードしている。また、同センサーは、静脈のように個人によって異なる脈拍を検知することも可能だ。

 

結び

 

金融の未来にとってブロックチェーン技術がどれだけ重要であろうと、我々は常に現実的である必要がある―ブロックチェーン技術だけでは金融サービス業界が瀕している全ての課題を解決する事は出来ないのだ。より優れた結果をもたらすためには、様々な技術革新による化学反応が必要とされるだろう。ブロックチェーンはフィンテックの一部に過ぎず、フィンテックと同義ではないのだ。

 

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