最大のビットコイン取引所の一つであるBitstampは、金(ゴールド)の払い戻しオプションをEUの消費者向けに展開する。金の価格は米国ドルのみで建値を出すことが可能で、米ドルで利用可能な口座の残高が必要だ。スロベニアの貴金属ディーラーであるMoro & Kunstは、スイスの有名ブランドArgor Herauesや、オーストリアのMünze Österreichプロデュースの物理的に金を配達するサービスを提供している。オーダーしてから2~5営業日以内に保険付きでオーダーしたユーザーの元に出荷される。

 

金の払い戻しオプションは、ビットコイン業界においてはあまり画期的でも革新的なわけでもないが、大きな取引所の顧客が比較的安全にファンドを取引所から移動させる選択肢があるというのはいいことだろう。「数世紀の間、金はその揺るぎない価値から、時代を超越した非常に貴重な資本管理のソースとして提供されてきましたし、金は常にインフレや通貨危機などに対して有効なリスクヘッジであるとして利用されてきました」と、Bitstampは声明文の中でハードアセットとしてのその重要性を認めている。

 

取引所は、法定通貨が陥る危機的状況を想定しているのだろうか?

 

「私たちは法定通貨の引き出しに関してはネガティブな状況を考えていません。製品がローンチされる際は、よく実際の金に近いデジタルな金だ、などと言われているビットコインがもたらすであろう刺激的な可能性にのみ焦点を当てています」と、BitstampのCOOであるMiha Grdcar氏はコインテレグラフに語った。

 

ビットコインからゴールドへの換金

似たようなサービスがドイツのビットコイン取引所、Bitcoin.deによって、かなり長い間Bitcoincommoditiesと共に提供されていて、Bitcoincommoditiesの創設者であるDennis Daiber氏によると、とても歓迎されているとのことだ。彼は他の取引所やウェブサイトが顧客のビットコインを管理し独自の”金ショップ”が開けるように、同サイト内でAPIを提供している。

 

金ショップを開く以外にも実際にビットコイン/金間の取引を提供するとなるとまたレベルの違う話になってくる。Vaultoroはここ一年間そういったサービスを提供してきている。

 

「私たちは、ビットコインと金間でのやり取りを記録した真のマーケットオーダーブックとAPIを提供している未だにオンリーワンな存在です。既に270万米国ドルもの価値のある金とビットコインのトレードを受け付けています」と、CEOのJoshua Scigala氏はコインテレグラフに自慢げに語っている。彼は法定通貨を嫌ってビットコインにのめりこんでいることを認めていて、ビットコインが時流に乗り、リアルアセット・トゥー・アセットなソリューションを提供しようという私たちと同じ土俵に上がろうとしていることにとても好感を抱いている、と語った。

Bitstampにビットコイン/金による取引について伺ったのだが、その答えはそつのないものだった。

 「金の引き出しオプションを提供するということは、ビットコインと金がより緊密な関係になった際に提供されるであろう可能性の一つです。金をビットコインに換金するためのオプションを導入する可能性を除外したわけではありません。もちろん、そういったプロダクトを提供する際には、様々な要因が優先事項として考えられなければなりません」

 

非常に高価な価格設定

「Bitstampがオファーしている価格をチェックしたことはありませんが、ディーラーのサイト上に掲示されている価格には、彼らの競争心はあまり表れていません」と、D.Daiber氏は語る。彼は金を引き出せるオプションが銀行からの規制を回避できる方法だとして、保険料を支払うことには意味があると考えているようだ。

 

「例えば、Bitstampのアカウントから2万ドル引き出そうとしたとすると、銀行からマークされてしまいます。しかしこれが金へと交換して引き出すのであれば、これを回避することが可能ですので、ローカルに金を売りマージンを取られてしまうことと比べれば、Bitstampに保険料を支払うことに価値はあると思います」と語り、Bitstampの金価格は非常に高い設定だが、”いずれある程度のボリュームをもって安くなるかもしれない”とも語っている。

 

より簡単で快適に法定通貨を利用せずにビットコインから金へと換える手段はないのだろうか?確かに多くの部分で理にかなっているのかもしれないが、ハードルは高い。

「そのようなシステムを構築するためには、物理ストレージ(わずかな分量であっても)や全体のプロセスの公証、取引によって金を所有しているという証拠の提出が必要になってくるでしょう。そういったことに取り組んでいる企業はほんの一握りですし、その大半が過去に取り組んでいて現在破産してしまっています」

 

D.Daiber氏はあまり普及していないのと、セキュリティコストが非常に高くかかってしまうこと、特に物理的に受け取りたい場合の配達料が高く、それが貴金属取引のプロセスの中でも最もコストのかかる部分であることから、あまり魅力的な市場だとは考えていないようだ。

 

「市場価格における対ビットコインでのグラム単位での分量のわずかな取引をしたい、と考える企業が、満足するような配達サービスを提供するとなると、コストの面で頭を悩まされてしまうことでしょう」

 

しかしScigala氏は、楽観的に考えていて、市場を教育していくためのコストが広がり、皆が用心するようになるため、市場競争は素晴らしいことだと述べている。

 

「またやってくるかもしれないグローバルな、またはヨーロッパの経済危機からユーザーのアセットを守る手助けがさらにできれば、より良い状態に向かっていくでしょう。私たちは未だ最速かつ最安の方法で、ユーザーの氏名をきちんと明記した上で大切な財産として、物理的にユーザーの地金を守っています」