ユーロポール(欧州刑事警察機構)が発表したサイバー犯罪に関する新たな報告書によると、違法行為に最もよく使用されている仮想通貨は今もビットコイン(BTC)だが、今後Zcash(ZEC)やモネロ(XMR)等の匿名性を重視したアルトコインの人気が高まることが予想されるという報告書を発表した。

18日に発表した「インターネット組織犯罪脅威評価」(IOCTA)の中でユーロポールは、ビットコインのマーケットシェアは「17年初頭に35パーセントまで落ち込んだ」ものの、サイバー犯罪の捜査時に欧州連合全域でいまだに最も「頻繁に遭遇する」仮想通貨だと指摘。ただ今後は「ステルスアドレス」という保護機能を提供する匿名性を重視したアルトコインが勢いを増し、「現在の[仮想通貨の]ミキシングサービス(複数の取引データを混ぜ合わせることで、元々の所有者の判別を不能にする)やタンブラー(個人データを収集しない仮想通貨取引)は廃れる」だろうと予想している。

例えば、イスラム過激派のネットワークでは、イスラム国(IS)関連のウェブサイトキャンペーンを支持する多くの人がZcashを使ってまとまった寄付を行ったことをユーロポールは発見しという。ただテロリスト集団が仮想通貨を使用するのは「低水準の取引」に限られており、資金の流れの中で大きな割合を占めているわけではないという。

この他報告書は、クリプトジャッキング(他人のパソコンを乗っ取り、処理能力を使って仮想通貨を手に入れること)やフィッシング詐欺、仮想通貨取引所に対する攻撃の増加等、仮想通貨関連の様々なサイバー犯罪を説明しており、犯罪者は仮想通貨取引所を、銀行等の伝統的金融機関よりも「狙いやすいターゲット」とみなしている。また、取引所のみならず「マイニングサービスやウォレットホルダーもハッキングや個人データの盗難被害にあう恐れがある」と指摘している。

仮想通貨は、数年前から犯罪者に対して資金洗浄に好都合な分散型インフラストラクチャーと匿名取引を提供してきたが、仮想通貨業界の大手企業が規制下に置かれる中、近い将来、分散型取引所が資金洗浄により有利な経路となる可能性があると、報告書は指摘している。