ETCラボ(ETC Labs)は、イーサリアムクラシック(ETC)ブロックチェーンに対する複数にわたる51%攻撃を受け、ハッシュパワーレンタルビジネスに規制を導入すべきだと主張している。ETCラボは、ETCへの51%攻撃の少なくと2回は、ナイスハッシュ(NiceHash)を通じてハッシュパワーをレンタルすることによって行われた事実について指摘している。

ETCへの51%攻撃を巡って、ナイスハッシュは8月に声明を発表しており、51%攻撃に使われた可能性について、ETCラボからの訴えに基づき、内部調査を開始したと述べている。

ETCラボのテリー・カルバーCEOは、51%攻撃の調査を依頼したサイファートレース(CipherTrace)によって提供された情報を、コインテレグラフと共有した。この情報によれば、攻撃者は最初の攻撃から得た収益を利用して、2回目の攻撃に必要なハッシュパワーをレンタルした。この2回目の攻撃では、仮想通貨(暗号資産)取引所OKExで560万ドルの損害が発生し、同社はユーザーに払い戻しをしなければならなかった。

ハッシュパワーブローカーを使用してブルーフ・オブ・ワーク(PoW)ブロックチェーンへの攻撃を行うという現象は新しいものではない。たとえば、最近のブロックチェーンカンファレンス「Unitize」では、このトピックに特化したパネルが開催され、過去に発生したビットコインゴールドへの攻撃について議論が交わされた。

この問題に対するナイスハッシュ側の対応について知るため、同社の最高マーケティング責任者であるアンドレイ・スクラバ氏にインタビューを行った。

スクラバ氏は、ナイスハッシュの仮想通貨取引事業は規制対象であるため、本人確認(KYC)やマネーロンダリング対策(AML)に従っているが、ハッシュパワーレンタルビジネスは規制されてなく、ユーザーは自身の身元を開示する必要がないと説明した。今回のような51%攻撃に伴い、本人確認などの手続きを開始することを検討しているか尋ねたところ、スクラバ氏は次のように回答した。

「これは完全に欧州連合に依存するものだ。彼らがこの点に関して何かを決定するかどうかだ」

スクラバ氏はまた、ナイスハッシュに関する良いアナロジーは、単にデータパケットを配信するインターネットサービスプロバイダー(ISP)であると指摘した。

「ナイスハッシュはデータパケットをマイニングプールに配信でき、これらのデータパケットはハッシュパワーとして説明できるだろう。〔中略〕したがって、本当に分散化した世界を構築したいのであれば、このトラフィックに制限を課すことはできないはずだ」

彼は、ナイスハッシュのようなブローカーがそのような攻撃が発生したときにそれを検出することは非常に難しいとも付け加えている。そもそも、それが起こらないようにすることはさらに困難だ。スクラバ氏は、適切やKYCとAMLを導入することでリスクを軽減できるとは認めている。しかし、彼の意見では、それでは問題は解決しないという。

「常に偽のKYCが利用できてしまう。確かにそれは役に立つだろうが、それは止まることはないだろう。まったく止めることはできないだろう」

現在、ETCのハッシュレートは1.4Th/s(テラハッシュ/秒)だ。一方、ナイスハッシュのマーケットプレイスでは、約10Th/sをレンタルすることが可能だ。これは、ETCネットワークを保護するのに必要なハッシュパワーの7倍にものぼる。

 

出典: BitcoinCarts. ETCのハッシュレート

スクラバ氏は、ナイスハッシュがプラットフォームでETCラボにサービスを紹介しているとも語っている。以前は関係がなかったが、ETCラボは現在、ディフェンシブ(防衛的)・マイニングのためにサービスを使用する予定だという。

「私たちが彼らに私たちのサービスを紹介したのは、彼らは以前はナイスハッシュがどのように機能するかについて知らなかったからだ。そして、彼らはまた、これをディフェンシブ・マイニングに使用すると公に述べている」

ディフェンシブ・マイニングの背後にあるアイデアは、ナイスハッシュなどのブローカーを使用してネットワークのハッシュレートを増価させ、51%攻撃のコストを高くすることだ。

規制により将来の攻撃可能性が減少する可能性はあるが、これはより長期的な計画となるだろう。政策立案者や規制当局が適切なフレームワークを考案するのに時間がかかるだけでなく、ハッシュパワーブローカーの場合、効果的な規制を行うならば、グローバルに対応しなければならない。たとえば、ナイスハッシュはスロベニアに拠点を置いている。EUもしくはスロベニアが、ビジネスに影響を与える規制を制定した場合、企業が規制されていない国に容易に移転することができる。分散化されたビジネスの性質により、物理的な場所は無関係だ。

ETCコミュニティによって議論されている他のソリューションには、チェックポイントシステム(将来の攻撃を手動で防止する)、別のハッシュアルゴリズムに切り替える、分散型基金の設立などが提案されている

一部では、最新の51%攻撃がイーサリアム(ETH)マイナーによって行われたと考えている者もいる。ETHとETCは同じDaggerHashimotoのハッシュアルゴリズムを使用しており、ETHはかなり高いハッシュレートを持っているため、ETHマイナーがハッシュレートの低いネットワークを攻撃するのは容易である。

ETC開発者による会議が9月4日に予定されている。この会議ではIOHKによって提案されたチェックポイントシステムについて議論する予定だ。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン