著者 Hisashi Oki dYdX Foundation Japan Lead
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、キー局のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。その後日本に帰国し、大手仮想通貨メディアの編集長を務めた。2020年12月に米国の大手仮想通貨取引所の日本法人の広報責任者に就任。2022年6月より現職。
2023年7月、ウィーンでブロックチェーン・インフラストラクチャー・フォーラム(BIF)が開催された。世界中からトップクラスのバリデーターやインフラ提供会社、DeFiやDEXのコアチーム、規制の専門家などが集結し、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)チェーンにおけるバリデーターの役割について議論し、先週末、そのレポートを公開した。ブロックチェーンのエコシステムにおけるバリデーターの役割が大きいことを認識し、「Governator(ガバネーター)」の導入などガバナンスの部分で役割を再定義する流れを支持した。
なぜバリデーターが大きく注目され始めているのだろうか?PoSチェーンにおいてバリデーターの役割として広く認知されているのは、コンセンサスに基づくブロックの生成とネットワークのアップグレードという役割だろう。実は上記に加えて一部のチェーンにおいてはバリデーターにはガバナンスへの参加という大きな役割が課せられている。とりわけCosmosのチェーンにおいてバリデーターは、上記の「コンセンサス関連の投票」と「ガバナンス関連の投票」の2つをこなしてしまっているケースが少なくない。ただ、問題は全てのバリデーターが上記2つを実施することが望ましいかどうかだ。
バリデーターは、第一義的にはインフラの専門家だ。そのため、ネットワークのアップデートなどコンセンサス関連の投票を任せるのは筋が通る。問題は、ガバナンス関連の投票だ。例えば、Grant(助成金)に予算をいくら割り当ててどの領域を重点分野にするかに関する投票があった場合、バリデーターが適任だろうか?答えはYesでもありNoでもある。現状では両方できるバリデーターは両方やり、できないバリデーターはどちらか一方をやる、もしくは両方やらないというように、バリデーターによってスタンスがバラバラだ。
- ユーザーにステーキングサービスを提供する取引所・・・法的な責任に対する懸念等からガバナンス投票に参加しないケースがほとんど。
- 企業やリキッドステーキング提供者の代わりステーキングを行うバリデーター・・・的な責任に対する懸念等からガバナンス投票に参加しないケースがほとんど。
- 50以上のチェーンで運営する大手バリデーター・・・管理するチェーンが多いことが目的であるため一つ一つのチェーンのガバナンス参加には消極的な傾向。
- アクティビスト・バリデーター・・・どのチェーンのバリデーターになるか熟慮しガバナンス参加にも積極的なバリデーター。チェーンの長期的な安定やポテンシャルについて興味があるトークン保有者がトークン委任をするケースが多い。
上記のように少なくとも4つのタイプのバリデーターがあり、3つがガバナンス投票参加に消極的だ。この現状を打破しようと生まれたコンセプトが「Governator(ガバネーター)」だ。