米国土安全保障省(DHS) 科学技術局(S&T)は11月14日、ブロックチェーンセキュリティ技術の開発のため、バージニア州拠点の「デジタル・バザール」(Digital Bazaar)に19万9984ドル(約2175万円)を授与したと発表した2018年12月に募集した、ブロックチェーン基盤の電子文書偽造・模造防止案において、概念実証デモ(フェーズ1)を実現した企業への資金提供としている。

紙ベースのシステムを置き換える

DHSは、出入国管理や税関業務、サイバーセキュリティや災害対策など米国の安全保障を担う行政機関。米税関・国境警備局(CBP)、運輸保安庁(TSA)、市民権・移民局(USCIS)を通じ、DHSは、パスポート、市民権、移民、雇用に関する資格証明書の審査・発行・認可などを行っている。

しかし現在、これら手続きの多くは紙ベースのままで、システム間のデータのやり取りも行えず、紛失・破損・偽造などの影響を受けやすいという。

このためDHSは、セキュリティ強化や相互運用性の向上、偽造防止の実現を目的に、ブロックチェーン技術・分散型台帳技術(DLT)基盤のデジタル版証明書の発行を検討しているそうだ。

セキュリティ向上を狙ったブロックチェーン基盤システム構築

デジタル・バザールは、組織・企業向けに、(従業員の)本人管理・識別・認証、所属部署や役職などの属性情報、機密データなどに対するアクセス権限認可・制御、業務履歴記録(証跡管理)などを統合したID・アカウント管理(クレデンシャル管理)技術およびシステムを開発している企業。決済・課金システム開発も行っているという。

デジタル・バザールがDHSより資金を獲得したプロジェクトは「相互運用可能なエンタープライズIDおよび資格情報のライフサイクル管理」とされており、先に挙げたようなID・アカウント管理システムに、入省・退職・他省庁などへの異動など人事管理も含めたもののようだ。

また、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)を考案したティム・バーナーズ・リー氏が率いる、ウェブ関連の標準化規格策定団体W3C(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)に沿った新たなセキュリティ技術の採用に加えて、大企業向けのブロックチェーン基盤システムとして構築し、長期的には市場に投入することを目指しているという。

S&TのSVIP(シリコンバレー・イノベーション・プログラム) テクニカルディレクター、アニル・ジョン氏は次のように述べた。

「複雑な組織に、新たなID・アカウント管理技術を展開するには、従来製品との統合と、ライフサイクル管理機能も必要だ」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン