仮想通貨(暗号資産)交換事業者のディーカレットは6月3日、同社が事務局となり、デジタル通貨の勉強会を立ち上げると発表した。デジタル通貨や決済インフラのメリットや課題を検討し、実現に向けた提言をとりまとめていく。

デジタル通貨勉強会にはみずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行の3メガバンクやインターネットイニシアティブ(IIJ)、セブン銀行、NTTグループやKDDI、東日本旅客鉄道(JR東日本)などが参加している。

現金に代わる決済手段としてのデジタル通貨の可能性を議論し、「デジタル通貨の望ましい姿を検討し、必要に応じてプロジェクトの立ち上げ等推進環境の整備を行う」としている。

勉強会では「デジタル通貨やデジタル決済インフラに対する課題とその解決方法」を検討・議論し、サービスやインフラの標準化の方向性を示すとしている。

またコンサル大手のアクセンチュアやシグマクシスが協力。金融庁や日本銀行と言った公的機関もオブザーバーとして参加する。

勉強会の期間は今年9月末までであり、最終的に勉強会の議論をまとめた報告書を公表する予定だ。

「デジタル社会に適した決済を」

ディーカレットの時田一広社長は、3日のオンライン記者会見で、金融のデジタル化は「インターネット同じくらいのイノベーション」があると指摘し、デジタル決済のメリットや課題について本格的な議論をしていくと述べた。

「リブラをはじめとする民間デジタル通貨や、中国やスウェーデンによる中央銀行デジタル通貨(CBDC)が注目されている。デジタル通貨によるデジタル社会に適した決済が期待されている」

ディーカレットの勉強会を巡っては、日本経済新聞が3日に「Jコインペイの利用者がスイカで支払えるようにするためのプラットフォームなどを検討する」と報じていたが、時田氏は「特定の事業者間の接続を議論するわけではない」と付言している。

民間のイニシアティブで競争力向上

今回のデジタル通貨勉強会の座長には、フューチャー株式会社取締役の山岡浩巳氏が務める。山岡氏は日銀出身で、日銀決済機構局長を務めた経験がある。

山岡氏は、新型コロナウィルスの中で、金融インフラのイノベーションの加速が必要だと指摘。金融のイノベーションで「日本が世界をリードできるようにしたい」と主張している。

その上で、山岡氏は、民間がイニシアティブを主導する重要性に触れ、「民間のイニシアティブを使い、決済インフラ分野で日本の産業の競争力向上につなげたい」と語った。

「新技術を積極的に活用したイノベーションが求められている。新型コロナの経験で、現金を使わずに経済活動を維持することや、リモート環境で経済活動を続けることが重要になっている。疫病に対する社会の頑健性や、経済の活性化にもつながる」

山岡氏は、様々な決済プラットフォームが登場する中で、「現金の牙城を崩す」には相互運用性を高めていくことが解決策になると強調。勉強会の中で「どのような解決策があり得るのかを考えていきたい」と語った。