CryptoPunksとは 元祖NFTアートコレクション

クリプトパンクス(CryptoPunks)は、8ビットコンピューターで描いたようなドット絵タイプの人気デジタルアートコレクションプロジェクトだ。1個あたり24×24ピクセルで描かれたキャラクターが1万個用意されている。イーサリアムブロックチェーン上に保存された元祖NFTアートの一つである。
出所:CryptoPunks HP

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CryptoPunksそれぞれのキャラクターは、アルゴリズムによって自動生成されている。ほとんどがパンクな男女の画像だが、中には類人猿やゾンビ、エイリアンも含まれるユニークなアートコレクションである。すべての画像が、タイプや属性、所有者、販売ステータスを示す独自のプロファイルページを持っているのが特徴だ。

2021年3月11日、2つのCryptoPunks作品が、それぞれ4200ETHで落札された。当時の価格で約750万ドル(8億円相当)である。また5月11日、世界に名だたるオークションハウスのクリスティーズで、9つのCryptoPunks作品が1696万2500ドル(18億5000万円相当)で落札され、その名は一躍有名になった。


CryptoPunksの開発者Larva Labsとは

CryptoPunksプロジェクトは、カナダのソフトウェアエンジニアであるジョン・ワトキンソン氏とマット・ホール氏の2人からなるチームLarva Labsによって、2017年6月に始動した。

ジョン・ワトキンソン氏は、エンジニアでありアーティストでもある。コロンビア大学で電気工学の博士号を取得後、2005年にマット・ホール氏とLarva Labsを設立した。

Larva Labsは元々、iPhoneやAndroid以前の初期のスマートフォンプラットフォーム向けにゲームやアプリを開発していたが、ロンドンのパンクシーン、サイバーパンクムーブメント、フランスの電子音楽デュオであるダフト・パンクに触発され、CryptoPunksプロジェクトに着手した。

Larva Labsは、ブロックチェーンがデジタルデータにもたらす希少性と永続性に注目しており、CryptoPunksの他にも、MeebitsAutoglyphsといったNFTアートプロジェクトを展開している。主な関心事は、ピクセルアート、ジェネレーティブアート、作品を体験したり取引したりするための新しいメカニズムという。

CryptoPunksの仕組み・技術

CryptoPunksはどのように動いているのか、仕組みを見ていく。

CryptoPunksはERC-721トークンではない

イーサリアムブロックチェーン上のNFTアートと聞くと、通常はイーサリアム共通のNFT規格であるERC-721トークンの印象が強いが、実はCryptoPunksはERC-721トークンではない。なぜならば、CryptoPunksはイーサリアムブロックチェーンのNFT規格が作られる以前に発行された作品だからだ。

CryptoPunksは、ERC-721等のNFT規格や現代のクリプトアートムーブメントが誕生するきっかけのプロジェクトであると言われている。

こうした経緯から、CryptoPunksはERC-721ではなく、どのNFT規格にも準拠していない。CryptoPunksは、カスタムコントラクトによって生成されている、ほぼERC-20トークンであるという。ERC-20のコードに修正を加え、トークンに代替不可能性を付与した。ちなみにERC-20規格とは、誰でもイーサリアムブロックチェーン上で独自のトークンが発行できる規格だ。

CryptoPunksは他のERC-20規格のトークンと同様、イーサリアムに対応したウォレットにて管理・保管が可能であり、所有者や所有枚数が確認できる状況ではあるが、カスタム化されているため特定のCryptoPunksを参照するには、他のERC-20トークンとは別途の確認手続きが発生する。

CryptoPunksの画像と属性がオンチェーンに保存された

CryptoPunks単体の画像は24×24ピクセルとかなり小さいため、CryptoPunksの初期においても、理論上はイーサリアムのブロックチェーンに直接保存可能であったが、実際は難しかった。そのため、すべてのCryptoPunksを1枚の画像に合成しハッシュ化(SHA-256)した上でスマートコントラクトに埋め込んだ。

自分が参照しているCryptoPunks画像が、イーサリアムのスマートコントラクトで管理された本物のCryptoPunks画像かどうかを確認するには、自分が参照している画像のSHA-256ハッシュを計算し、スマートコントラクトに格納されているハッシュと比較することで可能となる。

出所:Etherscan(Contract Name:CryptoPunksMarketのContract Source Code) 

1万個のCryptoPunksの中で、自分が保有しているトークンに対応するキャラクターはどれかを確認するには、トークンに記載されたIndexという個別に割り振られた番号と、合成画像におけるキャラクターの並び順を照らし合わせる必要がある。

Larva Labsは2021年8月、友人らの手助けにより巧妙な圧縮技術のアイデアを用いて、すべてのデータをオンチェーン上に格納することに成功したと発表した。今では、画像データのほかにも髪型、眼鏡、ひげ、帽子などのCryptoPunksの属性についてもオンチェーン上に保存されている。

CryptoPunksは、オンチェーン上にすべての情報が保存されたことで、NFTアートとしての長期的な継続性が強化された。また、Etherscanのようなブロックチェーン・エクスプローラーで直接スマートコントラクトにアクセスし、CryptoPunksそれぞれの画像のコードを表示させることも可能になった。これは、イーサリアムのガス代(手数料)を気にすることなく、ユーザーはいつでもCryptoPunksそれぞれの画像や属性を照会できることを意味する。ただし、画像や属性は、メインのCryptoPunksMarketコントラクトではなく、CryptoPunksDataという別のコントラクトに保存されている。

多くのNFTアートは、トークン自体がブロックチェーン上で発行されていても、それに紐づく画像は、分散型ストレージサービスのIPFSなど、ブロックチェーンの外(オフチェーン)で保存されている。トークンのメタデータに画像の保存場所を示すURIなどが記載されているため、NFTの保有者は、そこからアート画像を確認可能だ。しかし、IPFSのデータ保存方法は永続性の観点で言えば問題が残るため、NFTをフルオンチェーンにする意義は大きい。

CryptoPunksを買うには?

CryptoPunksはリリース当初、すべて無料で配布された。イーサリアムウォレットを持っている人なら誰でもトークン取引の手数料のみでもらうことができた。しかし、1万個のCryptoPunksはあっというまに配布が終了した。

現在は、CryptoPunksのスマートコントラクトに組み込まれたマーケットプレイスを介して、CryptoPunksを保有している他のユーザーから購入する必要がある。CryptoPunksのマーケットプレイスでは、他のユーザーから直接購入したり、入札したりすることが可能だ。

マーケットではCryptoPunks画像の背景が、そのCryptoPunksの販売ステータスの状況を表している。ちなみに青い背景は現在売りに出ていないことを示し、入札もない状況を表す。赤い背景は、所有者によって販売されている状況を示す。そして紫の背景は入札があることを示している。

出所:CryptoPunks HP

マーケットでは、このように画像の一覧を見るだけで、そうした販売ステータスがわかるようになっている。気になるCryptoPunksは、画像をクリックすることで属性などを含めたより詳細な情報がわかり、過去の取引状況についてもすべて閲覧できる。

ちなみにCryptoPunksのマーケットプレイスには、ブラウザにMetaMaskをインストールすることで誰でも参加が可能だ。

なお、CryptoPunksはNFT規格に準拠していないことから、NFTでありながら一般的な外部のNFTマーケットプレイスでは、ほとんど取引が行われていない。しかし、351個のCryptoPunksは、wrappedpunks.comを介してラッピングされたERC-721規格のCryptoPunksとして販売されており、ERC-721化されたCryptoPunksは、外部のNFTマーケットプレイスOpenSeaでも取引が可能になっている。

出所:CryptoPunks HP


なぜシンプルなドット絵に高値がつくのか

出所:CryptoPunks HP

CryptoPunksのこれまでの取引の中で、過去最高の価格を記録したのが、CryptoPunksの#3100と#7804だ。どちらも、4200ETHで実際に販売された記録がある。ちなみに、これらはどちらもエイリアンパンクという種類のCryptoPunksだ。

1万個のCryptoPunksのタイプの内訳は、6039個が男性パンク、3840個が女性パンク、ゾンビパンクは88個、類人猿パンクは24個、エイリアンパンクはわずかに9個なのだ。このレアリティがCryptoPunksの価値を決めている。これまでの販売価格上位10のランキングは、エイリアンが2個、類人猿が3個、ゾンビが5個という状況だ。タイプの他にも「ビーニー帽」「シガレット」といった属性がレアリティを決定する要素だ。

こうした画像のレアリティに加えて、CryptoPunksはもう新たに発行されることはないので、コレクション全体のレアリティも価格高騰の要因になっている。しかし、誰もここまでの価格になるとは、予測もできなかったのではないだろうか。

価格自体の根拠はわからないが、仮想通貨の人気が高まる中で、NFTアートが注目されるようになり、投資家の目が仮想通貨への投資・投機のみならず、こうしたNFTアートにも注目するようになったことも、NFTアートにとっては功を奏している。

また、CryptoPunksは元々アバターとして発行されたものではなかったが、NFTの人気が高まり価格が高騰し始めたことから、一部のコレクターが購入したNFTをSNSのプロフィール写真として誇示するようになった経緯がある。

こうしたプロフィールにNFTアートを活用した行為が、瞬く間にSNSによって拡散され、気がつけばプロフィールにNFTアートを採用することがクールであり、一つのステータスとして用いられるようにもなった。

クレジットカード会社のVISAが21年8月にCryptoPunks #7610を約15万ドル(1650万円相当)で購入したことも記憶に新しいところだ。

このように世界的な企業や著名人がCryptoPunksをこぞって購入し、プロフィール写真にCryptoPunksの画像を活用したことで、それが加速度的に拡散されていき、相乗効果によってある種の世界的ブームが巻き起こったようにも見える。しかし、これといった決定的な要因を見つけることは難しいだろう。


CryptoPunksが社会や仮想通貨業界に与えた影響

Larva Labsは2021年9月1日、米国ハリウッド最大のタレント事務所の1つUnited Talent Agency(UTA)とCryptoPunksなどのNFTプロジェクトに関する代理店契約を結んだことを発表した。この契約によりCryptoPunksは、映画、テレビ、ビデオゲーム、その他のライセンス分野に登場することになった。

UTA Digital Assetsの責任者であるレスリー・シルバーマン氏は、「これは、完全に暗号の世界で生まれたIP(知的財産)が、より広範なエンターテイメントの世界に進出する初めての機会です」と語った。CryptoPunksがメジャーになった瞬間だ。

CryptoPunksは、確実にNFTアートの存在を世に知らしめたアート作品の一つだ。ブロックチェーンのユースケースとしてNFTという使い道があり、NFTはアートの世界でコレクタブルかつレアリティといった手段によって新しい価値を生み出すことも実証した。

元々は無料だったCryptoPunksも、今では最低価格が79.5 ETH(約2200万円、2022年1月27日現在)の価値になっている。CryptoPunksは取引開始以来、総売上66万6710ETHを記録している。

CryptoPunksの活発な取引は、イーサリアムの流動性にも大きく貢献していることになる。

先述のCryptoPunksのタレント契約のニュースが示すように、CryptoPunksは今後、さまざまな分野でキャラクターとしても登場するだろう。デジタルの世界を飛び出して、新たに物理的な商品の誕生も期待できる。実際に、物理的にプリントされた絵の展覧会や世の中の広告や看板等にも進出し始めているという。


NFTアートはただのバブルか? CryptoPunksの今後

CryptoPunksに始まった急速なNFTアート人気の高まりは、NFTアート全般に見られた。これは世間のNFTに対する認知度と密接な関係にある。NFTは、これまで仮想通貨・ブロックチェーン業界のごく一部の人々の間だけの関心事だったが、NFTアートの人気高騰により一気に世間一般にまで広まったようである。

2021年後半、NFTアート人気は維持されつつも、純粋にNFTアートが好きなファンにとっては、もはや手の届かないものになってしまったのも事実だ。そうなってくると、NFTアートの流動性や取引機会も鈍化することはやむを得ない。こうした流れの中で作られてきた人気は、そうは続かないだろう。

NFTはバブルであり、ブームは続かずやがてバブルは崩壊するだろうという批判もある。もっともこうした意見の多くは、技術的な背景を理解していないアナリストたちのもので、価値の本質とは別の批判ではあるが、まったく無視はできない。

現在の人気や価格の高騰はバブルだとしても、NFTアートの本質はデジタル資産の価値の流通にあり、そうした市場が形成されたことは明らかな事実である。NFTアートの評価額それ自体に裏付けがないとしても、価値と価値の移転は未来永劫続く技術である。

NFTアートの所有権や真正性の証明、NFTアート制作者と鑑賞者を直接つなげることができた新しいマーケットは、アート業界においても歓迎こそはすれ、否定し、今後一切使わないということは、あり得ない。こうした環境をいかしたアイデアは今後も無数に登場するだろう。

CryptoPunksの価値が今後どのように変化していくかは誰にもわからないが、イーサリアムブロックチェーンがある限り、その存在と価値の移転は永遠に続き、NFTアートの先駆けとして今後も語り続けられるものであることは明確な事実である。

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