欧州最大の仮想通貨取引所ビットスタンプ(Bitstamp)が、韓国有数の富豪・金正宙(Kim Jung-ju)氏が率いる投資ファンドNXMH(本拠・ベルギー・ルクセンブルク)に買収されたことがわかった。ビットスタンプが29日、公式サイトでアナウンスした

ビットスタンプは300万口座を有する業界でも老舗の仮想通貨取引所で、仮想通貨業界の再編を象徴する出来事だ。2016年にルクセンブルク大公国から正式な認可を受けており、EU諸国で正規に仮想通貨を営業することができるようになった初めての欧州「オフィシャル」仮想通貨取引所だ。現在でも米国に加え、ドイツ、スロベニア、スペイン、イタリア、フランス、英国、スイスからのアクセスが多い。

一方、新たなオーナーとなる金氏は韓国で有名なたたき上げの富豪で、数々のオンラインゲームで中国と韓国市場を席捲してきた東証上場のゲーム企業ネクソン(東証3659)の創業者として知られる。同氏は昨年にもトップ3以内の仮想通貨取引所Korbit(コービット)の株式65.19%を取得しており、仮想通貨ビジネスに投資するのは今回が初めてではない。今のところコービットやネクソンとの相乗効果などは想定されていないが、ゲーム+仮想通貨の組み合わせは想像を掻き立てるものがある。また、LINEで有名なネイバー創業者やソフトバンクの孫正義氏とも連絡を取り合えるという人脈をもつ金氏の手腕にも注目が集まる(2014年のインタビュー記事)。

ちなみにビットスタンプが現在扱うのはビットコイン、XRP、イーサリアム、ライトコイン、ビットコインキャッシュだ。対法定通貨取引に加え、仮想通貨間の取引もサポートしている。

ビットスタンプ社のCEOであるNejc Kodrič氏によると、10月25日に同社株式80%の売却が完了。金額などは明かされていない。また、あくまでもビットスタンプとして同CEOの元で運営されていくという。Kodrič氏は引き続き10%の株式を保有する。

さらに、金氏は仮想通貨ファンドとして有名なパンテラキャピタルが保有するビットスタンプ株の一部も買い取ったようだ。同ファンドは2014年に約11億円ほどビットスタンプに投資していた。

(参考「【動画あり】仮想通貨市場の時価総額は1000%上昇する=パンテラキャピタル」)

ビットスタンプは2011年にスロベニアで操業。簡単なPC機材と、1000ユーロの資本でスタートした。

Kodrič氏によると、昨年の中盤頃から買収希望者からの問い合わせが増えていたという。今年に入ってからは取引量が60~70%減っていたが、それでも黒字だったようだ。

ちなみにネクソン韓国によるビットスタンプ買収の噂は今年の4月からあり、市場にとって大きなサプライズというわけではなさそうだ。

(参考「韓国の投資家がビットスタンプ買収へ、取得額は4億ドルか」)

韓国きっての事業家によるビットスタンプの買収と仮想通貨業界再編。0から1を作り出す起業家から経験豊富な事業家へのバトンタッチは今後も進みそうだ。