Nakamoto.comの編集長であるバラジ・スリニバサン氏は、米国最大の仮想通貨取引所コインベースの元CTO(最高技術責任者)だったことで知られている。しかし、同氏がエンジニアや生物学、統計学に明るく、ゲノム学でいくつかの研究論文を出したことはあまり知られていないだろう。

実際、スリニバサン氏は、新型コロナウイルスの脅威について早くから警告を出していた人物の1人だ。1月30日、同氏はツイッターで以下のように警告していた

「ウイルスが蔓延している。もしコロナウイルスが、公衆衛生の専門家が過去数年間警告して来たパンデミックだったらどうする?現在の多くのトレンドを加速させることになるだろう。それは、国境の封鎖、ナショナリズム、社会的孤立、プレッパー、テレワーク、マスク、政府に対する不信などだ

それ以降もスリニバサン氏は、新型コロナウイルスについてたびたびツイッターで発信している。

以下は、スリニバサン氏が見る新型コロナ後の3つの未来図だ。

新型コロナとインフレ

世界各国の政府が景気刺激策のために大規模な財政出動を行い中央銀行は量的緩和策を加速させている。長年恐れられているように、法定通貨の価値が低下して、インフレーションが起こるのだろうか?スリニバサン氏はイエスと捉えている

「我々はすでに、サプライチェーンの遮断、国内の生産中断、マスク価格などの高騰、そして数兆ドルの景気刺激策のコンビに直面している。小切手が来たら、人々は生活必需品に使い始めるだろう。そして、価格が高騰する。『高値での売却』は禁止され、品不足が続き、そしてマーケットの先行きは真っ暗になるかもしれない」

市民ジャーナリストと分散型メディアの台頭

新型コロナウイルスの報道をめぐって米国では伝統的なメディアに対する批判の声が高まっている。スリニバサン氏も批判の急先鋒の1人であり、「今回の災害で1つ希望の光があるとすれば、企業によるメディア運営が自己修正ができる事業ではないことが衆目を集めたことだ」と厳しく指摘した

「メディアや国家からの正式な誤報リスト:インフルエンザの方がもっと深刻、渡航禁止は過剰反応、武漢への訪問者のみにリスクあり、握手を避けるなんて被害妄想、ウイルスは抑制された、検査は受けられる、マスクは役立たない、など。重要なことは、これらのミスを犯した人々が撤回していない点であり(多くの人が何もなかったかのように振舞っている)、今度は『誤報』への検閲強化を求めている点だ。ソーシャルメディアなしでは、米国が行動を移すのはもっと遅かっただろう」

同氏は、新型コロナウイルスに関するメディアの当時のヘッドライン一覧を掲載。例えばAP通信は「新型コロナウイルスはインフルエンザより致命的か?正確にはそうではない」、CNNは「コロナウイルスが拡大する恐怖で人種差別と外人嫌いが広がっている」、ワイヤードは「コロナウイルスに対する戦争を縮小すべきだ」といった見出しで報じていた。

その上でスリニバサン氏は、市民ジャーナリストによって運営される分散型の新たなメディアが必要だと主張。5つの提案をした。

1)歪曲を避けるために自身の情報網を構築する。

2)すべての会社はメディア。

3)競争相手に不用意に情報を与えるな。そしてメディア企業はあなたの競争相手だ。

4)あなたは何かの専門家であり、市民ジャーナリズムを実践する市民として責任がある。

5)メディアは「民主主義の守護神」ではないし「人々の敵」でもない。単なる人だ。すべての市民がジャーナリストだ。

米国と欧州の分裂

米国の州の間にある検問所が活発になっている。ハワイ、アラスカ、ロードアイランド、フロリダすべての訪問者に対して隔離を求めている。スリニバサン氏は、新型コロナ収束後も米国と欧州の分断が止まらないかもしれないとみている。

「一時的な官僚的な措置(国境の管理など)は永遠の措置になりうる。ソビエト連邦と東欧圏の突然の崩壊に似ているかもしれない。1つの米国から50の国に1つのEUから27カ国に分裂?1980年代からUUSRと東欧圏には崩壊の兆しがあり、1989年と1991年には突然崩壊した。ただメンバー国に分裂しただけだ。2010年代から米国とEUには崩壊の兆しが出て来ている。EUは現在、議論の余地はあるが、事実上崩壊状態だ。米国はこれに続くのか?世界の未来とは分散型の西洋と中央集権型の東洋かもしれない。もしウイルスによって無能な国が崩壊したら、ウイルスと戦えない中央集権国家はどんな国家であろうと分散型になる。それぞれの構成地域が離脱して、自身の国境を作るからだ」

過去数週間で人類の歴史が大きく変わろうとしているかもしれない。現在から様々な思考実験をするのも悪くないだろう。