東証二部上場のビート・ホールディングスは9日、同社子会社の新華ホールディングスが仮想通貨メディア「コインパートナー」を運営するコインオタク社の株式を取得し完全子会社化したと発表した。両社がコインテレグラフジャパンに明らかにした。譲渡額は約6億円。コインパートナーはこのほど、「コインオタク」からリブランディングしており、現在の形で運営を続ける。

ビート・ホールディングスの取締役会議長兼CEOを務める松田元氏はコインテレグラフジャパンに対し、コインパートナー向けの独自ウォレットをリリース予定であることを明らかにした。「ウォレットに人間のサブカルチャーの集積体が集まることで、ブロックチェーンを使った新しい経済圏を構築する」と話した。

ビート・ホールディングスはブロックチェーンSNSアプリ「Inou」やビットコインやイーサリアムにも対応したウォレットの開発を手がけている。松田氏は、仮想通貨取引所運営の株式会社LastRootsを保有するオウケイウェイヴの元社長だ。

松田氏は今後、独自ウォレットをリリースした後にダウンロード10万人突破を目指し、さらに年内にウォレットにメッセージング機能を追加したユースケースを始める。

今回の提携にはこうしたウォレット機能とメディア運営のノウハウを組み合わせた相乗効果に狙いがある。

コインオタク創業者の下山明彦氏と木田陽介CEOによると、コインパートナーには3500人ほどのオンラインサロンの会員がいるという。メディア側としてはこうしたサロンに参加する顕在ユーザーとともに、ウォレット機能やビート社がもつサービスと連携することで、興味関心が繋がっている潜在ユーザーをつなげユーザー層を拡大していく。

ブロックチェーンの新経済圏

松田社長とコインパートナーの二人が目指すのはブロックチェーンを使った新たな経済圏だ。今回の提携は「これまでの資本主義を超えていきたい」という意思がある。

「資本主義経済は人からお金を掠め取ろうとするシステムだ。一方のブロックチェーンは『Give』。どうやって与えるかが重要になってくる。」

ブロックチェーンでの事業ではまだ一般にはどのような事業をやっているのかがわかりにくい面がある。松田社長は今回の提携について「既存のお金を超えるにはピクチャーを見せる必要があり、それはメディアの力が必要」と主張。メディアと連携し、ブロックチェーンの経済圏を示していきたいという。

松田氏によると、両者が始めるウォレット事業は「ただの決済機能ではなく、人間の価値観が現れるものになる」という。

ブロックチェーンが作る経済圏では、評価されるのはお金を持っているかどうかではなく「生き方がクールかどうか」(松田社長)だと予想する。その生き方が反映されるのがどういうトークンを持っているか。そしてそれを管理するウォレットに反映されてくる未来になるとみる。

そのためウォレットが人々の「サブカルチャーの集積体」となり、どのような価値観を持って生きているかが現れるものになるという。

今後は扱えるユーティリティトークンを増やしていき、ブロックチェーンによって現在の一律の価値形態を変える可能性を見ている。

「たとえばオタクコインを発行するとする。メディアでは現在購読料を一律にとっているが、トラフィックに代わる評価基準をブロックチェーンで作ると、ある記事によっては100万円分を支払うか、1円を支払うかがユーザーが選択できるようになる」

松田氏と下山氏、木田氏は多通貨対応のウォレットにメディア事業を組み合わせることで世界初のソリューションとなることを目指している。