中国商務省は14日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元の試験プログラムを一部の都市で開始すると発表した。また、試験範囲の対象都市を拡大する計画も明らかにした。ウォールストリートジャーナルなど複数のメディアが報じた

報道によると、実施されるのは北京や天津・河北省、東部の長江デルタ地域、香港やマカオを含む珠江デルタ周辺の「粤港澳大湾区」。

また、中国の中でも貧しい中央部や西部の都市でも「一定の条件」を満たせばデジタル人民元の試験導入が進められるとした。

今回新たに追加された試験地域での開始日程は明らかになっていないが、商務省はデジタル通貨を含むサービス部門に関する声明の中で、政策設計を2020年中に完了するべきだとしている。

これまで、デジタル人民元のパイロットプロジェクトは4月には深センや成都、蘇州、雄安の4都市で試験運用に成功。2022年開催の北京オリンピックで導入すると報じられている。

リテール向けの実証実験進む

今年4月の報道では中国のスターバックスやマクドナルド、サブウェイ、ユニオンペイ、JD.Comの無人スーパーマーケット、地下鉄、書店などがテストに参加しているという。

中央銀行デジタル通貨は銀行間取引に使う「ホールセールCBDC」と、個人や一般企業が使う「リテールCBDC」の取り組みが進められている。

中国が計画しているデジタル人民元は、一般の人々も使える「リテールCBDC」になると想定されている。

そのため、スタバやマクドナルド以外にも、すでに中国内の様々な大手企業がプロジェクトに参加している。

7月には北京拠点で2億4000万人以上の会員に食品配送を手がける「メイチュアン・ディアンピン(美団点評)」と中国最大級の動画共有サイト「ビリビリ(哔哩哔哩)」がデジタル人民元プロジェクトに加わった。両者はデジタル人民元プロジェクトに関与する多くの銀行パートナーシップを結んだという。

さらにタクシー配車サービスの滴滴出行(ディディ)もプロジェクトの参入。乗車時におけるデジタル人民元の支払いを可能にすることをテストすると見られる。

また、8月には中国の国営商業銀行がデジタル人民元用に設計されたデジタルウォレットのテストを開始したとの報道も出ている。深センを含む複数の都市にある国営銀行の数人の従業員が、デジタル人民元の送金や支払いのためのウォレットアプリをテストしているという。

商務省は14日に出した声明の中で、デジタル通貨が広く利用されることや、人工知能の活用などイノベーションを促す政府の取り組みは、付加価値の高い産業を生み出し、経済をグレードアップさせることを目的としているとした。