チャーリー・リー氏はライトコイン(LTC)の生みの親で、元コインベースの開発ディレクターだ。ここ最近、同氏は仮想通貨の世界で大胆な行動を取ってきた。

 昨年12月、米有名オンライン掲示板の投稿で「利益相反」を理由に所有するLTCのすべてを売却及び寄付したと発表。今年1月には、新たな手数料市場を構築するライトコインのソフトフォークの提案をツイートしている。

 (「ライトコイン創始者が保有する全てのライトコインを売却、開発は継続」2017年12月21日)

 リー氏は先月26日、サンフランシスコで開かれたブロックチェーンコネクトにて基調講演を行った。その舞台裏でコインテレグラフは同氏に取材。その時ちょうど発生したコインチェックにおけるハッキング事件や、仮想通貨投資ブーム等について話を聞いた。

「コインテレグラフを読んでいる」と告白したリー氏

リー氏:ちょうど(コインチェック社における巨額ハッキング事件についての)コインテレグラフの記事を読んでいたところだ。たった今起こったのか。

ーー 26日早朝に起きたようだ。今回の事件についてどう見るか。

チャーリー氏: まず思うのは、取引所がハックされたのは不運だということ。予想できなかったことではない。だが仮想通貨の世界の掟はこういうものなのだ。「金銭的な自由を持つ」というのは自分の金銭を自分で完全にコントロールするということだ。だが取引所に管理を渡してしまえば、取引所があなたのお金をコントロールしてしまい簡単に無くしてしまうだろう。そしてこれが取引所がハックされる最後のケースではないだろう。

だが今回のハッキング侵害は私が覚えている中で、流通量の割合からすると最大のハッキングの一つだ。NEMの時価総額は80億ドルだ。流通量の6〜7パーセント(ママ。実際は5.8パーセント)がハックされたことになる。もしこれがプルーフオブステークのコインであれば、ハッカーが盗んだコインをネットワークの攻撃に使おうとした時、同コインは攻撃にとても弱くなる。(*NEMはプルーフオブインポータンス)

NEM Charts

我々はベリコインなどのブロックチェーンが実際にブロックチェーンを巻き戻すのを見てきた。イーサリアムさえもDAOハックの際には巻き戻してコインをオーナーに戻した。だから(今回の事件を知って)まず考えたのはこれだ。コインを取り戻すためにハードフォークが行われるのだろうか。

ーー私たちもNEMがハードフォークするかについて話していた。

チャーリー氏: 私はビットコインとライトコインではハードフォークをしてコインを取り戻すことは絶対に推奨しない。ベースレイヤーは検閲に耐性がなければいけない。デベロッパーや企業は一方的に取引を取り消すことはできない。一度前例を作ってしまったらどのように線引きをするのだろうか。これはただの推測なので、NEMチームがたった今どのように考えているかは分からない。ただ、取引所とその利用者には不運なことだ。(1月27日、コインチェックはハックで影響を受けたユーザー全員に補償を行うと発表。NEMチームはハードフォークの実行に反対している。ハッカーは盗んだコインの一部を異なるアドレスに移動させていることが報告されている。)

ーー「不運だが、第三者に金銭を渡したのであれば、それはあなた自身が取ったリスクだ」ということか。

チャーリー氏:その通り。そういうものなのだ。あなたの金銭はあなたがコントロールしている。誰かにコントロールを渡したいのであれば、間違いなくリスクが伴う。ほとんどの場合、中央集権型の取引所でトレードしたいならばそのリスクは取る価値がある。だが今年は非中央集権型の取引所がさらに出てくれば良いと思っている。

ーー米国で人気のモバイル株取引アプリ「ロビンフッド」が仮想通貨の取引機能を追加する。

チャーリー氏: ロビンフッドやスクウェアキャッシュ等でビットコインやその他の仮想通貨を売買できるようになるということは、間違いなく一般層への浸透がゆっくりと進んでいるとても良いサインだ。とても良い事だと思うし、とても興奮している。特にロビンフッドが今後ライトコインをサポートする可能性があることについても良いことだと思っている。一般の人が参入しやすくなり、仮想通貨に触れ、簡単に少額購入し使うことができるようになる。これは長年コインベースが行ってきたことで、私がコインベースに入った理由でもある。母親や父親世代の仮想通貨に興味が無かった層が、ビットコインやライトコイン、その他のコインを簡単に使えるようにするということだ。

ーー最終的にはコインベースを離れた。

チャーリー氏: ライトコインに集中するためだ。今はライトコインの開発にフルタイムで携わっている。

ーーだが、ライトコインを全て手放した。

チャーリー氏: コインを売却したが、私はまだライトコインの開発にフルタイムで携わっている。売却は利害の対立が理由であり、プロジェクトに未来が無いと思っているからではない。

ーー仮想通貨をフルタイムで開発する人は皆、その仮想通貨を一切所有するべきではないと思うか。

チャーリー氏: 必ずしもそうではない。私はソーシャルメディアで影響力がある特別な立場にいる。そして私はライトコインの未来と、価格の変動に大きな影響力がある。そのため、ライトコインについてソーシャルメディアで宣伝しそれが価格に影響を与えることに常に葛藤があった。そしてそれは私の資金を増やすことになる。金銭面を私の仕事から切り離したかった。

ーーツイッター上の個人が市場をそんなにも大きく操作できると思うか。

チャーリー氏: 聞くもの、見るものに大きく影響されるのはまさに人間の性だ。私は価格面でライトコインとビットコインにとても強気だ。だが短期では上下どちらにも大きく動き得るし、予測するのは難しい。

ーービットコインやライトコインについて今後一年の予測はあるか。

チャーリー氏: 予測は不可能なので、予測をしないことにしている。昨年価格が上がる前、ライトコインが4ドルだった頃、30ドルに達したら上々の年だと思っていた。驚くべきことだろう。4ドルから30ドルまで上昇したらほぼ9倍の上昇だ。驚くべきリターンだ。だが実際300ドルまで到達した。(30ドルの)10倍以上だ。

Litecoin Charts

だが、下落にも驚いた。ビットコインでさえ前回のピークでは1200ドルに達した(2013年)が、200ドルまで下落した(2015年)。80パーセントの下落だ。このことも昨年末に「20ドルまでライトコインが下落することを受け入れられないなら、投資するべきではない」とツイートした理由だ。

資金を失う多くの人は、高値もしくは上がる途中で買う。価格が大きく下落し、売らなくてはならなくなる。なぜなら失うには大きすぎる資金だからだ。そして安値で売り、次の上昇に乗ることができない。

人々は(私のツイート)を誤解し、私がライトコインが90パーセント下落するから売れと言っているのだと理解した。90パーセントの下落はあり得ることだ。だが、私は可能性を挙げているだけだ。価格変動が大きすぎるため、失っても良い資金しか投資するべきではないと言っているのだ。長期では視界は良好だが、短期では誰にも分からない。

*コインテレグラフ編集部による注釈