キャロライン・エリソン氏は2022年にアラメダ・リサーチを率いていたが、その業務は順調ではなかったようだ。そして彼女はそれを隠そうともしていなかった。サム・バンクマン-フリード氏の刑事裁判で検察側が証拠として提出した彼女の個人メモの一部からは、FTX破綻の数週間、数カ月前におけるアラメダの苦境とCEOの辞任願望についての詳細が明らかになった。

アラメダの元CEOであるキャロライン・エリソン氏は今週、バンクマン-フリード氏の裁判で10時間以上にわたり証言を行った。注目すべきは、彼女が弁護士と共にマンハッタンの連邦裁判所の正面玄関から入場したことだ。エリソン氏によれば、昨年11月にFTXが破綻して以来、バンクマン-フリード氏とは一度も会っていないという。彼らのコミュニケーションも何ヶ月も前から途絶えていた。

2022年4月、2人の恋愛関係は終わりを告げ、エリソン氏はバンクマン-フリード氏との会議を避けるようになった。それでも彼らはバハマの豪華なアパートで同居していた。アラメダのどんどん増加する負債は、彼女にアラメダを去ることを考えさせた。「(共同CEOだった)トラブッコも私も物事を押し進めることに成功していないと感じている」と彼女はバンクマン-フリード氏に宛てた文書に書き、その証拠が彼の弁護士による反対尋問中に公開された。

バンクマン-フリード氏は彼女に残るよう求めた。彼女の退職はアラメダの財政状態についての疑念を生む可能性があり、FTXの信用を損なうと考えたからだ。結局エリソン氏はCEOとして留まることになった。

彼女は2018年にアラメダにトレーダーとして参加し、2020年には同社の業務のほとんどを担当するようになった。一方、バンクマン-フリード氏は新たに立ち上げた仮想通貨取引所FTXに集中していた。2021年8月、エリソン氏はサム・トラブッコ氏と共に共同CEOに就任したが、数ヶ月後に彼が退任し、彼女が会社を指導することとなった。2022年8月、トラブッコ氏は正式に共同CEOを辞任した。

エリソン氏はFTXの設立に反対だったと明らかにした。

「アラメダに参加する前は自分自身を野心的だとは思っていなかったが、バンクマン-フリード氏の刺激を受け、より野心的になった」と彼女は語った。CEOとして、エリソン氏はアラメダの仮想通貨の貸し手側への対応を担当していた。2022年半ば、テラ・エコシステムが破綻した後、同社の借入額は13億ドルに達した。市場の下落は仮想通貨から流動性を奪い、アラメダの貸し手がローンの返済を要求した。

エリソン氏によると、バンクマン-フリード氏は彼女にFTXとのクレジットラインを通じて債権者への返済を続けるよう指示した。つまり、アラメダはFTXの顧客資産を仮想通貨を返済するために使用することになる。

当時、FTXとのクレジットラインは130億ドルに達していた。貸付業者がローンの返済とアラメダの貸借対照表の開示を要求する中、バンクマン-フリード氏はエリソン氏に同社の財務状況を示すための「代替手段」の使用を提案した。その数ヶ月後、エリソン氏は債権者を欺くためにさらに多くのバージョンの貸借対照表を作成することになる。

11月初旬、アラメダの貸借対照表の代替バージョンが流出した。当時、エリソン氏は日本で休暇を取っていたが、同社の危機に対処するためにFTXの香港オフィスに行く必要があった。貸借対照表のデータは同社の現状を反映していなかったが、噂を広め、数日後にFTXへの出金ラッシュを引き起こすには十分だった。

12月以降、司法省と協力しているエリソン氏は、詐欺罪など7件の起訴に対する判決を間もなく受けることになる。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン