世界経済フォーラム(WEF)が4月9日、世界四大会計事務所のデロイトと共同でまとめた白書「サプライチェーンに向けたブロックチェーンの包括的展開(Inclusive Deployment of Blockchain for Supply Chains)」の最新パート(パート6)を公開した。WEFによると、ブロックチェーンにおける相互運用性のレベルは、企業用途ととしては現状ではまだ低すぎるという。

同白書は、サプライチェーンへのブロックチェーン導入に関する調査をまとめたものとなっている。2019年4月8日発表のパート1以来、不定期に新パートを公開しており、パート6では異なるブロックチェーン間の相互運用性(インターオペラビリティ)の必要性を強調。異なるブロックチェーンがどの程度相互に作用できるかを探っている。

WEFの調査によると、ブロックチェーンの相互運用性の問題は、パブリック・ブロックチェーンの文脈で主に対処されてきた経緯があるという。その結果、プライベート型または許可型(Permissioned)ブロックチェーンは取り残されたままだと指摘した。

また白書では、ほとんどの相互運用性ソリューションが、仮想通貨ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のパブリック・ブロックチェーンをターゲットとしている点を解説し、次のように述べた。

「パブリック・ブロックチェーンでは、相互運用性に関わる開発が長年にわたり重ねられてきた。例えばクロスチェーン・サイドチェーン・プロキシートークンなどだ。一方、エンタープライズ級のプライベート型・許可型ブロックチェーンの相互運用性においては、より大きな課題とともに、大きなチャンスが残されている」

WEFは、異なるブロックチェーン間における相互運用性のレベルは、現状では「企業レベルでの利用においてはまだ未熟」と強調した。

相互運用性を重視したプロジェクト

白書においてWEFとデトロイトは、コスモス(Cosmos)やポルカドット(Polkadot)など主要な業界プロジェクトを含む、相互運用性の問題に取り組むプロジェクトやテック企業を複数挙げている。しかしWEFは、コスモスやポルカドットのようなリレー型相互運用性プロジェクトは、依然としてプライベート型・許可型ブロックチェーンにしか利用してされていないと指摘した。

WEFとデトロイトによると、「BTCとETH以外で、異なるブロックチェーン間の相互運用性を生み出すことに成功したものはない」そうだ。

(出典: 世界経済フォーラム(WEF) 主要仮想通貨のブロックチェーンと、相互運用性ソリューションにおける、相互運用性を示すイメージ)

また白書は、グーグルの運営審議会参加が2020年2月に報じられた、分散型台帳技術(DLT)プロジェクトのへデラ・ハッシュグラフ(Hedera Hashgraph)を紹介。同プロジェクトのブロックチェーン「ヘデラ・コンセンサス・サービス(HCS)」が「ブロックチェーン間の相互運用性において有望なように見える」と解説した。へデラ・ハッシュグラフ運営審議会は、リナックス財団傘下のDLT「ハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)」において外部サービスとしてHCSを利用可能で、費用対効果の高い効率的な注文サービスを構築する方法を最新版ホワイトペーパーで紹介したそうだ。

WEFは、グローバルなテックジャイアントの中で唯一ブロックチェーンの相互運用ソリューションを立ち上げた組織として、マイクロソフトを指摘した。2018年10月、同社とナスダックは、さまざまなブロックチェーンをサポートするため、マイクロソフトの「Azureブロックチェーン・テクノロジー」と、ナスダックの「ナスダック・フィナンシャル・フレーム(NFF)」を統合する予定だと発表している。WEFは、この統合により、顧客は単一のインターフェイスなどを介して、異なるブロックチェーンを展開できる可能性を指摘した。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン