エネルギー生産や資源消費、環境影響への懸念は、世界的に主要なテーマになっている。また、ビットコインをはじめとするプルーフ・オブ・ワーク(PoW)のコンセンサスアルゴリズムを採用する仮想通貨のマイニングにかかる膨大なエネルギーコストも、度々批判が巻き起こっている。

環境問題とマイニングによる報酬コストの議論が続く中、ブロックチェーン技術を世界のエネルギーグリッドに導入し、エネルギーの買い手と売り手をつなぐ市場を通じて再生可能エネルギーの発電を促進することを目的とした仮想通貨プロジェクトに注目が集まっている。

EWT/USDT vs. POWR/USD vs. WPR/USD 1-day chart. Source: TradingView

2021年に入ってから3桁の上昇を見せているエネルギーに特化したプロジェクトは、エネルギー・ウェブ・トークン(EWT)、パワー・レジャー(POWR)、ウィー・パワー(WPR)の3つだ。

EWT/USDT

エネルギー・ウェブ・トークン(EWT)は、エネルギー分野のアプリケーション開発を支援し、さらに発展させるために設計されたオープンソースのエンタープライズブロックチェーン「Energy Web Chain」のトークンだ。

プロジェクトのウェブサイトによると、「エネルギーウェブは、オープンソースで分散化されたデジタル技術の可能性を解き放つことで、低炭素で顧客中心の電力システムを加速させる」と書かれている。

プロジェクトは2019年6月に開始され、その後、フォルクスワーゲン、シーメンス、日立などの世界的に有名な企業をパートナーとする広範なネットワークに成長している。

開発が進めば、グリッドオペレーターやソフトウェア開発者、ベンダーなど、エネルギー分野のさまざまな分野をつなぐのに役立つだろう。

2021年にEWTの価格が大きく変動したのは、3月初旬に同トークンが米国の仮想通貨取引所クラーケンに上場したことだ。

EWT/USDT 4-hour chart. Source: TradingView

その後、3月4日にフォルクスワーゲンとの提携が発表され、3月16日にはバッテリーコンプライアンスアプリ「EasyBat」がリリースされたことで、さらに上昇し、3月18日には史上最高値の19.85ドルを更新した。

POWR/USD

パワー・レジャーは、再生可能エネルギーや環境商品をローカルおよびグローバルな規模で取引できる、新しいエネルギー市場を構築することを目的として、2016年5月に設立された。

オーストラリアを拠点とするパワーレジャーは、ブロックチェーン技術を活用して、すべての電力資源や電力機器がデジタル・アイデンティティを持ち、リアルタイム市場に接続されたシステムを構築することを目指している。

POWRは、ピア・ツー・ピア(P2P)のエネルギー交換プラットフォームとしてイーサリアムネットワーク上で運営されており、「パワー・レジャーのプラットフォーム全体の一貫性を確保する」ために、POWRとSparkzで構成される2つのトークンシステムを利用している。

Sparkzは、パワー・レジャーのプラットフォーム上で電力を売買する際に使用されるステーブルコイン。

POWRの取引は、再生可能エネルギーに関する議論がメディアで取り上げられるようになった1月末から活発化した。
 

POWR/USD 4-hour chart. Source: TradingView

3月3日にパワー・レジャーがインド最大の総合電力会社タタ・パワーとの提携を発表したことで価格の上昇が始まり、2018年以来の高値である0.504ドルまで上昇した。

WPR/USD

ウィー・パワー(WePower)は、ブロックチェーンベースのグリーンエネルギー取引プラットフォームで、「エネルギー供給者と買い手である企業、エネルギー生産者を結びつけ、簡単で直接的なグリーンエネルギー取引を実現する」ことを目的に掲げている。

プロジェクトのウェブサイトによると、ウィー・パワー・プラットフォームは、「あらゆる規模の企業が地元の生産者から直接グリーンエネルギーを購入する最も簡単な方法」であり、「企業のグリーンエネルギー調達をオンラインショッピングのように簡単にする」ことを目指している。

WPRは、ウィー・パワー・ネットワーク上の決済手段として機能するERC-20トークンだ。WPRは、既存のエネルギー投資システムを標準化し、流動性を高めるために使用される。

2月1日に、ウィー・パワーが、豪州のエネルギー企業であるモジョ・パワーにグリーンエネルギーの調達と管理プラットフォームである「WePower Elemental」を譲渡したとの発表後に、WPR価格は上昇を始めた。

WPR/USD 4-hour chart. Source: TradingView

その後、ヨーロッパやオーストラリアで再生可能エネルギーや持続可能性に関する議論が活発化したことで、WPRの価格は安値である0.011ドルから3月24日には高値である0.05ドルまで急上昇した。

ブロックチェーン技術を利用して世界のエネルギー市場を最適化することは、分散型台帳技術が普及するにつれ、市場シェアを拡大するのに必要な技術になるだろう。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン