サトシ・ナカモトがビットコインの論文を書いてから今日で10年になる。金融危機の混乱が収まらない中誕生したビットコインは、この10年間で一番有名な仮想通貨として認知度を高めた。21世紀最大の発明という声もあるビットコイン。コインテレグラフ独自のイラスト共にこの10年で起きたビットコイン重要イベントを振り返ってみよう。

ビットコイン・ピザ

2010年5月22日、ビットコインにとって重要な画期的なことが起こった日だ。

ラズロ・ハニエツという名のプログラマーがアメリカのパパ・ジョンズ・ピザのピザ2枚を1万ビットコインで支払った。これは史上初めて仮想通貨が商品の支払いに使用された事例と見られている。

事の次第をもう少し詳細に見てみよう。Bitcointalk.orgフォーラムというサイトで、ハニエツは最初、フォーラムの利用者に1万BTCでピザ2枚を配達してくれるよう求めた。多数の利用者がオンラインでハニエツのためにピザを購入するという申し出を行ったが、最終的に「ジェルコス」というニックネームをもつ、10代の若者だったジェレミー・スターディバントがビットコインを受け取り、パパ・ジョンズのピザ2枚をハニエツに送り届けた。2010年5月22日に、ハニエツはこの風変わりな目標が達成されたことをフォーラムで報告した。

当時1ビットコインの価値は約0.0041ドルで、ハニエツの1万BTCはわずか41ドルだったことになる。現在1万ビットコインは、約70億円だ。

ちなみに元祖ピザ男であるハニエツは、今年2月にライトニングネットワークを利用して、ピザ2枚を購入している

ブラックマーケット「シルクロード」

ピザで始まったビットコインの実社会での利用。デジタル通貨としてのビットコインが真価を発揮したのは、闇市場の世界だった。

起業家ロス・ウルブリヒトが立ち上げた闇サイト「シルクロード」。シルクロードは、ダークウェブ上で非合法なものを売買するプラットフォームとして最も有名な存在だった。トラフィックの追跡ができないTorを介して運営されており、犯罪者が非合法なモノをやり取りする上で便利なものだった。

シルクロードは2011年2月にスタート。13年3月までに1万もの商品が取引された。その70%がドラックだったといわれている。

このダークウェブ上の最大のブラックマーケットにおいて基軸通貨となったのがビットコインだった。銀行やクレジットカード会社を介さずに直接マネーをやり取りできるのは、証拠を残ることを嫌う闇市場の人間には好都合だった。

もちろん、このような違法サイトを当局がほっておくことはなかった。内偵捜査が薦められ、シルクロードは13年10月にFBIによって閉鎖。シルクロード創設者のロス・ウィリアム・ウルブリヒトはFBIによって逮捕された。15年には、ウルブリヒトは裁判で仮釈放なしの終身刑が言い渡された。

Mt.Gox事件

2014年2月、当時世界最大だった仮想通貨取引所Mt.Gox(マウントゴックス)がハッキングを受け、破産した。85万ビットコインが消失したと言われている。

東京にあるMt.Goxのオフィス前には「俺のビットコインはどこだ」と書かれたプラカードを持った被害者が多く詰め掛けた。CEOだったマーク・カルプレス氏の記者会見は多くの報道陣が詰め掛け、Mt.Goxハッキング事件は連日メディアで取り上げられた。このネガティブな事件を通して仮想通貨のことを知った日本人は多いのではないだろうか。

(画像:ロイター通信)

あれから4年。Mt.Gox事件はまだ終わっていない。下記にも取り上げるが、世界最大の仮想通貨取引所がハッキングされたにもかかわらず、ビットコイン価格はしばらく低空飛行を続けた後持ち直し、2017年に過去最高値をつけた。ビットコイン急上昇によりMt.Goxに残されたビットコインの価値が上昇。破産手続き中だったMt.Goxは今年6月、東京地裁により民事再生決定がなされ民事再生手続を開始した。破産手続きから民事再生手続へと逆転したのは、日本では初の事例だという。

現在の争点は、ビットコインの返済方法。ビットコイン(BTC)として返すのか、ハードフォークして誕生したビットコインキャッシュ(BCH)として返済するのか、それとも法定通貨に両替して返済するのか。破産管財人と債権者の間で今も話し合いが続いている。

Mt.Goxに残されているのは20万ビットコインとされる。破産管財人である小林信明氏は、9月に声明を出して、今年4月から約4ヶ月の間に260億円相当のビットコインとビットコインキャッシュ売却したと発表した。

来年2月に民事再生計画案の検討が終わる予定だ。

ハードフォーク

ビットコイン史において、一つ重要な節目となったこのビットコインキャッシュ誕生におけるハードフォーク。2017年8月1日に起きたこの事件の発端は、ビットコインのスケーラビリティ問題をどう解決するかに対して、セグウィットという取引データを圧縮する方法とブロックサイズを大きくする方法を巡って意見の対立が起こった事に遡る。

ビットコインのマイニングを行う大手マイニングプールの集団は、セグウィットが導入されるとこれまで使用していたマイニングマシンが使えなくなると懸念し、セグウィットの導入に反対。ニューヨークで開催されたConsensu 2017で会議で妥協案が合意されたものの、同会議がセグウィットを支持する人間が集まっていた事(定かではない)などを理由に、結局8月1日に中国のマイニングプール「ViaBTC」の主導によってハードフォークが実施された。その結果、誕生したのがビットコインキャッシュ(BCH)だ。

ハーフォーク回避



上記の絵はセグウィット2x導入を巡るハードフォークを危惧する内容を報じていた際に使われていた絵だ。当時、ビットコインの1ブロックに対するトランザクション量を増やす事を目的に、トランザクションを圧縮し、ブロックサイズを拡張する仕組みであるセグウィット2xの導入を巡って2つのグループが対立した。セグウィット2xを支持するグループ(ビッグブロック派)とその脆弱性などからセグウィット2xの導入に反対するグループ(コア派)が大きく対立し、ビットコインキャッシュ(BCH)誕生時のハードフォークのようなビットコインの分裂危機が懸念された。

しかし2017年の日本時間11月9日未明セグウィット2xを支持するグループから11月の中旬に予定されていたセグウィット2x導入の為のハードフォークを中止すると発表があり、分裂問題が回避された。この分裂問題が回避された事で、ビットコイン価格は8000ドル付近まで上昇。12月の最高値を目指していく弾みとなった。

最高値更新

2017年12月17日、ビットコインが一時2万ドルに乗せた。ビットコインのライトニングネットワーク実装への期待や、翌日18日からCMEビットコイン先物の取引開始を控えて、期待で高騰した。CMEよりも既に先行して始まっているCBOEビットコイン先物なども好材料となっていた。この頃はビットコイン取引ブームが世界で起こっており、米国でもApp storeでコインベースのアプリが何度もストアランキングで1位になっているなど、バブルの様相を呈していた。

この価格を頂点に2018年は最安値6000ドル台をつけるなど、現在は苦しい相場展開が続いているが、果たして再び2万ドルをタッチする日がやってくるのだろうか。次の10年に向けて、ビットコインの歴史は続いていく。

 

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