シークレット・アイデンティティ、政府との闘い、他の暗号通貨との競争、他の要因によるスケーラビリティの問題などによって、ビットコインが生き残れば、必然的なイノベーションが巻き起こることになる。
2016年4月4日のVanbex Groupの報告によると、Brandon Kostinuk氏は、光が粒子なのか波なのか識別するかの如く、ビットコインが通貨なのか投資対象なのか判断しようと試みてきたのだという。正しい答えはもちろん、どちらも正解である、と同氏は語っている。
同氏は分析の中で、ビットコインは一般に通貨として受け入れられている一方で、メインストリームへの進出を妨げる多数の問題に直面していると指摘している。
内部のものなのか、外部の要因によるものなのか、はたまた本質的なものなのか、そのデザインやアクシデントを通して、ビットコインは広範囲な使用目的としてサービスを展開するための様々な現実世界でのプレッシャーと対峙している。最も特筆すべきは、スケーラビリティの問題だ。もし未解決のままでこの問題が放置されてしまえば、ほぼ確実にSatoshi Nakamoto氏が生み出したイノベーションは大失敗に終わってしまうだろう。
“開発基金”がビットコインを救う
先週、90万ドルのビットコイン開発基金が、MITの仮想通貨イニシアティブに対して設立されたとの前向きなニュースが届き、金融機関がビットコインとブロックチェーンの世界へと初進出を果たしたことが知られている。
様々なビットコインに関連した(または独立した)企業から投資金が集められ、Bitcoin Coreの開発者Cory Fields氏、前Bitcoin Core リードメンテナであるGavin Andresen氏と、現Bitcoin Core リードメンテナであるWladimir van der Laan氏による継続的な開発の手助けとなっている。
MotherboardのChristopher Malmo氏は、今回の90万ドルの投資について、”長期的な戦いを勝ち抜くためには、ビットコインは現実世界から少し身を引く必要がある (原題: To Survive Long Term, Bitcoin Needs a Break from the Real World.)”と題した素晴らしい記事を書いている。
Malmo氏は記事の中で次のように結論付けている―
「一端一線から退いて学術分野へもう一度立ち戻ることが、ビットコインが新たなアイディアと共に先に進むための効果的な足掛かりになるはずだ。前を向いて先に進むためには、この現実世界の制約から離れて成長するための時の部屋が必要なのかもしれない」
ビットコインは様々な問題と戦っている
Kostinuk氏は、言うまでもなく、多くの問題(ビットコインが直面している様々な局面)が突然消え去るようなことはなく、鍵となる競争相手が、現在テック界の巨人からの支援を得て人気を集め急増している点を指摘している。1月の後半に、Van der Laan氏がCoinDeskに対し、最も大事なことは、”今は議論やプランニングを辞め、実際にロードマップの実現に移行すること”であると伝えている。
2013年を振り返れば、金融危機にあえぐ中で、キプロスにおいて多くのギリシャ市民が、政府が介入できない代替通貨としてビットコインを求めていた。政府の意向に従ってみれば、何故彼らが現実的な選択肢として自国の通貨を選ばず、新たな通貨を選ぶことを強いられたのかは極めて明白だ。
このキプロスでの出来事によって、モントリオールに拠点を置く、Bitcoin Embassy事務局長、Guillaume Babin-Tremblay氏が繰り返し伝えているように、暗号通貨は新たな高みへと上り詰めたといえる。同氏は、Kitco Newに対し、”ビットコインはキプロスでのあの出来事が起こるまでは、穏やかにその成長を続けていました。キプロスが価格高騰の触媒となったのです”と語っている。
価格は1BTC辺り40ドルに落ち着いていたのが、数日以内で倍に跳ね上がり、同氏が伝えるところによれば、”価格は200ドルに向かって上昇したが、キプロス危機が弱まった後に、約60ドルまで値を下げた”。ビットコインによって、キプロス中央銀行による資産没収の危機から免れ、キプロス市民は政府の手の届かないところへと資産を移動し守ることができたのだ。
経済が低迷している、中国、アルゼンチン、アイスランドやロシアなどの国々は、国際制裁の対象となり、商品価格の崩壊により当然ながらボロボロの状態であり、新たな投資先を探している全ての投資家にとって絶好の場所といえる。ことの良し悪しはさて置き、国家のシステムから国外に通貨を移動させることで、経済の安定には影響が出る。市民が、最早税収や、消費、銀行の手持資本などを通して国内経済が潤っていないと判断し、資産をオフショアへ移せば経済的成長も阻害されることになる。
これはビットコインへの投資が何と比べれば釣り合うのか、ということでもある。つまり、暗号通貨への対立と、結果として起こる立法上の争いが懸念されるからである。上記のような例は、仮想通貨の価格が如何にして何故決まり、そしてその変動性が左右される要因は何であるかを例証してくれる。それらは本質的に円を描くようにしてお互いに関連している。
ビットコインは投資対象として繁栄する
一方では需要の存在があり、通貨における購買力を促進する。もう一方では、特定の通貨への投資需要は、しばしば、購買力自体と、市場価格と関係している。では何故投資をするのか?
ベネズエラはその点で述べれば興味深い一例である。IMFによると、ベネズエラの経済は、今後700%ものインフレに陥る可能性があると予測されており、これは世界で最も高いインフレ率だ。その崩壊しつつある経済によって、起業家たちはビットコインが決済の方法として適しているとして好んで利用する傾向にある。こういった類の経済環境は、暗号通貨の需要を生み出し易い。しかし暗号通貨は決定的な選択を下すために苦戦を強いられている。暗号化されたものであれ、そうでないものであれ、政府は努力しているが、合法的な通貨としての適性ははっきりしていないのだ。
専門家たちは、この記事を書いている時点での価格で、9億ドル弱の値を付けるだろうと言われているイーサリアムの暗号通貨と比べて、ビットコインのポテンシャルは時価総額にして63億ドルは下らないとして議論を交わしている。しかしながら、ビットコインが辿った独自の歴史を考えて見ると、その価格は相対的なものだ。Van der Laan氏が支持してるように、ガバナンスが必要とされているということは、行動が必要とされていることなのだ。
ビットコインが存続するためには、イノベーションが鍵となる
仮想通貨が次の段階へ進むためには、今の曖昧な状態を超え、自由放任的な環境やその姿勢を通して分散型の通貨として機能していても、最も効率的且つ効果的で、セキュアな通貨システムを生み出すためには何もしてくれないと気付くことが重要だ。
現在ビットコインに関して最も議論されている話題としては、ブロックサイズ問題がある。現在は1MBのサイズで、仕様上約10分は処理にかかると想定されていた。現在の条件下では、このタイムフレームを45分から数時間まで際限なく延長することが可能だ。クレジットカードなどと比べると、どれだけ時間がかかるかは、我々が知っている通りだ。トランザクションが遅延する原因が、中国におけるマイニングの独占によるものなのかどうかはまた別の議論だが、ビットコイン自体の全体的な目的が、マイニングネットワークの中央集権化にあるのか、という点に関しては議論の余地がある。
ビットコインが現実世界における実際の活動やイノベーションと関連しているのかどうかは、いずれとも決まらないものだ。ビットコインベースの企業から90万ドルつぎ込まれたところで、そのライフラインであり、多くの部分で企業が拠り所にしていて、何十億ドルもの価値を有する一つの暗号通貨を蘇生するために支払う額としては些細なものだ。完全にその価値は消えしまうかもしれないし、丁度BlackBerryによる北米のスマホユーザーを独占していた状況が、市場競争に火が付いた瞬間に一転してしまったように縮小してしまうかもしれない。
ベネズエラに話を戻せば、何故市民が他の代替通貨ではなくビットコインを選んだのか、しっかりと考えることが重要である。暗号通貨における計算アルゴリズムとは何の関係もなく―需要から想定された価格帯での現在のビットコインの備蓄量にこそ関係があったのだ。
ビットコインのコア・デベロッパーたちは、すぐにでも様々な局面と対峙しなければならない。さもなければ、マイク・ハーン氏の別れの言葉が虚しくも現実のものとなってしまうだろう。この競争の激しい社会において、そしてビットコインを苦しめる様々な物に関して言えば、商品への需要が保証されることは決してない、と我々が理解しているように、内部と外部、そのどちらからも、ビットコインの衰退がもたらされる可能性が存在しているのだ。