ビットコイン・マイニングの電気代:それだけの価値があるのか

 金を生み出すには金が必要だと言われるが、ビットコインのマイニングで利益を得るためには、まずマイニング機材を購入して電気代を支払わねばならない。ビットコイン・ネットワークに参加するマイナーが増えていることから、マイニングで消費される電力量が環境に悪影響を及ぼすのではないかと懸念する人々がいる。その一方で、ビットコイン・マイニングの利点は、ビットコインを生み出すのに要するコストを上回ると確信している人々もいる。

ビットコインのマイニングとエネルギー消費

 新たなビットコインはマイニングと呼ばれる過程を経て生成され、マイニングではコンピューターがエネルギーと演算資源を消費しながら、ビットコイン取引の最新ブロックを認証するための難しい数学問題を解く。数学問題を解いたマイナーは、そのブロックをブロックチェーンにつけ加え、新たに生成されたビットコインを受け取る。数学問題の難しさは、ネットワーク全体がどの程度の演算能力を持っているかによって変わる。ビットコイン・ネットワークに参加するマイナーが増えるにつれてマイニングはより難しくなり、通常、マイニング機器が消費するエネルギー量も増加する。

 ビットコイン・ネットワークは、現在年間およそ2.55ギガワット(GW)の電力を消費している。参考までに例を挙げると、アイスランド全体の年間電力消費量は平均で3.1GWで、オーストリアの年間電力消費量は平均で8.2GWだ。ビットコイン・ネットワークの年間消費量は、この1年間で推計413.37パーセント増加している。ビットコイン・ネットワークは、チェコ共和国全体の年間電力消費量の102.3パーセントを使用している。

BTC

 データコンサルタントでブロックチェーンの専門家のアレックス・デ・フリース氏は、ビットコインのマイニングが消費するエネルギー量は問題だと確信している。デ・フリース氏は最近科学誌「ジュール」に発表した論文の中で、ビットコイン1取引あたりに消費される電力量の平均は300キロワットアワー(kwH)であり、新たなマイナーが現在の割合でネットワークに参入すれば-そしてマイニングがより難しくなれば-この数値は18年末までに900 KwHに達する可能性があるとした。

 デ・フリース氏は、ビットコインのマイニングによる環境の変化は世間の人々には見えないとはいえ、マイニングは、世界が気候と環境の目標を達成する上で助けにはならないとコインテレグラフに語った。

「マイニングが、石炭による電力と共に再生可能エネルギーも使用していることを、我々は知っている。後者のケースでは何を置換しているのかわからないし、そもそも再生エネルギーもカーボンフットプリントが皆無なわけではない。やらなければならないことがまだあるが、影響があるのは間違いない。ビットコインがエネルギーを使えば使うほど、環境に与える影響は間違いなく増大し、そのことはひいてはすべての人に影響を与える。我々が気候目標を達成する助けにはならない」

 ビットコインのマイニングが環境に及ぼす影響を見極めるにあたっては、曖昧な部分が存在する。使用される電力の中には石炭由来のものもあるが、マイニング自体は通常は炭素を排出しない。とはいえ、マイニングが環境に与える物理的影響をマイナーが目にしないにしても、消費される資源量と機会費用だけでも懸念に値する。

ハッシュレートとエネルギー消費

 マイニングが消費するエネルギー量は増加しているようだ。マイニング装置がブロックをうまく解けるようになるにつれ、各マイニング機器が消費する電力量も増加する。マイナーは競争相手に先んじるために、より高いハッシュレートのマイニング装置を常に探している。ハッシュレートとは、マイナーが数学問題の解答を見つけるのに要するスピードだ。ハッシュレートが高いほど、問題の答えを迅速に見つけることができる。

 最初は、問題は標準的CPUでも解くことができるくらい簡単だったが、より多くのマイナーがネットワークに参入するにつれて問題は難しくなっていき、問題の答えを見つけるにはGPUのほうがふさわしいことに、マイナーは気づいた。そのわずか数年後にはFPGAが、続いてASIC-特定用途向け集積回路-が、GPUよりもブロックを解くのに向いていることがわかった。

Mining

 他の人々、たとえばグーグルで情報セキュリティエンジニアを務めた経験を持つ起業家のマーク・ベバン氏は、マイニングが消費するエネルギー量は、再生可能エネルギーにさらなるイノベーションをもたらすはずと考えている。エネルギー消費は、いずれは社会全体にとっての再生可能エネルギーのコスト削減につながるとベバン氏は確信しており、次のように語る。

「マイナーは電気代に対して極めて神経質なため、現在最も安いエネルギー源である再生可能エネルギーの開発を、電力会社がさらに推し進める原動力になることが珍しくない。たとえば中国では多くのマイナーが四川省を拠点としているが、これは豊富な水力発電のためだ。もう1つの例は、20メガワット(MW)の太陽発電によるマイニングファームを建設しているオーストラリアの起業家だ。仮想通貨マイナーのエネルギー使用が増え続ければ、社会全体にとっての再生可能エネルギーのコスト削減につながるだろう(需要の増加 → 研究開発の増加 → 能力と効率性の高まり → 規模の経済によりコストが低下)」

 マイナーは電気代を抑えるために、より安価なエネルギー源をすでに探し求めている。企業は電気代が一般的に安いカナダや四川省のような土地に目を向けている。マイナーは安価な電気を使いたいという動機があることから、それがエネルギー分野における研究開発の推進につながる。長期的には、エネルギー分野のイノベーションが進んで社会全体にとって安価な電力が作られるはずだ。

Cost

ネットワーク・セキュリティの代価

 マイニングが消費するエネルギー量は無視できないが、マイニングの利点-ネットワーク・セキュリティ-が電力消費のような負の外部性を上回ると考える人々もいる。ビットコイン・ネットワークは、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)と呼ばれるコンセンサス・アルゴリズムによって守られている。マイナーはブロックの問題を解き、その過程でネットワークをセキュアにして、新たに生成されたビットコインと取引手数料を受け取る。マイナーが暗号的証拠の解をもし見つけられなければ、取引履歴のブロックはブロックチェーンに付加されず、ブロックチェーン技術そのものが無効になる。マイナーがブロックの解を見つけてチェーンに付加しなければ、取引履歴の記録は生成されないのだ。このネットワーク・セキュリティ対して支払われる代価は、PoWコンセンサスが消費する膨大な量のエネルギーだ。

 サイファーパンクのジェムソン・ロップ氏は、ビットコインのエネルギー出費問題に対する考えを、ツイッターで明らかにした。ビットコインのマイニングによって生じる電気代は、ネットワーク・セキュリティに対して支払わねばならない税金に過ぎないと、ロップ氏は考えている。

 @lopp ビットコインを計算攻撃に対してセキュアにするためのエネルギー出費について泣き言を言っても無駄だ。ビットコインのエコシステムは受託者(マイナー)にセキュリティを支払っている。止めてもらいたいなら、自由市場でもっと優れた代替案を出すべきだ。

 経済学者のヴァシリー・スマノフ氏も、エネルギーの非効率性と浪費は、現在のところブロックチェーン実験を実施するために支払わねばならない代価と考えており、次のように語っている。

 

“「高いエネルギー消費は、環境汚染とのみ関連付けられているわけでなく、価値の保管と移動に使用される分散型台帳のより高いセキュリティとも関連している。これは一時的な状況に過ぎず、将来的にはライトニング・ネットワークの採用によって、取引量とエネルギー消費から見たビットコインのエネルギー効率は高まると、私は強く感じている」

 

「ほかの産業を見てみるといい。たとえば、車や電子機器による環境汚染とエネルギーコストは、産業の発展につれて大きく減少した。そうであれば、なぜビットコインには最初から高いエネルギー効率を求めるのか。ビットコインは誕生してからまだ9年しか経っていないのに」

 

コンセンサス・アルゴリズム

 現在ブロックチェーン・ネットワークで最も一般的なコンセンサス方式はPoWだ。取引が認証されるには、マイナーが暗号的証拠の解を見つけねばならない。ところがPoWは、最もエネルギー消費の多いコンセンサス方式でもある。これより消費エネルギーが少ないプルーフ・オブ・ステークやライトニング・ネットワークが、ブロックチェーン・ネットワークの効率を高めるために開発されている。

 だがこうした新技術は、まだほとんど正式には実施されていない。ビットコインはまだ初期段階にあり、誕生から10年も経っていない。歴史を振り返っても、初期段階では技術が最適化されていないのは珍しいことではない。

効率を高める

 同時に、こうしたネットワークの問題の解決に取り組んでいる人々がいる。イーサリアム・ネットワークは、効率性を高めながら電力消費を削減する方法としてプルーフ・オブ・ステークを研究しており、ビットコイン・ネットワークは、ライトニング・ネットワークの実装を検討している。だがこうした解決策がテスト段階を脱して立ち上がるまでは、PoWはその電力消費を批判され続けるだろう。

 ビットコイン・ネットワークの電力消費が最適化されれば、ビットコイン・ネットワークの全体的効率性も高まる。カリアリ大学の電気工学・情報工学学部のルイサナ・コッコ氏、アンドレア・ピンナ氏、ミケレ・マルケーシ氏は、『ブロックチェーンによる銀行業務:ブロックチェーン技術でコスト削減』と題した論文の中で、ビットコインが世界の金融インフラストラクチャーを真に最適化させるには、その経済効率と作業効率、サービス効率を高めなければならないとして、次のように述べている。

「つまり、我々の研究結果はすべて、ブロックあたりの取引数の少なさと現在要している高すぎる演算能力という、おもな制限を克服して初めて、ビットコインシステムの全体的効率を高められることを示している」

 ビットコインは、その透明性の高い帳簿やセキュアなデータストレージ、ユーザーが力を持つ特徴において有用性が高いものの、スケーラビリティとエネルギー消費の問題を解決できるまでは、広く採用されるのは困難だろう。ビットコインの発行上限は2100万枚であり、マイニング機器がより多くのエネルギーを消費してマイナーがより高い電気代を支払う中で、ビットコインのマイニング報酬は減少する。いずれはビットコインのマイニングだけで電気代を埋め合わせることはできなくなるだろう。将来的にはマイナーは、ブロックの署名に対して受け取る取引手数料で電気代の支払いを補填する必要が出てくるだろう。

エネルギー支出にその価値はあるか

 マイニングが消費するエネルギー量は問題だと考える人々はいるものの、社会がどの程度ビットコインの恩恵を被っているのかを測るのは難しい。ベバン氏はコインテレグラフに次のように語った。

「『ビットコインのエネルギー消費にその価値はあるか』という質問に対する答えは非常に主観的だ。なぜなら、ビットコインがどれほど社会の役に立っているかを測るハードデータが存在しないからだ。何人のベネズエラ人が、インフレを回避するためにビットコインを使っているのか。どれくらいの数の家族が、ビットコインを国際間送金に使うことによって、送金業者が課す平均7.13パーセントの手数料を回避しているのか。ビットコインで億万長者になった人のうち何人が、新たに得たその富を慈善事業に寄付したのか。こうした疑問に関するデータはほとんど存在しない。現在のエネルギー消費レベルを憂慮する必要はないと、私は考えている。世界の電力消費の0.2~0.5パーセントに過ぎないからだ。モルガン・スタンレーの研究者が報告書の中で述べたとおり、仮想通貨マイナーは現在のところ電力の点では『取るに足らない』」

 世界で何人がビットコインを使用しているのか、何のために使っているのか、ビットコインが生活の改善に役立っているのかを、知ったり定量的に測定したりする方法は、今のところ存在しない。だが、ベバン氏のような個人やモルガン・スタンレーのような企業は、ビットコインのマイニングは世界の総電力使用量のごく一部に過ぎないため、心配する必要はないと言う。

イノベーションが不可欠

 ビットコインのマイニングがどの程度環境に負荷をかけているのかが、我々にはよくわからないにしても、ビットコイン・ブロックチェーンが広く採用されるためには、ビットコイン・ネットワークのエネルギー消費が削減される必要があるのは間違いない。規制当局が電力使用量をコントロールしたり削減させたりするために、マイナーに対する指針や規制を策定したとしても不思議はない。

 ビットコインのマイナーは電気代に対して極めて神経質なため、それがエネルギー分野における研究開発を後押しして、より効率的なエネルギーソリューションが生まれるはずだ。ビットコインの正の外部性と負の外部性を理解するのは困難であることから、消費されるエネルギー量が真に「価値がある」のかどうか断言するのは難しい。しかし、マイニングによって消費される電力が、もしコントロールされず、効率化されなければ、ビットコインのマイニングが環境に与える悪影響に人々が気づいた時には、取り返しがつかない事態になっているだろう。