ビットコインマイニング業界は、2024年の半減期以降、より厳しい事業環境に直面している。半減期は、約4年ごとにブロック報酬を減らし、長期的な希少性を担保するという、ビットコインの金融設計の中核を成す仕組みだ。半減期はビットコインの経済的な硬さを強化する一方で、報酬を一夜にして削減するため、マイナーには即座に収益面での圧力がかかる。
2025年には、こうした状況が「史上最も厳しい利幅環境」をもたらした。TheMinerMagは、収益の急減と負債の増加が主要な障害になっていると指摘している。
十分な現金準備と資金調達手段を持つマイニング上場企業であっても、マイニング単体での黒字維持は難しくなっている。そのため、多くの企業が収益の安定化と、純粋なハッシュプライス依存からの脱却を目的に、データ集約型の代替事業への進出を加速させてきた。
その中心にあるのが、人工知能(AI)と高性能コンピューティング(HPC)だ。いずれも計算資源への需要拡大を背景に、2022年後半以降、急速に成長してきた分野である。ビットコインマイナーは、大規模な電力アクセスや冷却インフラをすでに備えており、SHA-256ハッシュ計算以外の用途に転用できる点で、これらの市場に参入しやすい立場にある。
2026年時点でも、ビットコインは2024年4月の半減期後に始まった第4のマイニングエポックの最中にあり、この期間はおおむね2028年まで続くと見込まれている。ブロック補助金は3.125BTCに固定されており、競争は一段と激化し、効率性の向上と収益源の多様化が業界全体で進んでいる。
以下は、2026年のビットコインマイニング業界を左右すると見込まれる三つの主要テーマだ。
エネルギー戦略と手数料市場が収益性を左右
ハッシュレートはビットコインネットワークを支える計算能力を示し、ハッシュプライスはその計算能力が生み出す収益を表す。両者の違いは、引き続きマイニング経済の中核にあるが、ブロック補助金が縮小するにつれ、収益性は規模の大きさ以外の要因によって左右される度合いが増している。
低コスト電力へのアクセスに加え、ビットコインのトランザクション手数料市場へのエクスポージャーが、サイクルを通じて利幅を維持できるかどうかの鍵になっている。
依然として、ビットコイン価格の影響は大きい。ただし、2025年は、業界の多くが予想していたような、あるいは半減期翌年に典型的に見られるような急騰局面にはならなかった。
その代わり、ビットコインは段階的に上昇し、10月には12万6000ドルを超える水準でピークを付けた。この水準がサイクルの天井だったかどうかは、なお不透明だ。
一方、価格変動はマイナーの収益に明確な影響を与えている。TheMinerMagのデータによると、ハッシュプライスは第3四半期平均の約55ドル/ペタハッシュ毎秒(PH/s)から、同誌が「構造的な低水準」と表現する約35ドル/PH/s近辺まで低下した。
さらに負担を増したのがコスト上昇だ。2025年を通じて平均採掘コストは上昇を続け、第2四半期には約7万ドルに達し、すでに低下していたハッシュプライスと相まって、利幅を一段と圧迫した。
この下落は、ビットコイン価格が高値から11月にかけて8万ドルを下回るまで調整した動きと密接に連動している。過去の半減期後サイクルで見られたように、ビットコインが本格的な下落局面に入れば、2026年にかけてマイナーへの圧力が続く可能性がある。ただし、必ずしも同じパターンを繰り返すとは限らない。

AI、HPC、業界再編がマイニングの構図を変える
マイニング上場企業は、もはや自らを単なるビットコイン企業とは位置づけていない。近年は、電力、不動産、データセンターといった資産をブロック報酬以外でも収益化する戦略を反映し、デジタルインフラ事業者として自社を説明するケースが増えている。
この動きの先駆けとなったのがハイブ・デジタル・テクノロジーズで、同社は2022年に事業の一部をHPCへ転換し、翌年にはHPC関連収益を計上した。当時、ハッシュレート拡大に注力する企業が大半を占める中で、この戦略は際立っていた。
その後、AIやHPCに関連するGPUワークロード向けにインフラを転用、あるいはその計画を示すマイニング上場企業が増えている。コア・サイエンティフィック、マラ・ホールディングス、ハット8、ライオット・プラットフォームズ、テラウルフ、アイレンなどがその例だ。
取り組みの規模や実行力にはばらつきがあるものの、総じてマイニング業界全体の方向転換を示している。利幅が圧迫され、競争が激化する中で、多くのマイナーは、ブロック報酬だけに依存せず、AIや計算サービスをキャッシュフロー安定化の手段として位置づけるようになっている。

この流れは2026年にかけても続く見通しだ。2024年には、デジタル資産投資・アドバイザリー企業のギャラクシーが、マイニング企業間の合併・買収が増加していると指摘し、業界再編の進展を示唆していた。
ビットコインマイニング株、ボラティリティと希薄化リスク
マイニング上場企業は、ネットワークを支える存在であるだけでなく、企業として最大級のビットコイン保有者としても市場で大きな存在感を示している。ここ数年、多くの企業が純粋なオペレーションモデルを超え、ビットコインを戦略的なバランスシート資産として扱うようになった。
コインテレグラフが1月に報じたように、マイナーの間では、ストラテジーにおけるマイケル・セイラー氏の手法を参考に、採掘したBTCの一部を保有する、より意図的なビットコイントレジャリー戦略を採用する動きが広がっている。年末時点では、マラ・ホールディングス、ライオット・プラットフォームズ、ハット8、クリーンスパークなどが、ビットコイン保有量で上位10社に入っていた。

もっとも、こうしたエクスポージャーはボラティリティリスクも高めている。ビットコイン価格が変動すると、多額のBTCを保有するマイナーは、他のデジタル資産トレジャリー企業と同様に、バランスシートの変動が増幅される。
また、マイニング株には恒常的な希薄化リスクがある。事業は資本集約的で、ASIC機器、データセンター拡張への継続投資に加え、不況期には債務返済も求められる。
営業キャッシュフローが逼迫すると、マイナーは流動性確保のため、アット・ザ・マーケット(ATM)プログラムや二次株式公募など、株式連動型の資金調達に頼ることが多い。
最近の資金調達動向も、その傾向を裏付けている。テラウルフやアイレンを含む複数の企業が、バランスシート強化や成長投資を目的に、負債や転換社債市場を活用してきた。
業界全体では、第3四半期だけでもマイニング企業が数十億ドル規模の負債や転換社債を発行しており、2024年に勢いを増した資金調達パターンが続いている。
2026年を見据えると、マイニング利幅が低迷し、ビットコインが弱気相場に入った場合、希薄化リスクは引き続き投資家の主要な懸念となる可能性がある。
損益分岐点コストが高い企業や、積極的な拡張計画を持つ企業は、引き続き株式連動型資本に依存する可能性がある一方、損益分岐点が低く、財務基盤が強い企業は、サイクル後半にかけて株主希薄化を抑えやすい立場にある。
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