著者 ドルフィンf

大手証券会社出身、バブル崩壊期からトレード業務やIT企業経営を行っており、その後仮想通貨取引所の設立に関わる。ディープラーニングを用いた価格分析手法を確立しトレードで大きな利益をあげる。

ビットコインのトランザクションフィー (送金手数料)は通常、ビットコイン保有者がどのような動きをしているかを示します。

多くのトランザクションが発生してネットワークが混雑するとトランザクションフィーは高騰します。この状態は強気相場の時に、利益確保の動きから発生する事が多いです。

現在のビットコイン・トランザクションフィーはご覧のように過去一年間で最低の値になっています。

これは通常のブルマーケット(強気相場)とは様相が異なります。

この事の他にも通常のブルマーケットで起こる多くの事が今回のブルマーケットでは起こっていません。

ビットコインは1年前の2020年の同月から、約5倍の価格で推移しているにも関わらず、取引所の預かり残高は、過去3年間で最低となっています。

ブルマーケットの中期~最終段階では利益確保の為に保有しているビットコインを取引所に送金する投資家が増え、取引所の残高が大きくなるのが通常です。

しかし今回はその逆の事が起こっています。

過去のブルマーケットにおけるトランザクションフィーを確認してみましょう。

まず2013年12月をピークとする第一回目の半減期後の上昇相場。

ご覧のようにトランザクションフィーが高騰している事がお分かりいただけると思います。

次に二回目の半減期後の上昇相場。これは2017年12月にピークアウトしたブルトレンドですね。こちらもトランザクションフィーが高騰しているのをご確認いただけると思います。

次に現在の相場、三回目の半減期後の上昇相場を確認しましょう。

2020年の中旬からトランザクションフィーの上昇が見られますが、これは過去の上昇相場時のレベルと比べると小さいものです。

今年2021年4月にトランザクションフィーはスパイクしていますが、これは中国からのマイニングファーム撤退により一時的に引き起こされたものであり、その後中国から世界各地へマイニングファームの移転が進んだ事により再度低下しています。

そして現在は2020年初旬の水準にまで低下しています。

現在のネットワークのこういった状態はブロックチェーン上でのブロック間の需要が小さい事を意味しています。

繰り返しになりますが、これはブルマーケットでは極めて珍しい事です。

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デジタル資産の価格はその他の資産と同様に、その需給関係に相関します。

現在のトランザクションフィーとトランザクションボリュームは、投資家達のセンチメントが現在の保有分を売却するよりも更に買い増す事に傾いている事を示しています。

従ってマーケットにはビットコインの希少性が発生していますが、この事は取引所の預かり高が3年前の水準にまで減少している事からも分かります。

希少性、需給のひっ迫は一般の経済法則と同様に、資産価値の上昇をけん引します。

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ビットコインの希少性、需給のひっ迫を示す別のオンチェーン分析もご紹介します。

Arcane Researchのレポートに依ると、ビットコインの短期供給量は過去最低レベル、中期供給量は2015年レベルにまで落ち込んでいるという衝撃のデータです。

まず定義からお話します。短期供給量は取得後1か月以内に手放されたビットコインの量です。中期は3ヵ月です。

また供給量はビットコインの発行済総量に対するパーセンテージで現します。

Arcane Researchから参照したこちらのチャートに依りますと、過去1か月間に取得されたビットコイン移動、つまり過去1か月以内に購入⇒売却をしたビットコインは総発行量のうち6.8%でしかなく、過去3か月では15.8%に過ぎません。

これは衝撃的なデータです。1か月の短期供給量はビットコイン始まって以来の最低水準、3か月の中期供給量は2015年以来の水準です。

2015年というと2回目の半減期上昇相場が始まった時期で、その後2017年12月のピークまでにビットコイン価格は約90倍に高騰しています。

つい先日の5万ドルからの下落を見てみましょう。

この時は1ヵ月の短期供給がほんの僅かに増えています。しかしほんの僅かです。

この事から判るのは5万ドルからの下落は短期の投機家が目先の利益確定を行った結果であり、中期~長期のホルダーは3万ドルから5万ドルへの上昇ラリーの中で保有分のコインを動かしてはいないという事です。

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以上の考察の全てがマーケットの強気トレンドを示しています。

それどころかビットコインの本格上昇相場はまだ始まってさえおらず、これらの需給ひっ迫データから更なる急激な上昇を控えていると考える事ができます。

 

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限らない。