ビットコイン(BTC)が10万ドルの重要な水準を突破し、仮想通貨トレーダーにとって心理的な節目を迎えた。ホドラーや信奉者にとってもその価値が証明された形だ。
11月の選挙で共和党が勝利し、バイデン政権とその任命した証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長による仮想通貨への攻撃が終わることがはっきりして以来、BTC価格は急騰している。
10万ドルを突破したのは、次期大統領のドナルド・トランプ氏がゲンスラー氏の後任として、元SEC委員でデジタル商工会議所のトークン・アライアンス共同議長であるポール・アトキンス氏を指名して数時間後のことだった。
トランプ氏はトゥルース・ソーシャルでアトキンス氏の多くの功績を強調し、特に仮想通貨推進派である点を取り上げた。
「彼はデジタル資産などのイノベーションがアメリカをかつてないほど偉大な国にするために重要であることを認識している」とトランプ氏は語った。
トランプ次期政権の他の経済閣僚も仮想通貨に友好的な人物が指名されている。
財務長官に指名されている。キー・スクエア・キャピタル・マネジメントの創設者スコット・ベセント氏は「大統領が仮想通貨を受け入れることに興奮している」と述べ、「ビットコインに関してはすべてが前項事項となる」と語っている。
トランプ氏はまた、商務長官にカンター・フィッツジェラルドのCEOであるハワード・ラトニック氏を指名している。カンタ―・フィッツジェラルドはステーブルコインUSDTのカストディを担当している。
連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長もビットコインの正当性を再度認め、ニューヨークで4日に開催されたディールブック・サミットで「それは金のようなもので、ただし仮想的でデジタルというだけだ」と語った。
しかし、前例のないこの上昇は他の要因も絡み合っており、ビットコイン価格にパーフェクトストームをもたらした。仮想通貨投資家は今は興奮しているが、ビットコインが10万ドルに到達した理由と今後の行方を理解することが重要だ。
ビットコインの4年周期の半減期
ビットコインの総供給量は2100万BTCであり、BTCのマイニングを通じて分配されるようプログラムされている。総供給量の90%以上がすでに流通しているが、2140年までにすべてのBTCが市場に出回ると推定されている。
このプログラムには、マイニング報酬が「半減期」と呼ばれるイベントで定期的に半分になるイベントが組み込まれている。ビットコインの半減期は約4年ごとに発生し、ビットコインの経済構造に不可欠な要素となっている。
2009年にビットコインが始まったとき、マイナーは1ブロックあたり50BTCを受け取っていたが、4年ごとにその報酬は半減していき、2024年4月19日に発生した最新の半減期ではブロック報酬が3.125BTCに減少した。
ビットコインの供給量が減る一方で、BTC需要が同じ水準で維持されるか増加する場合、BTCの価格はその希少性により上昇することになる。
仮想通貨トレーダーは、市場の動きのパターンを探し、過去の価格行動をガイドとして利用することが多い。過去のトレンドに過度に依存することはリスクがあるが、ビットコインの半減期イベントはその価格に一貫した、顕著な影響を示してきた。
このパターンでは、半減期の約1年前に始まる短期的な強気相場と、その後の1年におけるさらに大きな上昇を特徴としている。
Bitcoin halving chart one year before vs. one year after. Source: Mando CT
ビットコインの半減期が外部要因を考慮せずにBTCの価格と直接相関するかどうかは議論の的となっている。
しかし、供給の減少によるものか、過去の半減期からの期待に基づく「群集効果」によるものかにかかわらず、これらのイベントは間違いなく強気のセンチメントを生み出してきた。
半減期後の価格上昇の期待は自己実現的な予言となり、トレーダーが半減期中にBTCをしっかりと保有し続ける傾向があり、供給への影響を強め、潜在的に次の上昇の舞台を設定することになる。
ETF承認後に参入した機関投資家
2017年のビットコインラリーは主に個人投資家によって支えられていた。2021年のラリーはテスラ、マイクロストラテジー、スペースX、グレースケール、スクエアなどの大手企業が参加したことで注目を集めたが、機関投資家は依然として参入をためらっていた。
機関投資家は厳格なルールや規制に従う必要がある専用のコンプライアンス部門を持っており、多くのファンドの内部規則は特定の製品への投資配分を禁止している。しかし、2024年1月10日、米証券取引委員会(SEC)が現物ビットコイン上場投資信託(ETF)を承認したことで、機関投資家にとっての状況が劇的に変化した。
海外市場、特に隣国のカナダは数年前にそのようなETFを承認していたが、真の資本が存在するのは米国市場だ。
2024年には、仮想通貨空間への機関投資家による投資が急増し、ビットコインETF発行者が主な受益者となった。これに加えて、コインベースやマイクロストラテジーのような企業の仮想通貨関連株は新たな取引高を打ち立て、当初は不調だった現物イーサリアムETFも今や好調の兆しを見せている。
資本の流入は、仮想通貨市場が機関投資家に幅広く受け入れられていることを示し、持続的な成長の舞台を整えた。
このセンチメントの変化は、ブラックロックのラリー・フィンクCEOの発言が象徴している。フィンク氏は2024年7月15日にCNBCのジム・クレイマー氏に「ビットコインは合法的な金融商品である」と語った。
機関投資家は今や、規制を遵守しながら仮想通貨市場へのエクスポージャーを得る手段を持っている。
現在のところ、彼らの選択肢はビットコインとイーサリアムに限られているが、これはすぐに変わる可能性がある。
XRP(XRP)やソラナ(SOL)はETF発行者からの関心を集めており、いくつかの申請が現在SECで審査中だ。ドナルド・トランプ氏の圧勝が米仮想通貨業界の規制緩和の可能性を示唆しているため、アルトコインセクターはエクスポージャーの急増を迎えるかもしれず、初めてアルトコインETFが承認される可能性もある。
ビットコインでのトランプ効果
仮想通貨市場は長い間横ばいで推移しており、特にビットコインの価格は比較的安定していた。トランプ氏の選挙キャンペーンとその後の勝利はこれを急速に変えた。
仮想通貨が初めて米大統領選挙キャンペーンの争点の1つとなった。多くの仮想通貨ウォッチャーは、選挙の結果がビットコインの価格パフォーマンスに二者択一的な影響をもたらすと見ていた。すなわち、トランプ氏の仮想通貨支持の姿勢で急騰するか、カマラ・ハリス副大統領が勝利した場合は停滞し続けるかというものだ。
共和党が議会とホワイトハウスの両方を制し、トランプ氏が仮想通貨支持の公約を果たす権力を持つことになる。
彼がビットコイン準備金といったすべての公約を実行するかどうかはまだわからないが、政権内の主要経済ポストに想通貨支持者を指名していることは良い兆候だ。
仮想通貨に友好的な政府への期待は、ビットコインETFによって点火された火に燃料を注ぎ、わずか1か月でその価格を10万ドルに押し上げた。
トランプ氏の勝利は、すでに温まっていた強気市場を点火する触媒として機能したかもしれないが、ビットコインの急騰の唯一の要因ではない。好ましいマクロ経済条件も追い風を提供した。
マクロ経済の追い風がBTC押し上げ
インフレーション、通貨の価値低下、地政学的変化が顕著な時代において、ビットコインは世界のマクロ経済問題に対する興味深いソリューションとして浮上している。
もはや仮想通貨愛好家や個人投資家の遊び場ではなく、ビットコインは不安定な経済環境から逃れるための手段を求める機関投資家や企業から注目を集めている。
インフレが激しくなる中、世界中の法定通貨は購買力の急激な低下を経験している。米国では、インフレが2022年に9.1%に達し、40年ぶりの高水準に達した。その後、インフレ率は緩和されたが依然として歴史的な水準を上回っている。
インフレを抑制するためのFRBの積極的な金利引き上げは、市場を不安定にし、景気後退の恐れを引き起こしている。経済的な逆風に対応して、FRBはより緩和的な政策に転じ始めており、金利引き下げに動いた。この結果として生まれる流動性は、ビットコインの成長にとって肥沃な土壌となる可能性がある。
それに加えて、中央銀行が数年間にわたって流動性を供給したことの影響で法定通貨は弱体化している。この環境は、ハードアセットへの関心の再燃を引き起こしている。
以前の選択肢は金だけだったが、ビットコインは新しい選択肢として登場し、その供給量が2100万BTCに制限されているため「デジタルゴールド」とも呼ばれている。伝統的な通貨とは異なり、インフレに影響されないビットコインの設計が多くの人にとって魅力的なものとなっている。
2025年にビットコインは月へ
仮想通貨市場は新たな史上最高値を更新し続けている。
ビットコインのピーク価格がどこになるかは誰にもわからない。ビットコインの価格が急騰する中、予測が飛び交うことは避けられないだろう。
一部の大胆なアナリストは自らの評判を賭けて、選挙後の急騰前にBTCの具体的な価格目標を設定している。2025年末までに20万ドルに達すると予測するものさえある。
2025年は仮想通貨市場にとって「新しい機関投資家の時代」の始まりとなり、2024年末までにウォール街が「サトシに代わってビットコインウォレットのトップに躍り出る」という予想まである。
スタンダード・チャータードのデジタル資産研究グローバルヘッド、ジェフ・ケンドリック氏も、2025年末までにビットコインが20万ドルに達する可能性があると考えている。スタンダード・チャータードは2024年1月以来、ETFが承認される前から20万ドルの価格水準を掲げている。機関投資家の波を予期していることが彼らの予測の根拠となっているようだ。
ビットコインの価格が最終的にどこに着地するかにかかわらず、ひとつだけはっきりしていることがある。ビットコインはまた1つのマイルストーンを達成し、世界で最も価値のあるハードアセットの一つとしての地位を固めた。その時価総額はすでに銀を超え、今や金を視野に入れている。
Bitcoin’s market cap surpassed Silver and Saudi Aramco. Source: CompaniesMarketCap