ビットコインキャッシュ(BCH)のハードフォークが迫っている。11月15日にハードフォークによるアップデートが行われるが、チェーンの分岐が発生するとみられている。2年前の2018年11月に発生したBCHのハードフォークでは、激しい対立によりビットコインを含めた仮想通貨相場全体を冷やすことにあった。果たして、今回のハードフォークでは、相場に影響があるのか? アナリストに見通しを聞いた。

「今回はネガティブな影響はない」

FXコインの松田康生氏は、今回のビットコインキャッシュのハードフォークは「特にネガティブな影響はないと思う」と話す。その理由として3つの要因を挙げている。

1つ目は、2018年の時のような「骨肉の争い」にはならないことだ。2018年のビットコインキャッシュのハードフォークについては、ビットコインABCとビットコインSV(BSV)の2つの陣営で激しい対立が起き、「ハッシュウォー」と呼ばれるほどの争いとなった

「前回はハッシュ・ウォーで負けた方が無くなってしまうのではないかという位の勢いで対立、特にBSV側の手段を択ばない姿勢が、ブロックチェーンの存続を危うくさせる、即ち暗号資産の価値の全てである信用を傷つけた、これがBTC相場を崩した要因だったと思います。ただ、ふたを開けてみると、ハッシュ・ウォーは単にどちらがティッカーを継続して使用するかというだけの問題だったことが判明しました。この学習区化は大きいと思います」

2つ目の理由としては、今回のアップデートを巡る対立については「ほぼ勝負が付いている点」だ。

今回の対立軸は、ビットコインABC側が「コインベース」ルールを導入することだった。これは、新たにマイニングされたBCHの8%を開発基金に転用するというものだ。これに対してマイナーを中心に反対が起こり、ビットコインキャッシュノード(BCHN)陣営にまとまっている。

既に報じられているように、直近でマイニングされたブロックの多くがBCHN側でビットコインABC側のノードがほとんど残っている状態となっている。

3つ目は「この2年間でBCHのプレゼンスが下がってしまっていること」だ。

松田氏は、この2年間でビットコインとビットコインキャッシュの間に「圧倒的な差が出来てしまった」と指摘する。

「当時は時価総額こそ4番目ですが、まだBTCのライバル視さえされていた状況でしたが、この2年間で圧倒的な差が出来てしまいました。小口決済分野ではリブラだCBDCだとライバルが出現、BCHを小口に使おうという話はあまり進んでいません。一方、BTCはデジタルゴールドとして確固たる地位を築きあげました」

松田氏は、対BTCでの価格の変化に注目する。最近、BCHは対BTC価格で過去最低を記録した。これがプレゼンス低下を示している一旦だという。

「当時でも0.03-0.04程度だったのが、今では0.016と史上最低、発行額はほぼ同じですから、既にBTCの1%台のプレゼンスしかなくなってしまっている訳です」

突発的な価格変動に注意を

bitbankのアナリストである長谷川友哉氏も、今回のチェーン分岐による市場への影響は少なく終わるとみている。

その理由は、松田氏と同じく、BCHNが既に優勢な状況であり「ある意味で勝負が決まっていると言える」ためだ。

「海外の主要なデリバティブ取引所のインデックスとして用いられる取引所の対応を見ると、ビットコインキャッシュ・ノード(BCHN)をビットコインキャッシュ、すなわちBCHとする対応が目立ちます。ネットワーク動向や、ポロニエックスでのプレフォーク取引の価格を比較しても、BCHNが優勢なことがわかるので、ある意味で『既に勝負が決まっている』とも言えそうです」

こうした中で、フォビグローバルはBCHの信用取引のポジションを強制決済をするとしており、13日までにポジションの決済やオーダーのキャンセルをユーザーに呼びかけている。フォビの場合は事前に通知しているが、「2018年冬の際には顧客のポジションを突然強制決済した海外取引所があった」と長谷川氏は指摘し、13日前後には突発的な動きには注意をする必要があると語る

投資家離れ加速への懸念

松田氏と長谷川氏が共通して指摘しているのは、投資家離れがさらに加速する懸念だ。

小口決済を目指していたビットコインキャッシュだが、CBDCといったライバルが出現する中で、やっていることが内部分裂ばかりであれば、「これでは投資家もついてこない」と、松田氏は述べる。

松田氏は、グレイスケールの仮想通貨信託の残高からBCHに対する機関投資家の評価を概説してみせた。

「機関投資家などにどう見られているかはGrayscaleのシングルアセットの信託の残高を見れば明らかです。本来はBCHこそBTCプラスワンの地位を占めても不思議はないはすですが、ETHが10億ドルを目指しているのに対し、BCHは5千万ドルにすら達していません。ETHの5%、BTCの1%以下のニーズしかないのが現状だと考えます」

また長谷川氏は、ビットコインキャッシュがこうした分岐を繰り返してしまえば、セキュリティ面の懸念が大きくなっていくと指摘。結果として、投資家のBCH離れにつながる可能性があるとみる。