日本銀行は9日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する取り組み方針を公表した。中央銀行デジタル通貨に関する機能や役割、特徴を整理しているほか、今後CBDCの実証実験を進めていく考えを示している。

日銀は、今回の方針の中で「現時点でCBDCを発行する計画はない」としつつ、「決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要である」と述べている。

CBDCには、日銀と金融機関だけの間で流通する「ホールセール型」と、一般の人々が現金の代わりに利用する「一般利用型」との2つのタイプがあると整理し、「一般利用型CBDC」について、どのような機能や役割が期待され、どのような特徴が必要であるかをまとめている。

出典:日本銀行

一般利用型CBDCに期待される機能と役割について、日銀は、(1)現金と並ぶ決済手段の導入、(2)民間決済サービスのサポート、(3)デジタル社会にふさわしい決済システムの構築の3つであると整理している。

現金と並ぶ決済手段として一般利用型CBDCを日銀が導入するような状況について、日銀は次のように述べている。

「当面、現金の流通が大きく減少する可能性は高くないが、仮に将来、そうした状況が生じ、一方で民間のデジタルマネーが現金の持つ機能を十分に代替できない場合には、現金と並ぶ決済手段として、一般利用型CBDCを提供することが考えられる」

より具体的には、「少子高齢化や都市部への人口流出は、全国各地に現金を流通させるコストを高める方向に作用しており、地域によっては、今後、住民による現金へのアクセスが困難化する可能性がある」というケースに言及している。

また(2)については、林立する民間決済プラットフォーム間の相互運用性を確保する「橋渡し役」としてCBDCが発行される可能性にも触れている。

CBDCに求められる特性

出典:日本銀行

CBDCに求められる特性については、5つを挙げている。(1)ユニバーサルアクセス、(2)セキュリティ(偽造などの不正を排除)、(3)強靭性(通信障害や停電といったオフライン環境でも使えること)、(4)即時決済性、(5)相互運用性の5つだ。

また発行形態については、中央銀行と民間部門の二層構造を維持した、「間接型の発行形態が基本となる」との考えを示している。

さらに考慮すべきポイントとしては、(1)物価安定や金融システムの安定との関係、(2)イノベーションの促進、(3)プライバシーの確保、(4)クロスボーダー決済との関係を挙げている。

概念実証を来年度にも開始

出典:日本銀行

日本銀行は、CBDCについて「実証実験の実施を通じて、より具体的・実務的な検討を行っていく」とし、2021年度の早い時期にも概念実証のフェーズ1を開始すると述べている。

概念実証については、フェーズ1とフェーズ2を想定しており、フェーズ1では「システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、発行、流通、環収の基本機能に関する検証を行う」という。

フェーズ2では、フェーズ1で構築した実験館k表にCBDCの周辺機能を付加して、実現可能性を検証するとしている。

さらに、こういった概念実証を経て、「必要と判断されれば、民間事業者や消費者が実施に参加する形でのパイロット試験を行うこと視野に入れて検討していく」という。