日銀の神山一成決済機構局長は15日、ロイター通信に対し、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行・保有額に制限をかけることの可能性に言及した。発行の際に民間銀行の現金預金額から一斉に移行することを防ぐ狙いがある。

神山氏は、金利がある預金とCBDCの間で資金の動きがで得ることは金融システム上問題だと指摘。しかしその一方で「金融政策のためにCBDCの付利を利用するという考え方ではない」と強調した。

日銀は現時点ではCBDCを発行する計画はないとしているが、9日には企業や一般消費者を対象とした「一般利用型(リテール)CBDC」の取り組み方針を公表した。

神山氏はCBDCの実証実験のスケジュールについても明らかにし、「2021年度中に第2段階に移行したい」と話した。日銀はCBDCの実験を3段階で想定しており、21年春に第一段階を始める計画だ。

神山氏は第一段階の実証実験については、すでに準備作業に取り掛かっているとしている。決済機構局の職員10人程度とIT企業のエンジニアが参加し、システム上のお金のやりとりといった基本機能について調べる。

第2段階は保有金額に上限を設けたり、オフラインといった通信環境がない状態でも使えるかを調べる。

第3段階では一般企業や消費者が参加する本格的な実証実験となる。中国では深センですでに一般消費者向けにデジタル人民元を配布するなどの動きが見られており、こうしたことを念頭に置いて「地域を限定してやるのが一つの選択肢だ」と話した。発行・保有額に制限を設けるといった制度設計に浮いては「実証実験の3段階のプロセスを一通り経たうえで、最終的な設計ということになるのではないか」とした。

一方で銀行間取引などを想定した「ホールセール型CBDC」について神山氏は、2016年に開始した欧州中央銀行との共同プロジェクト「ステラ」に触れ、実現可能なところまで「相当近づいている」と話した。

「デジタル人民元は世界を席巻しない」

また、中国が実証実験を先行していることについては、「決済システムの改善にしっかりそれぞれの国が取り組んでいる限りにおいては、特定のデジタル通貨が世界を席巻するということではないだろう」と指摘。

フェイスブックのリブラが発表された際には世界中の金融当局が牽制し、その後CBDCの開発が急ピッチで進んだことについて「脅威を感じて色々な国の検討が加速したのは、自分の決済システムを改善しないと(民間のデジタルプラットフォーマーのデジタル通貨にとって代わられる)という感覚が共有されたからではないか」と述べた。