中国の電子商取引大手アリババの決済子会社のアント・グループは23日、「アントチェーン(AntChain)」と呼ばれる新たなブロックチェーンソリューションを発表した。1日で10億件のトランザクションを処理するなど、様々な企業の要件に対応できるブロックチェーンを開発した。

サウスチャイナ・モーニングポストによると、アントチェーンは人工知能やIoT(モノのインターネット)、セキュアなコンピューターを組み合わせたアント・グループのブロックチェーン上に構築された。

アントチェーンではノートパソコンに近いサイズのワークステーションを新たに構築。これにはブロックチェーンアプリケーションの機能をスムーズにするためのソフトウェアとハードウェアアクセラレーターが内臓されている。

このワークステーションはセットアップの時間を10分の1に短縮し、トランザクション速度を30%向上させることができるとしている。

毎日1億件以上がアップロード

アント・グループは2015年にブロックチェーンに参入。2019年からブロックチェーン上での商用アプリケーションにも取り組み始めた。アントチェーンでは海運やクロスボーダー送金など50以上のユースケースをサポートしており、10億以上のユーザーアカウントを獲得。1日あたりで最大10億件のトランザクションを処理できると主張している。

アント・グループでブロックチェーンソリューション・イノベーション部門のジェネラルマネジャーを務めるリ・ジエリ氏は発表文の中で「業界でのブロックチェーンの応用はまだ初期段階であり、デジタル経済の発展に伴って、ブロックチェーンはデジタル取引をサポートし、様々な業界のコスト削減に結びつくだろう」と述べている。

中小企業のブロックチェーン活用にも

アントチェーンは今年4月に発表されたブロックチェーンプラットフォームのコンソーシアム(企業連合)「オープンチェーン」を含むアントグループのソリューションに活用される。

オープンチェーンは中小規模の事業者(SMEs)のブロックチェーン実装を「高い効率性と低コストで」助けることが狙いだ。「今後3年間」で「100万のSMEsと開発者」のイノベーションを支援することを目標としている。

オープンチェーンはサプライチェーンファイナンスや製品の起源追跡、デジタル請求書、寄付などの分野でパブリック・プライベート双方のブロックチェーン実装をサポートする。今回のアントチェーンとの協力により、さらに幅広い業種と処理能力が期待できそうだ。

中国では、昨年10月に習近平国家主席がブロックチェーンを国家戦略の中核に据えると発言して以来、官民でブロックチェーン開発が盛んになっている。昨年アリババグループは470のブロックチェーン関連特許を出願した。