インターネットバブルのピーク時には、「e-」という接頭語や「.com」という接尾語を加えるだけで、企業の評価は数倍にも跳ね上がった。現在続くビットコイン市場においても、「ブロックチェーン」という語を加えることは同様の効果を持つようだ。
On-line PlcをOn-line Blockchain Plcに改名で株価が4倍に
英On-line Plc社は、1996年以来ロンドン証券取引所に上場しているこれといった特徴のない小さな会社である。同社は、グループ持株会社としてスタートし、ネット上のマルチプレイヤーゲームを作っていたが、次第に技術投資会社に変容した。
17年10月26日、英On-line Plc社は、その社名をOn-line PlcからOn-line Blockchain Plcに変更する意向を発表した。同社は、発表に至るまでの間、複数の応用シーンにまたがってブロックチェーン技術を投入することをサポートするシステムの提供に注力してきた、と公表した。
この社名変更の判断により同社の株価は高騰し、木曜日には19%の上昇を獲得する結果となった。だが、これは金曜日に起こったことと比較すればそれほど大したことではなかった。同社の株価は400%上昇し、前日の17ポンドから84ポンドまで急騰した。同日の終値は46.50ポンドで、前日終値から173%の上昇であった。金曜日の取引量は、同社の年間の取引量の数倍にのぼった。
「ブロックチェーン」という語を加えた改名によって株価高騰したケースは他にも
社名変更に対して投資家が報いた例は、On-line Blockchain Plc社だけではない。あるバイオテクノロジー会社が社名を Bioptix Inc社からRiot Blockchain社に変更した際には、同社の株価は17%上昇した。社名変更の発表までの数日間に同株価が既に約100%上昇していたにもかかわらず、である。Bioptix Inc社が従来は診断機器の製造業者にすぎなかったことは問題にならなかった。
Pets.com社を想起
2000年頃のITバブルの過熱を示す典型的なケースとして、Pets.com事件がある。。同社は、1998年8月に設立され、注目を集めるマーケティング・キャンペーンを通じて広く知られるようになった。2000年のスーパー・ボウルにおいて、Pets.com社は、広告スペースを購入するために数100万ドルを支払った。同社は、マーケティング・キャンペーンを通じて売上を増加させたものの、有効なビジネスモデルを持たず、収益よりもはるかに多くの額を広告に費やした。にもかかわらず、2000年初旬のIPO (イニシャル・パブリック・オファリング、新規株式公開)では、8200万ドル(約92億円)の調達に成功した。同社は、その脆弱な基盤により、設立からわずか2年後の2000年11月に瓦解することとなった。これにより、IPOで調達した資本も含め、3億ドルもの投資資本が泡と化した。
ビットコイン市場がインターネットバブルのようになるとは限らないが、投資家が非合理的な熱狂の兆候を見せていることは懸念材料である。いくつもの会社が実効的なビジネスモデルや製品がないにもかかわらず、ICO (イニシャル・コイン・オファリング、仮想通貨で広く資金調達する手法) で数100万ドルも調達している。社名に「ブロックチェーン」という言葉を加えるだけで投資家を活気づかせるようだ。投資家はそろそろ一歩下がって仮想通貨を冷静に見つめるべきかもしれない。
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